「新たな高みへ! スパイダーマンズ&ウーマンズ!」スパイダーマン スパイダーバース 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新たな高みへ! スパイダーマンズ&ウーマンズ!
スパイダーマン初のアニメ映画化。
でも、最初の印象は決していいもんではなかった。
サム・ライミ版、アメイジング版、MCU版と製作側の事情や都合で何度も仕切り直され、今度はアニメかよ…。
昨年の『ヴェノム』のエンディング後のオマケ映像の際、蛇足感が…。
ところがところが、
スマッシュヒットとなり、何よりアカデミー長編アニメ映画賞を受賞するほど評判上々。
そうなってくると…ハイ、そうですよ、いつもながらのミーハー心。
で、実際に見てみたら、
別次元の斬新さと面白さ!
我らの親愛なる隣人、スパイダーマンが守るNY。
冴えない少年マイルスは、ある日例のクモに噛まれ、スパイダーマンの能力を手に入れる…いや、もう一人の“スパイダーマン”となる!
さらにスパイダーマンとヴィランの闘いの場に居合わせ、スパイダーマン/ピーターの死を目撃してしまう…。
ピーターがクモに噛まれスパイダーマンになって…なんて設定はもう古い、古い。
別の主人公。
2人のスパイダーマン。
スパイダーマン/ピーターの死…。
これだけでも今までとは違うスパイダーマンなのに、本作はまだまだ新たな設定・展開が続く。
突然受け継がれたヒーローの座に戸惑うマイルスの前に現れたのは…
ス、スパイダーマン…!? ピ、ピーター…!?
でも、何だかちょっと違う。髪や目の色も違うし、お腹もちょいぽっこり、やさぐれている。
ピーターはピーターでも、ピーター・B・パーカー。
彼は別次元からやって来た、別次元のスパイダーマン/ピーターだった…!
何故こんなパラレルワールド的な事が…?
先のこの次元でのスパイダーマンとヴィランの闘いの際、ヴィランが発動させた装置によって時空が歪んだ事が原因だった。
ヴィランの野望阻止とピーターBを元の次元に帰す。
異色のスパイダーマン・タッグを組む事になったんだけど、片やヒーロー見習いどころかヒーロー素人の少年、片やいい加減で人生にもヒーローにも疲れた大人。
ヴィランの秘密施設でピンチに次ぐピンチ。
そんな彼らの前に現れたのは…
またスパイダーマン…!? しかも今度は、女の子…!?
彼女は、スパイダー・グウェン。
マイルスの通う学校の同級生と思っていたら、彼女もまた別次元から来た別次元のスパイダーマン…いや、スパイダーウーマンだった。
一つの次元に3人のスパイダーマン!
おっと、驚くのはまだ早い。彼らの他に、すでにもう先客スパイダーマンが居たのだ…!
別次元の過去からやって来た、スパイダーマン・ノワール。
別次元の未来からやって来たペニー・パーカーは、ロボット“SP//dr”とシンクロして戦う。
極め付けは、ギャグアニメの世界からやって来た、豚が擬人化したスパイダーハム。
一つの次元に集った、6人のスパイダーマン!
本作の最大の注目点は、やはりこれ!
原作コミックにもある設定らしいが、斬新で大胆で野心的!
実写版で言ったら、トビー・スパイダーマン、アンドリュー・スパイダーマン、トムホ・スパイダーマンが集うようなもの。
そう考えると、ワクワク!
面白いのは、それぞれのスパイダーマンの描かれ方。
一人一人、性格も性別も個性も違うのは当然として、
マイルスとピーターBとグウェンは普通のCGアニメキャラ。
スパイダーマン・ノワールは、モノクロで劇画タッチ。
ペニーは、日本アニメのようなセル画風タッチ。
スパイダーハムは、マスコットみたいなSDキャラ。
タッチが違うキャラたちが一堂に集って、それでちゃんとバランスや成り立つの?…なんて心配無用。
しっかりと成り立ち、キャラ立ちにも発揮されている。
スパイダーマンたちに負けず劣らず、作品の方も斬新。
とにかくクールでスタイリッシュで、何よりあのスピード感!
よくレビューを書く時に用いる“快テンポ”“疾走感”“ラストまで飽きさせない展開”とは、まさにこの事!
アクションもアニメーションならではの表現とダイナミックさ。
まるで漫画のような擬音や台詞の吹き出し、圧巻の色彩とビジュアルは、アニメーションだからこそ出来るユニークさ。
それらが融合したクライマックス・バトルの興奮は、神がかりレベル!
監督トリオのセンスがスゲェ…!
さらにさらに、随所に散りばめられたたっぷりの遊び心、小ネタ、オマージュ/パロディーの数々。
実写シリーズの名シーンの再現はすぐ分かったが、ディープネタはコミックファンにこそ堪らないだろう。
あのお馴染みのテーマソング、あの名台詞、あの方のカメオ出演も勿論。
個人的にニヤリとさせられたのが、
ロボットに搭乗して戦う日本アニメ風のペニー。これは知る人ぞ知る“東映版スパイダーマン”へのオマージュ…?
以上の斬新さやビジュアルの影に隠されがちだが、本作はストーリーもしっかりしている。それが一番の魅力かも。
スパイダーマンと言えば、少年の成長や青春の物語でもある。
これまでは専ら、MJやグウェンとの青春ラブストーリーが描かれてきたが、本作は家族のドラマ。
冴えない主人公と真面目な警官の父。ちょっとぎこちない関係の父子ドラマにも注目。
ヴィランのキングピンの野望には、ある過去の悲劇が。憎々しさの中に、悲哀も。
キングピンの部下のプラウラー。まさかのその正体は…!?
スパイダーマンとしての能力を受け継いだのに、全然使いこなせないマイルス。
何故、自分が…?
自問自答を繰り返しながら、ヒーローとして、少年から一歩大人へ。これはもう、スパイダーマン必須要素。
影響を与えてくれた人、先輩や導いてくれる者、欠けがえのない存在…。
成長、再起、絆…。
倒れても何度でも立ち上がる。
そして、君はもう一人じゃない。
抜群のエンタメ性とストレートに響くメッセージ性で、当初の関心の低さから一転、本ッ当に面白かった!
実写版計7本と、このアニメ版1本で、スパイダーマンの映画も8本目。
見る順番が逆になってしまったが、本作を『~ファー・フロム・ホーム』の後にみれて良かったと思う。『~ファー・フロム・ホーム』も勿論面白かったが、本作の後に見てたらちょっと物足りなさを感じてしまったと思う。それくらい本作は、全く新しい!
実写版も大好きだが、スパイダーマン映画最高傑作の声も確かに頷ける。
斬新さや魅力や面白さを新たに兼ね備えて、スパイダーマンはまだまだ大スイング!
近代さん、ご無沙汰コメントですw 私最近レンタルVODで再鑑賞したんですが、画質がSDだったものでアクション部分観てられませんでした。HDもしくはメディア鑑賞必須ですね。
ちなみにスパイダー・ハムは豚を噛んだクモの方が逆にスパイダーになっているというギャグになっております。w