「身近なところにも国際社会にも広がるラブレスの病」ラブレス ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
身近なところにも国際社会にも広がるラブレスの病
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ロシアの名匠が撮り上げた本作は前半と後半とで違った表情をあらわにする。前半では愛をなくした親たちの姿を“子供の視点”から描き出し、後半ではそれが完全に逆転する形で、忽然といなくなった子の姿を探し求める“親の視点”が素肌に焼きつくような痛みを持って映し出される。だがどれだけあがいても、泣き叫んでも、その姿は見えず。
本作は特殊な構造を持ち、観客にも少しずつじわじわと事の重大さが認識できてくる。また、劇中には鉄骨むき出しの廃墟や寒々しい森の中など登場人物の心象を表したかのような描写が多いことにも気づかされる。どれだけ探しても愛が見つからない、見つかったとしても上着だけ。これほど「ラブレス」な状態を的確に表現した映画があるだろうか。ラスト付近でテレビに国際ニュースが映し出される。観ているようで観ていない。あるいは観ていても完全に他人事。ラブレスの病はかくも深刻に国際社会をも飲み込んでいるのだ。
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