ダンガル きっと、つよくなるのレビュー・感想・評価
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壁をぶち破り続ける親子の奮闘に爽やかな感動をもらった
インド映画のハズレなしの骨太さを改めて実感させられた。この親子は逆境を大きなチャンスに変えて前へ前へと突き進む。まずは「女の子がレスリングなんて」という固定観念をぶち破り、自分の限界を突き崩すためにそのまた先の壁を超える。だが、目の前に立ちはだかるどんな強靱な敵にも増して、この強烈な親子愛、あるいは姉妹愛そのものが、人生における最後の試練となって覆い被さってくるあたりは構成としてとても巧い。最後には自分との戦いとなり、この巣立ちの通過儀礼をどう越えられるかがポイントとなってくるのである。それに比べるとレスリング協会の代表監督なんて小物でしかない。幼かった小鳥が最後の戦いを迎える時、親は会場にはいない。設定としては強引な感じがしつつも、なんと爽やかな巣立ちの演出だろう。結果オーライ。作り手の情熱と根性に、観客である私たちもあれよあれよという間にうまく組み伏せられる。それがまた心地よい一作だ。
良い指導者さえいれば!
最初は、貧困ゆえレスリングが続けられず金メダルを取ることが叶わなかった父親の夢を、無理矢理娘たちに託した、悪く言えば父親のエゴかと思っていたが、とんでもない!
社会がどうであれ娘たちの可能性をとことん信じる父親と、それに応えるべく邁進する娘たち、その両者の間にある絶大なる信頼、それに思い至った時、昔から言われている(最近ではビリギャルで有名になった)
『悪い子がいるんじゃない、悪い指導者がいるだけだ』
という言葉がバーン!と眼前に蘇った。
その子をちゃんと見て、理解して、相互に信頼関係が成立した中で、合った指導をしてあげれば、誰でも必ず伸びていく。
それは何もスポーツや勉強に限らず、ふだんの子育てにも当てはまる普遍的な理論、私もやり直せるものならやり直したい。
心に残ったセリフの数々を書き留めておく。
14歳で、親の決めた顔も知らない婚約者の元へ嫁がなければならない友達からの言葉。
『村中に非難されても黙って耐えてる。
それは娘の将来のため。いい父親よ。』
終始言葉少なに眼力鋭く、有無を言わせぬ威圧感を漂わせている父親の姿が印象的です。
ギータが全国代表になり、NSAのコーチから
『今までのトレーニング、食事管理、技、すべて忘れ ろ。俺の教えることだけ学べばいい。』
ダメな指導者の代表ですね。
NSAで新しい技を習い、それで父と対決して勝ち、奢っている姉ギータに妹バビータから
『技は弱くないよ、父さんが弱くなった。
その弱い技で全国大会に勝ったくせに。
ギータは自分の技を信じて。
私は父さんの技を信じる。』
バビータが全国大会に優勝してNSAに行く時、父から
『ここまでの道のりを絶対に忘れるな。』
新しい指導の元、国際大会で一勝も出来なくなったギータ、しかし今更父に教えを請えない、と躊躇している時にバビータから
『私達の父親だよ。
何も恐れることないわ。
説教を受け入れなきゃ。
今までそれに救われてきた。』
ギータ、コモンウェルス大会準決勝後の記者会見で
『この勝利による
すべての名誉を父に捧げます。
父からの信頼は絶大でした。』
決勝前夜に父からギータへ
『戦略は一つしかない。
人々の心に残る試合をしろ。
銀メダルだとやがてお前は忘れられる。
金メダルだと人々に勇気を与え、
子ども達の希望として永遠に残る。
勝利はお前だけのものじゃない。
何百万もの少女の勝利となる。
男より低い地位にいる少女の勝利だ。
今の少女達には家事と子育てしかない。
明日の試合はとても重要だ。
敵はオーストラリア人じゃない。
女を下に見るすべての人間との戦いだ。』
決勝戦で、背水の陣のギータに浮かんできた父の言葉
『お前の危機を救えない時だってある。
戦い方は教えるが、
戦うのはお前だ。
自分で乗り切れ。』
《成績》
2010年コモンウェルス大会
55キロ級 ギータ 金メダル
51キロ級 バビータ 銀メダル
2014年コモンウェルス大会
55キロ級 バビータ 金メダル
2012年 ギータ オリンピック出場
実話ベースのレスリングの物語
DVDでは2時間40分の内容になっている。時間だけ見ると非常に長く感じるが、実際は時間の長さを感じるまもなくあっという間という感じ。インド映画の毎回の面白さ、質の高さには驚かされる。
インド社会は男尊女卑で、女性は早くに結婚して子どもを産んで家事をして家庭の中で人生を送ることが女性のあり方とされている。そんな中、女性がレスリングをするなんて考えられないのである。
物語は実話に基づき、父と2人の娘のレスリングを通しての成長が描かれる。
最後の最後で父の言葉を思い出し、自分自身で困難を乗り越えたところで掴んだ勝利は感動的な場面だった。スポーツ選手の言う「勝てたのは支えてくれる人たちのおかげ」というのはこういうことなのかと思った。
父と娘の金メダル
今年はインド映画の当たり年!
