「夢の国は近くて遠い」フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
夢の国は近くて遠い
夢の国の目と鼻の先で繰り広げられる 隠れホームレス と呼ばれるような貧しい人々の日々を描いたこの映画
まずは映画全体を通しての 目に優しい というか とにかく幻想的な色合いであったり構図の取り方にうっとりとしてしまう。 夢の国の近くということもありそもそも 映える ロケーションが多いのかもしれないが 何よりも作り手のセンスがとてつもなく良くて、景色の中に美しく溶け込む子供たちの姿が印象的だった。
貧しく苦しい彼らの日々が美しく見えなければそもそもこの映画は成立しないので、語ろうとする物語に対しても完璧と言ってもいいぐらいの映像美。
お話の語り口としてははほぼ徹頭徹尾子供たちが生きる世界を通して描かれているのだけど、またこの子供たちの姿素晴らしい愛らしさときたら!
何をどうしたらここまで子供たちをカメラの前でここまで ありのまま に切り取れるのか。演技のレッスンをキチンと受けさせた上での演出との事だけど、監督の手腕が光る驚異の 子供達の一夏の日々 映画だったと思う。
また、母親役の ブリアベネイト は監督がSNSで見つけてきた完全なる演技素人との事だけど、このキャスティングも驚異的なハマりっぷり。子供を大切に思うという気持ちは貧しさの中でも彼女はキチンと持っている強い女性だったけど、社会で生きていく上ではそれだけでは母親にはなれない。 そんな現実を元ママ友から突きつけられた彼女が部屋で自分の弱さとやるせなさを文字通り 吐き出すシーンがとても痛々しくて切なかった。きっとこの 強さ と 脆さ 両方を体現できる素質を見込んで監督は彼女を選んだんだと思う。
全てを見守るウィレムデフォーの演技の優しくて切ない感じも本当に良くて、この映画を見た人全員が彼のことを好きになると思う。
そんな、素晴らしい映像に素晴らしい役者陣に素晴らし演出が混ざり合ったこの映画はまさしく 魔法 のような儚さと美しさを持っている。
ラストの本場の夢の国へと飛躍するファンタジー展開は 彼女たちが夢の国に助けを求めに行った という風にも受け取れるけど、個人的にはその夢の国こそ我々が生きる現実世界そのものであるという風に感じた。
(ラストのみで展開される撮影方法のアプローチの仕方から見ても、劇中最も現実世界のような手触りで見えるように あの場所がとられていた)
今まで 社会の隅の なんなら別世界で起こっているように感じたこの映画の出来事も 我々が生きる同じ世界で起こった 全て現実なのだ でもそれが今は切り離されてしまっている という問題提起を、最後の最後で見る側にある種逆説的に訴えてくるこのラストシーン シャレにならん
是枝監督自身もラジオで言っていたが、語ってる内容とかがすごく 万引き家族 と通づるものがある
個人的には今年ナンバーワン映画候補筆頭!
本当に素晴らしかった