「芸術の 社会での有用性」ザ・スクエア 思いやりの聖域 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
芸術の 社会での有用性
レセプションでの執拗なモンキーマンのシーンには閉口した(苦笑)
でも星を減らしたのは
オストルンド監督、前作で出し尽くしてしまったのかな、悪ガキが 貯めてあったアイデアをちょっと散漫に盛り込んだ感がして。
「フレンチアルプスで起こったこと」(前作)では、僕個人の感想としては不愉快極まりなかったが、非常に出来は良かった。
本作は、各エピソードは実に光ってるのに、総合体としては残念ながらバランスが悪くて、意味が破断し 脈絡がなかったように思う。
二番煎じとしても失敗。爆発シーンは最大の蛇足。
ちょっと「俺ってセンセーショナルじゃね?」臭さが鼻についた。
映画の構造としては
①美術館、わけても現代アート美術館経営と、気取った愛好家=裕福で物知り顔の評議員たちへの辛辣な揶揄・からかい。
(多数の円錐形砂山の展示室をチラッと覗いただけであっちへ行ってしまう客の上半身だけのシーン、あそこ腹を抱えて笑った。あと誰もいない展示室で積み上げられた椅子がガタガタ揺れるオブジェと監視員の老女とか、あるある感でもう抱腹絶倒)。
②そして、そもそも美術というものが人間の実生活に与える力や、その価値の有無についての ひねた問題提起。
「ザ・スクエア」を次なる展示企画としてあげるクリスティアンの”思いつき“の軽薄さ。
貧困や移民問題を絡めてみても すべてが思いつきだという内幕の暴露。
③美と家庭生活の乖離。
・・これらのごった煮で、なかなかでした。
近年のバンクシーのオークションのハプニングやら、
ダ・ヴィンチ「サルバトール・ムンディ」への高額投機やら、
美術界を取り巻く人間模様は、その欺瞞性をあげつらってイジるには題材に事欠かないですね。
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先月、
ある美大の「卒業作品展」に行ってきた。
上野にある2つの美術館を借りきっての、学部生と院生の 卒業制作の発表の場だ。
油彩、彫刻、工芸、建築、そして映像の作品まで・・、若いアーティストたちの渾身の集大成が胸を揺さぶる。
美を探求して4年、あるいは6年。
卒業し、学校を離れて世に埋もれて行っても、彼らは以降も美を創造していく心とか、
善を愛し、世の中にもまれながらもそれを発露させていきたいうずきを持ち続けて、当初の熱い思いを持続し続けることは出来るのだろうかと。
・・それは煤汚れた世の中でどれだけ難しいことかと。
展示室をまわり、自作の前に立つ美しい顔立ちの作者たちとぽつりぽつりと言葉を交わしていて、彼らの前途の困難さが可哀想で、胸が一杯になってしまった。
コンテンポラリー・アートは、劇中でキュレーターのクリスティアンが言っているように《美術館の場を超えてその作品に触れた者への日常生活への干渉を生み出す》ものだ。
「卒展」で作品と作者を見比べながら、たくさんの生きた”種“が世界に播種されていく瞬間を見させてもらえて、感動の体験だった。
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美術館の中と外、
理想と現実、
日常とパニック。
監督の見つめる「額縁」=スクエア=は人間社会の見えない監獄の内外(うちと)を示すものかもしれない。
心のスクエアをせばめるごとに、自分が見たくないものに目を瞑って楽な生き方を謳歌出来るのか、あるいは(思いもよらず)スクエアの内側にいた自分の首を自分で絞めることになってしまうのか ―
「答え」はよくわからない。
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今年も3月11日がやってきた。
あの時、被災者はお金や家屋や食料が必要なのに
東北の避難所ではお絵かき教室や
アンパンマンの合唱や
俳句教室や
漫談・音楽コンサートをするために駆けつけたタレントが一杯いたことを思い出す。
そんなことでは被災者の胃袋はふくらまないのに。
でも小さな種が芽吹いた。
「助けて下さい」
「応援お願いしまーす」
車椅子ボランティアをやっていた僕自身が、新宿駅の雑踏での経験を思い出す、
「お前はこのラインで終わりだ」
「その先に行く資格なしだ」、と言わんばかりの車椅子の前に突き付けられた絶望的な駅の長い下り階段。
Uターンしてエレベーターを探すのは面倒くさいし
大声で言ってみたんだよ
「助けて下さい」
「応援お願いしまーす」。
あっという間に 魔法のように人の波の中から生まれ出て、サラリーマンたちが駆け寄ってくれるじゃん(笑)
世の中捨てたもんじゃない。
美と善。埋もれていても”種“は確かに存在する。
人の心のスクエアのラインは、
案外簡単に越えられると信じる。
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きりんさん、コメントありがとうございます。
スウェーデンはコロナ禍になってから、独特な政策を続けてきましたもんね。
最近、ニュース見てないもんで、首相辞任なんて少しも気になりませんでした。
まぁ、紛争が続く限り移民問題はますます増えていくんでしょうなぁ・・・
きのうスウェーデンのアンデション首相が辞任を表明しましたねー
総選挙で野党=移民排斥の極右政党が台頭。
開放政策から一転して国内優先の閉鎖政治に舵を切っていくスウェーデン。このニュースを見て、この映画の「スクエア」のことを思い出していました。
スウェーデンは移民たちの母語継承を国費でサポートしています。
入国した女の子とお母さん二人。この女の子のために言語教師を探したが、スウェーデン国内には教えられる人材がいない少数言語民族であることが判明して、
(さあ、スウェーデン政府はどうしたか?)
政府は、なんとお母さんを公費で教師として雇ったのだそうです。
こういった”贅沢“も今後否決・廃止されていくんだろうなぁ。
あの国も悩んでいますよね・・
こんにちは。
随分前に見た映画なので、なんだか分かりにくかった覚えがあり、改めて自分のレビューを読み返してしまいました😅
そうそう、移民問題と貧困、でアートを絡めてましたね、イマイチでしたわ。