『バーフバリ』に続いて、またまたメッチャメチャ面白い映画がやって来た!
実話に基づく、熱血スポ根×父娘愛ストーリー!
現役を引退したインドのレスリング王者、マハヴィル。
国際大会で金メダルの夢を息子に託すが、産まれてくるのは娘ばかり。
父の夢は夢と消え…。
そんなある日の事だった。
長女ギータと次女バビータが近所の男の子と喧嘩して、ボコボコにする。
マハヴィルは胸躍る。
これだ!娘たちをレスラーに…!
父娘二人三脚で、目指せ!夢の金メダル!…なのだが、最初からそうではなかった。
娘たちは自ら望んでレスラーになりたいのではなく、父の独断。…いや、もっとはっきり言っちゃうと、娘たちの意思などお構いナシ、無理強い。
娘たちにとっては、近所の男の子をボコボコにした罰?
父の特訓は超スパルタ。早朝からランニング、ハードな稽古…。
娘たちも年頃なのに、民族衣装は脱がされ、頭は丸坊主に。
少なからず反発するが、基本逆らう事は許されない。
父さん、やめて~~~!
そんな娘たちの声は届かず、星一徹ばりにシゴきにシゴきまくる。
そんな父のやり方は村中から批難される。
娘をレスラーにだって?
村の英雄から一転、変人扱い。
それはつまり、娘たちも学校でからかわれるという事。
特訓も辛いが、周りの嘲るような視線も辛い…。
しかし…
インドの女性は年頃になると、結婚して家庭に入るのが当たり前。
女性がそれ以外の場に立つなど、まず無い。
始まりはどうあれ、父が与えてくれた他とは違う道。
確かに端から見れば、イカレ親父かもしれない。
でも、何事も“初めて”は白い目で見られる。
娘たちの中で何かが変わり始める。闘争心に火が点く。
ここから本当に、父と娘たちの二人三脚。
父の特訓はさらに厳しくなり、娘たちは必死で食らい付いていく…。
長女の初試合。
結果的に言うと、健闘はしたものの、負けた。
さぞや父は厳しい言葉を投げ掛けると思いきや、父は娘の健闘を笑顔で称えた。
単なるイカレスパルタ親父ではない。
何より娘たちの力と可能性を信じている。
ここからこの父が、厳しくも常に娘たちを思う愛ある父親に見えてくる。
メキメキ実力を上げ、NSA(国立スポーツ・アカデミー)へ。
先に長女が入るが、思わぬ事態が生じる。
父の下を離れ、初めて手にした“自由”を謳歌する。丸坊主にさせられて以来久々に髪を伸ばし、化粧したり、NSAで出来た友達とショッピングしたり、年頃の女の子らしく。
かと言って、特訓はおろそかにはしていない。
NSAで新しい技や視野を広げ、自信が付く。
父のやり方は古臭い、と…。
父との間に確執が。まだ父の下で特訓を続ける次女とも言い合ってしまう…。
帰郷した際、特訓法の違いから対立、一試合する事に。
ここは見てて複雑な心境だった。
どっちにも負けて欲しくない。
父の言い分も分かるし、長女の言い分も分かる。
この試合、父が負けた。
ただ娘の方が強かったという訳ではない。確かに長女は実力が付き強くなったが、父も老いたのだ。
父を負かした事でさらに自信が付いた長女は、意気揚々と国際大会へ。
が…
負ける。しかも、無様に。
一勝も出来ない。
何で…? どうして…?
