劇場公開日 2018年5月4日

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「スコセッシ映画かよ!」アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0スコセッシ映画かよ!

2018年5月6日
iPhoneアプリから投稿

スコセッシ映画かよ!これは「フィギュアスケーターのブルーカラー」を描いた『グッドフェローズ』だ。才能ひとつでどん底からのし上がることはできない。「私のせいじゃない」が口癖のトーニャが哀しい。実はこれは『レイジング・ブル』だったと気付く

製作も兼ねた主演マーゴット・ロビーがとにかく素晴らしい。白眉はリレハンメルオリンピックの演技前。鏡に向かって必死で笑顔を作ろうとするが、涙がこぼれてしまうあの表情が絶妙。『レイジング・ブル』のデ・ニーロが重なったほど。アリソン・ジャネイはアカデミー賞も受賞したし言わずもがな

映画ではよく見るどん底の「引力」が本作でも描かれる。毒親、暴力夫、そしてバカ。トーニャは抜け出せず、「あの事件」が起きてしまい、世界中から嫌われた。でも自他共に認める「人生最高の瞬間」があるだけで大した人生じゃないか?俺にはそんなものはない。トーニャ、それだけで生きていけるだろう

人生の悲哀が詰まった物語でありながら、どこまでも軽やかで面白いのが良い。『グッドフェローズ』のように既存のポップスをバックに、第四の壁を破りながら、ボイスオーバーと小気味良い編集でとにかく「見せる」。『ラースと、その彼女』のクレイグ・ギレスピー監督がこんなこともできるとは

当然、製作・主演のマーゴット・ロビーが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でスコセッシの演出に触れたことも無関係ではないはず

『アイ,トーニャ』も今年ベスト級の傑作。今年は傑作が多過ぎる。幸せだなあ

ヒートこけし