「緻密で美しい、あるカップルのマウント合戦」ファントム・スレッド バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
緻密で美しい、あるカップルのマウント合戦
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イギリス上流階級御用達の天才ファッションデザイナーが主人公、ということで、フィルムのどこを切っても(実際にフィルムで撮影されている)細部までが緻密で美しく、なんとも格調高い出来栄えだ。主人公のデザイナーが、田舎町の地味な女性を自分のミューズだと見定めて磨き上げていくプロットは『マイフェアレディ』のバリエーションとも言える。
実際、男女のプライベートな関係が階級や性別の枷から逃れて次第に逆転する展開も数ある『マイフェアレディ』の系譜に収まりそうな気もする。が、そこから先の逸脱がすごい。ある意味トンデモな夫婦ゲンカの行きつく先はどこなのか? あのラストは現実なのか夢なのか? 解釈がいろいろできることと、これだけ豪華な舞台装置で描いているものが、ものすごくミニマムな男女のつばぜり合いであることに、戦慄と笑いが一緒にこみあげてきた。
壮大な夫婦ゲンカ映画ということでキューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』を思い出したりもした。
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