「もしも自分が」(r)adius ラディウス 白石黒井さんの映画レビュー(感想・評価)
もしも自分が
記憶喪失になり、記憶を取り戻した後自分が最低の人間だと気付いたらどうなるのだろう。自分の欲求の為に人を殺していたと知ったら自分はどうするんだろう。
精神科の人に聞かないと分からないと思うが、もしも殺人鬼が記憶を取り戻したならば、やはり段々と殺人鬼へと変貌していくのだと思う。よっぽどの生まれつきの殺人鬼でもなければ、殺人鬼になるまでに積み重なった圧迫された過去の感情と衝動的な感情が組み合わさって最初の殺人を犯したのだと思う。最初の殺人は倫理観との戦いの中で人を殺し、そこから人殺しのタガが外れていったのだと思う。
このradiusの主人公は、過去のそういった感情も、倫理観もあまり崩壊せずに日常的な行動が出来る程度の記憶しか持ち合わせていない中で気付いた。自分が怪物だったのだと。
主人公が言っていたように彼は「歩く時限爆弾」で、記憶を取り戻していくと共に、殺人鬼になるまでの感情を取り戻していくのだと思う。ラストのシーンで自決出来るかどうかの決断は、怪物になるか人のまま死ぬかの一つの瀬戸際、最後のカウントダウンだったんじゃないかいかなと思う。襲われた3人組も普通に殺してたし。
あれ以上主人公が生きていれば、過去の自分に戻り、より多くの人を殺すまさにテロリストになっていた・・・かもしれない。ハッピーエンドというのか、後味が悪いというのか、胸にわだかまりができたまま終わった作品だが、このあっさりさが物語を冗長にせずに、自分にはよく思えた。
途中から主人公は映画でよくいる殺人鬼だというのは察しがついていたが(イケメンの主人公で家が豪華なのに独身、家具が少し独特で映画監督が考えそうなシリアルキラーっぽい家、別荘持ってる等)、しかし最期に自決するとは思わずに少し驚いた。
なんだかもうちょっと煮詰めればいい作品になったんじゃないかと少し考えたのだが、やっぱりこの結末にするのなら、これ以上尺を延ばすのは意味がないだろう。この作品はこの終わり方でいい。そう思える。