「人間のクズしかいない世界」アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
人間のクズしかいない世界
ある種の傑作であると思ったけれど、観終わったら席から立ち上がるのがキツいくらいこちらがグッタリ。
1994年の「ナンシー・ケリガン襲撃事件」について主犯とされるトーニャと元夫ジェフ、さらには生い立ちについてトーニャの母へのインタビューを行い、それを映画化したもの。
警察や被害側の関係者が顔をしかめそうなほど、トーニャサイドの視点で作られていました。
幼少からの貧困と無教養と母からの虐待の生い立ち。
夫とのDV合戦(銃撃、誘拐あり)など暴力の嵐。
アメリカスケート協会からの差別と偏見、点数の不正。
それらを、トーニャたちの発言通りに映像化。
本人のインタビューシーンに、役者による再現フィルムが連なる構成なのですが、その再現において吐気するレベルの暴力表現があります。
さらに、役者たちの迫真の演技がつらさを増し増し。
一番リアルに感じたのが、トーニャの周りには「ここまで世の中にバカなことをやるやつはいないだろ」って、クズしかいないってこと。
アメリカにおけるホワイトトラッシュの悲哀がよく出ていました。
特に、トーニャの母親役のアリソン・ジャレイが本人なのか役者なのかどちらか分からないくらいそっくりで、こりゃアカデミー賞の助演女優賞ノミネートも納得しましたわ。
マーゴット・ロビーは、外見はあんまりトーニャに似てないけど、内面の表現はそっくりですごかった。
さすが『スーサイド・スクワット』のハーレイ・クインを演じただけあります。
それと、カメラワークがいいですよ。
フィギュアのシーンは、演技の再現が主眼ではなく、トーニャの表情に寄った撮影がされていて、見応えがあった。
カップルで行くとしんどいので、同性の友人同士で観に行くことを薦めます。