「生焼けホーンテッドチャンプル」ホーンテッドテンプル 顔のない男の記録 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
生焼けホーンテッドチャンプル
観光で日本を訪れたアメリカ人の学生3人。
興味本位で「近付いてはいけない」と言われた寺へと向かうが、そこで怪異に襲われるというホラー作。
ひとつ前にレビューした『JUKAI/樹海』と同じく、製作は海外、舞台は日本のホラー作品となる。
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映画は顔に大怪我を負った男が警察に尋問されるシーンから始まる。
この男は誰なのか? 一体この男に何があったというのか?
……というミステリで物語を引っ張ろうとしたと思うのだが、この結末が特にサプライズにもドラマにも
繋がらないのは残念というか逆に驚いた。素性を隠すのは、物語上の伏線なのが普通じゃないのかしら。
いちばん物語上で伏線張ってたのはあの男の子かね。あの分かりきったサプライズをサプライズと呼ぶならだけど。
上記を含め、思わせぶりな要素は色々提示されるのだが、提示するだけで結局どこにも行きつかない要素が多過ぎる。
寺のある森で行方不明になった5人の子ども……
寺に住み着いていて殺されたという謎の僧侶……
目玉をくり抜いて森から戻ってきた男……
半人半狐の妖怪の伝説……
それら不気味な情報の数々がどう繋がるのか期待したが、なんとひとつも回収されずに終わるんである
(怪異として登場はするけど、そこで終わりなのよね)。
だいたい「あの寺はヤバい」と皆が口にするのに、寺がおかしくなった起源が全然語られないのは何故なのか。
ううむ、狐の妖怪が人々の精神を惑わしてるってこと? その割にはフツーの獣みたいな襲撃しかしないし。
幼馴染のケイトに秘かに思いを寄せてるらしい主人公クリスと、ケイトの彼氏ジェームズの三角関係も
描かれるが、怪異の話と同じくらいの尺で、主人公らの痴話喧嘩に付き合わされる。眠いです。
幼馴染を喜ばせようと寺の情報を拾ってくるとか、途中で彼らを分断させるための動機として
多少は作用してるのかもだが、そんなに引っ張るとこなのそれ?と、ウトウトしながら観ていた。
竹中直人や古舘寛治も存在感たっぷりに出演しているのだが、その存在感の割には本筋には絡まない。
彼らを知らない観客だったら「あのやたら高圧的なグラサン刑事は何だったんだ」とか
「あのやたら訳知り顔なサラリーマンは何だったんだ」とか首を傾げるんじゃないかと思う。
……あれ? そもそもあの寺の書物が骨董品店に置いてあったのって何でだっけ? そんな物騒なものなら店頭に
置いちゃダメでしょと思うのだけど、まあ怨霊が無知な人をおびき寄せるために置いてたということなら、まあ。
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半人半狐の妖怪のビジュアルは凝っててちょっと良かったのと、
ひとつ前にレビューした『JUKAI/樹海』と同じく、アメリカ映画
にしては日本描写が割とリアルな方なのが救いだろうか。
けどまあ……総じてイマイチな出来でした。ホラーっぽい要素やミステリっぽい要素を
色々チャンプルしたけど、炒めきれずにグズグズのまま仕上がっちゃった感じ。
個人的最低点の1.5までは付けないが……かなーりイマイチの2.0判定で。
<2018.09.24鑑賞>