ザ・スクエア 思いやりの聖域のレビュー・感想・評価
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社会における責任のありかたを、アート作品で風刺
昨年の第70回カンヌ国際映画祭(2017)・最高賞のパルムドール受賞作である。プレミア上映に合わせて監督のリューベン・オストルンドがスウェーデンがら来日していた。
ブラックコメディ「フレンチアルプスで起きたこと」(2015)で、笑えない"家族の崩壊"を描いた、オストルンド監督が、またしてもシュールな問題提起をする。
今回は、"モダンアート(現代美術)"を茶化してしまう。彫刻やオブジェなど、社会との共生を主題にした作品が多いモダンアートの世界は、一見、ワケのわからない作品が多いというのが、一般的だろう。
タイトルの"ザ・スクエア"は、劇中に登場するアート作品の名前である。それは広場に引かれた白線で囲まれた正方形のインスタレーション芸術である。横断歩道で自動車と人が譲り合うように、"ザ・スクエア"を通りかかる人々は、その中では、"思いやりの心"を持たなければならない、利他主義の象徴みたいなアートだ。
主人公のクリスティアンは、現代アート美術館の主幹キュレーター。社会的地位と経済的優位を持ったセレブ階級であるが、そのクリスティアンがとんでもない災難に巻き込まれる話である。
日本人のイメージする北欧は、"先進的な福祉国家"という印象が強いかもしれないが、監督が描くリアルなスウェーデンは、駅前や店先で物乞いや小銭を無心する人々が見かけられる格差社会。東京のホームレスと大差ない。
人混みの中では、困った人がいたとしても、互いに第三者を装う、"傍観者効果"が起きる。たとえ暴力事件や犯罪が行われたとしても、大衆は通りがかりの人になりきる。
モダンアート"ザ・スクエア"は、そこに困窮している人がいれば、なにをおいても助けなければならない。まさに"思いやりの聖域"である。クリスティアンは、その"ザ・スクエア"を展示会の目玉にしようとするが、皮肉にも良心とは反対の状況に追い込まれていく。
昨年のカンヌでは本作以外にも、"他者への無関心"をテーマにした作品が複数出品されている。監督たちは、スマホやPCによるSNS文化がもたらしたディスコミュニケーションを取り上げ、それにアプローチした作品が多く作られた。
「ザ・スクエア」は、最高賞パルム・ドール受賞という形で、それら作品トレンドの代表となったともいえる。
SNSは、それ自体がコミュニケーションツールなのに、不特定多数の相手とつながり、膨大な情報に浸りながら、社会とアダプトしているようでいて、実は誰ともコミュニケーションしていない。
例えば、"家族団らんの場で、各々がスマホ画面を見つめながら、家族はつながっていない"という風景である。
本作劇中で登場する、"モンキーマン"(チンパンジーを演じるパフォーマンス)のくだりでは、正装する参列者は、パーティー会場で大暴れするモンキーマンを無視し続けなければならないというルールを課し、大勢を傍観者状態に置く。
また逆に、作品終盤で出てくるチアリーディングの試合会場は、実はスクエア(正方形)である。ここで行われるダンス演技は、相手とシンクロしたり、リフティングするために互いを助け合い、より高度なパフォーマンスを成功させている。人と人のつながりや信頼を象徴している。
本作で、オストルンド監督は、"個人レベルや社会のレベルで、責任を取るとは?それらを集めてみた"と語った。お互いに信頼しながら共生することに、社会の希望があることを、観客に示したドラマでもある。
(2018/4/11 /ヒューマントラストシネマ渋谷/ビスタ/字幕:石田泰子)
「差別してません」という差別
面白かったなぁ
アートというのは、作品を創作した者も、その作品を展示する者も、それをしたり顔で理解した風な観客も、所詮、自己満足であり、そうやって人は他人を見下し、差別化しているのだと訴えかけくる作品だった
スウェーデンのコペンハーゲンにあるX-ロイヤル美術館では「ザ・スクエア」という作品を展示する
それは、ただ、床に描かれた正方形であり「この四角の中では、人はみな平等。ここは思いやりの領域です」という
そこで、私は思わずツッコミを入れてしまう
「人々が平等なのは、その小さな四角の中だけなのか!」と
もしも、社会が本当に平等ならば、そんな「領域」は必要ないのに
なぜ、その「領域」か必要なのか
それを「アートだ」と言って展示している人たちこそが、貧乏人を見下していて、そのアートの存在こそが、傲慢なのに、誰もその異常さに気付かない
この映画では、主人公で、美術館のキュレーターであるクリスチャンが、そんな「平等な社会」の理想と現実に気付くまでの物語である
そして彼が世に送り出した芸術は爆発する
現代においては
アート作品を発表し、それが反感を買い、ネットで炎上し、名前が売れるまでの全てを含めて、その全てがアーティストによるパフォーマンスなのである
これは、批判されればされるほど、作者の名前が売れ、知名度が上がるという現代を見事に描いた作品だった
現実は思いに足らず
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