「児童の統合失調症と、利己的な遺伝子」未来のミライ 映画ぽろぽろさんの映画レビュー(感想・評価)
児童の統合失調症と、利己的な遺伝子
【細田守の作風】
細田守は忠実な表現する監督なので、実は表現にファンタジーを用いていない。
ファンタジーを用いて表現したい場合は、ちゃんと別の世界を作ってちゃんと境界線を引いている。
サマーウォーズならアバター世界、バケモノの子ならバケモノの世界がそうだ。
逆に、時をかける少女や、おおかみこどもの雨と雪は、ファンタジーな表現をしていない。
【隠れホラーアニメ】
親と子の成長を、トトロや千と千尋の神隠しと同様、隠れホラーで綴った作品。
まず、親も子供も成長したいなんて一つも思っていないのが、面白く、細田が中実に人物を描いていると感じた点である。
わがままをしたい子供と、子供を叱りつける親の構図を明確に描くことで、「成長したい=相手を思いやって自己を犠牲しよう」と誰もこれっぽちも思っていない点を起点とし、お互い自己を優先することで、他の家族と摩擦が起き、物語が線となって展開していく。
【表テーマ:児童の統合失調症】=物語の横の広がり
主人公は精神的に不安定になると幻覚を見てしまうことから、この主人公は統合失調症であることがわかる。児童の統合失調症は、100人に一人に罹る精神疾患である。
【裏テーマ:利己的な遺伝子】=物語の深さ
主人公は幻覚の中で、自身の曽祖父から大人になった自分や妹、子供時代の家族から背中を押されて何とか自我を取り戻し、結果、精神的に一歩一歩成長する。
逆をいえば、自我を取り戻せない=死に繋がるということから、遺伝子の繋がりが主人公を助け、成長を促していると言えよう。
また、遺伝子は他の生物=家族も利用している。まさに「生物は遺伝子の乗り物に過ぎない」とするリチャードドーキンスの利己的な遺伝子そのものである。
【総評】
考察のしがいがある興味深いテーマではあったものの、
全体を通して話の筋がごちゃごちゃしており、
1クールや2クールのテレビアニメをギュッと映画サイズに圧縮した感があり、
いまいちまとまりがないので減点した。