「お粗末な真相に振り回された世間の脆さ」アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
お粗末な真相に振り回された世間の脆さ
ホワイト・トラッシュの苦悩を絶望がよく描けている作品だった。世界中を驚かせた事件の内実がこのようなお粗末な話であったとは。トーニャは毒母から虐待を受け、攻撃的な性格に育つ。結婚相手も暴力を度々振るう男だった。フィギュアスケートの才能は並外れていたが、それ以外の人間性は成熟しておらず、周囲の人間関係も荒んでいる。中でも旦那の友人でボディーガードのショーンの劣等感と肥大した自我はアメリカの闇というべきものだ。白人の落ちこぼれの劣等感は凄まじい。なまじ人種として多数派でであるため、落ちこぼれる理由を外部に求めることはできない。自己の劣等感が強烈な承認欲求に変わり、馬鹿な事件を引き起こしてしまうばかりか、それを自らの手柄を吹聴してしまう。自分は誇大妄想にも取り憑かれており、いかに自分が選ばれた特別な人間であるかを自慢げに語る。こんなことで世間が揺さぶられてしまうものなのか、と世の中の脆さにも驚く。
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