「感じなくてはならない、ありきたりの展開」フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
感じなくてはならない、ありきたりの展開
フロリダの抜けるような、どこまでも青い空。その下、夢の国ディズニーワールドのそばにあるモーテルでその日暮らしを続ける複数の家族の話。
観ている俺が、「かぁ〜、このクソ餓鬼どもが」と言いたくなるような冒頭のイタズラと口の悪さ。イタズラの罰としての清掃をきっかけに広がる友達の輪。どれもすごくありそう。
この冒頭のイタズラシーンは、見事と思う。住む場所に比例する、イタズラの品の悪さと口の悪さ。環境をなんら説明することなく、観ている俺たちに伝え、かつ辟易するほどのイタズラを見せた上で、子供らしいバイタリティと輝きを描く。素晴らしきクソ餓鬼達だ。美しいわけではないが、輝いている、生きていることは間違いない。どんどん引き込まれる。
中盤に降る雨。
友達の輪が広がり各自がひたすら自由にかけずり回る前半から一転して、別れに向かって進んでしまう後半。その境い目にある雨。雨の前も後も、空の青さは全く変わらない。けれど両者をくっきり分ける、前半と後半の落差の見事な描き分け。
中盤でのイタズラ(子供にとってはこれもイタズラに違いない)を引金に、友人の親は我が子を守るために疎遠になる。「それって、あまりにも寂しくない?」と言いたくなるが、俺もどうすればいいのかわからない。
もどかしいが、この環境で暮らすしかないところまで来た彼等に、これ以上のことが出来るのかわからない。
----- ここからネタバレ含みます。観てない人は、観てからお読みください -----
主人公の親は、自分が暮らし子供を育てるという、ただ当たり前のことをするために、できることをする。それだけなのに、子供と別れなければいけなくなる方向に陥って行ってしまう。理由は、本人が怠惰だからかもしれないし、そうしかできなかったのかもしれないが、ただ事実として描かれる。
その結果、主人公は、一人減り二人だけになってしまったのに、また友達と別れなければならなくなる。そんな二人は、ひたすら走り、ディズニーワールドに駆け込む。ここに入れば、きっと離れ離れにならずに済むという希望に満ちて。しかし現実にはそんなことはありえない。あっという間に引き離される。その事実を撮る必要も撮る意味もないからそのまま終わるエンディング。
いま、こうしてレビューを書いている時の方が、なんだかわからない感慨がやってきている気がする。どうしようもないのだけれど、どうにかしたい気持ちだけが溢れる。可哀想とは違う、どうにかしなきゃいけないという思い…
思ったようにならない、漠然と期待している方向に全く進まない、後半。運よくとか、奇跡のようなとか、そんな展開は現れない。俺たちは、それをただ観て、そしてその上で感じるしかない。そういう映画なのだと、レビューを書いている今、初めて俺は理解した。
おまけ
レビューを書いている際に、俺の中では、本作のエンディングが、「怪物」のエンディングと重なりあっていった。「怪物」の彼らは死んでいたんだなあ、と不意に腑に落ちた。


