サリュート7
劇場公開日:2018年1月23日
解説
ロシア宇宙計画の歴史に残るスペースミッションを、国営宇宙開発企業ROSCOSMOS全面協力のもと映画化。1985年、ロシアの宇宙ステーション、サリュート7号が突如として制御不能になった。このままでは地球に落下する恐れがあるため、宇宙飛行士をステーションに送り込んで直接修理することが決定。サリュート計画に当初から関わってきた技師ビクトルと退役パイロットのウラジミールが担当に選ばれ現地へと向かう。彼らは無事サリュート7号に到着するが、ステーション内部は氷漬けになっており、全機能が停止していた。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2018」上映作品。
2016年製作/118分/G/ロシア
原題:Salyut-7
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
スタッフ・キャスト
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2022年7月2日
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鑑賞方法:VOD
やはり潜水艦モノと同じ極限×限定空間なのでハナシが締まるのでしょう。基本的に宇宙空間描写が違和感なくハリウッド同等に美しく、SFX好きも充分楽しめます。
ただ本作で私は吹き替え版を見たためか、親しいロシア人飛行士の雑談や宇宙技術的やりとりが、少々単に粗野な野郎の会話や古臭い機器の操作説明みたいに聞こえるような気もしましたが、たぶん豪気なロシア文化とお堅いソ連への先入観からの私の勘違いでしょう。
また同カテゴリの名画としてどうしても「アポロ13」と比べてしまいますが、作風(あちらは宇宙開発魂、こちらはロシア人魂)や趣旨(あちらはチームワークと英知、こちらはロシア人魂と火事場の思いつき)が全然違います。
寧ろそこがこの映画の楽しみどころなので文句は言えませんが、ただそのお陰でどうしても1970年米宇宙船・ヒューストンより15年も後の1985年のソ宇宙ステーション・バイコヌールのほうが恐ろしいほど技術が遅れていて雑でルールもいい加減に見えてしまいます。あれがリアルなら、あんなアバウトな宇宙プログラムで事故や犠牲者が米国より何倍も多いのも無理はない…。
実際のサリュート7サルベージミッションがどういったものであったのか、ググってもあまり情報が無いので映画描写の正確性や盛りの程度が分かりませんが、本当なら実にすごい大冒険で、飛んだ飛行士はまさしく「宇宙英雄」と呼ばれるに値します。彼らなら、仮にアポロ13号に乗って同じ事故に見舞われても、無事帰還どころか勝手に修理して月面着陸までこなしそうです。その意味では比較対象は「アポロ13」よりも「スペースカウボーイ」のほうが妥当かも。
もっと楽しめるように、ちょっとロシア語勉強して字幕版を見てもう一度評価したい作品です。ムリか。
2022年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
アポロやファーストマン、ゼログラビティ、強引に含めるならインタステラ―など、
アメリカ映画における宇宙を舞台にした作品は多く見てきたが
ここへ来て実話ベースのロシア作品はインパクト大だった。
そもそもコンスタントに宇宙へ参入し続けてきた大国。
おそらく映画化できるようなエピソードに、資料など事欠かないのではないかと思える。
ゆえにか、肩の力の抜けた、しかしながらリアリズムあふれる映像に余裕さえ感じてみたり。
押さえた俳優陣の演技にも引き込まれる。
まったくもってアメリカ映画と双極を成して過不足なし、
同カテゴリーにおけるテイスト違いの出来ばえだった。
(旧ソビエトのノスタルジーやデザインが好きな者としては、若干ロシアへ軍配を上げてしうかも)
それにしてもだいたいどの作品もそうだが、
最後のフロンティアと呼ばれる宇宙の逆境加減には半端がない。
生身の人間の無力さとひ弱さが、むき出しにされる。
だからこそ精神と知恵が毎度、試されるようで、
ヒリヒリ感と先の読めなさがたまらなかった。
ロシアの宇宙と戦争ものに、今の所、はずれなし。
2021年4月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
仕事に対する情熱、家族への愛。家族として見る仕事、残される不安。指示を出す責任、指示を全うする責任。命を守ろうとし、命を賭けようとする。全ての立場の、あらゆる感情が交差する。
事実に基づき、とあるがソ連時代のお話。それでも映画として、作品として、テンポ良くドラマチックにまとまっている。脚本が素晴らしく、2時間という枠の中に、起承転結を気持ち良く詰め込んでいる。そして、宇宙の綺麗さと怖さを見せる、演出が何よりも秀逸。違和感の無い、主張しないCGが絶妙。
これを機にサリュートやソユーズなど、色々と詳しく調べたくなる。実際には有り得ない若干の脚色はあるが、それは映画を楽しんで貰う為のスパイス。
有名な俳優達をキャスティングせずとも、これだけの素晴らしい作品が作れる事を、改めて実感させられた。エンドロールに当時の映像?が出てくるが、見事に本作で再現していたのがわかる。実際にあった事を基にした作品の中ではオススメの傑作。
2021年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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制御不能となった宇宙ステーションの修理に臨む宇宙飛行士の勇気ある偉業、最後まで望みを捨てない彼らの選択をドラマチックに描いています。関連の国営企業や研究所の全面支援もあって映像のリアリティも素晴らしい、本格的スペース・アドベンチャー映画です。
意外なのはお堅いソ連らしくない飛行士の自由奔放ぶり、「アポロ13」と比べたら地上管制チームが余りにも頼りにならない自虐ぶり。難解な故障究明でなく叩いて直すシンプルプランも素人向けにはグッドアイデア、国家でなく個人の偉業に寄せたりスペースシャトルまで出したのは海外市場を意識してでしょう。
(以下ネタバレ、興醒め注意)
実話とあるがググってみたら偉業は手動ドッキングくらい、実際に復旧は大変だったらしいが原因は太陽方位センサーでなく充電センサーが故障し充電しなくなった為の電源喪失、火災も船外のハンマー作業もスペースシャトルとのランデブーも脚色、必要な不足物資は無人補給船で届け復旧完了、もちろん飛行士も暫く滞在の後、無事帰還。もっとも、ソ連時代のことだから公表ですら真贋の程はわかりませんね。
サリュート7は復旧したものの6年後に軌道を外れ1991年2月7日に南アメリカ上空で最終的に燃え尽きました。プーチン大統領もプレミア上映を観たらしい、心中は不明だが御咎めは無かったようですね、旧ソ連だったら別の映画になっていたでしょう。