女性にレスリングは無理なのか…?
インドはレスリングで金メダルを獲る事は出来ないのか…?
NSAのコーチからは「国際大会には向いてない」とまで言われてしまう。
期待が失望。落胆。自信喪失。…
そんな時、長女が再び頼りにしたのは…。
長女を信じ、手を差し伸べたのは…。
言うまでもない。
ここからの展開は私如きの駄文ではなく、是非ともご自身の目で見て頂きたい。
本当に、白熱!興奮!感動!
胸奮え、熱くなる!
主演アーミル・カーンは、選手時代~引退後の初老を演じるに当たって、27㎏増減の肉体改造!
その役者魂に圧巻させられるが、それと同じくらい、長女ギータ役のファーティマー・サナーの奮闘も称えたい。
彼女が最も試合シーンが多く、全てガチ!
豪快な技、白熱&迫力の試合シーンは、本当に拳を握り締め、手に汗握る!
勿論、次女役も奮闘。
練習相手の従兄がユーモアをもたらす。
インド映画だけど、歌って踊るシーンは無いが、歌曲に彩られ、歌詞が娘たちの心境を表す。
♪やめて 父さん
♪まるで拷問 地獄
娘たちには気の毒だが、ここら辺がコミカルでもある。
ニテーシュ・ティワーリー監督の演出はちょっとご都合主義で、人物の心情の描き込みも浅い点もあるが、テンポよく、感動と興奮を一切中弛みする事無く魅せてくれる。
実話が基なので、オチは分かり切っている。
インドに女子レスリング・ブームをもたらしたという。
ラストの父のある台詞と、抱き合う父娘の姿こそ、金メダル以上。
これは、インドに於けるレスリングの歴史を変えた物語である。
偏見や決まり切った考えの社会やNSAとの闘いでもある。
女性が自分自身で道を切り開く闘いでもある。
父と娘の闘いでもある。
そして何より、
父親の夢を継ぐのは息子だけとは限らない。娘だって継ぎ、夢を実現させる事が出来る。
父はそんな娘たちを信じて疑わなかった。これっぽっちも。
父と娘の、信頼と絆と愛の金メダル。
本当に良かった!面白かった!
昨年は『哭声 コクソン』『お嬢さん』『アシュラ』と韓国映画を年間BEST級に選んだが、
今年は『バーフバリ』に本作とインド映画が年間BEST級になりそう!
けっこうよかった
インドでは女子レスリングが市民権を得ていない時代に、娘に英才教育を施すお父さんと、それに答える姉妹が健気で素敵だった。大学に行ったあと、自主的に髪を切るところがよかった。時代的に吉田沙保里が彼女の前に立ちはだかるのではないかと期待したが出なかった。
音楽は景気良く掛かっていたがダンスはなかった。
国歌を背に。
アーミル・カーンの映画に
ハズレなしと聞いても
前半は親のエゴイズムの
犠牲になったシーンばかりでなじめず。
帰ろうかなと思ってしばらく
見てみていたんですが
地方試合に出始め、
その格闘シーンのリアルな描写に、
ん? 面白い…
いつのまにか作品にドップリ。
姉妹の表情も自信に溢れ
眼差しが涼しい。
街の目線も変わる。
やがて自身の成長による
父との確執。
自由な生活観から家族と疎遠に。
世界大会では勝てず。
みていて辛いです。
少なからず、誰もが経験する
思い上がりの気持ち。
電話で泣きながら
父にすがる場面では
思わずもらい泣きに。
なにがあっても窮地の子に
父なら行動をおこす。
ここからは、
ずーと、
エンドロールまで、こころを
持っていかれました。
勝負を決める最後の数分。
練習中に川に落とされ
橋の上の父から、
最後は自分の力で
なんとかするしかない事まで
教えをもらっているなんて!
国歌を聞いて、娘の勝利を知る
カーンの表情がまたいいんです。
もう。興奮しすぎて
わけがわからない
状態になりました。
この名誉を父に捧げますと
渡されたメダルを娘の首に
かけてあげて、
二人の娘を
抱きしめる場面は最高でした。
冒頭で、この作品は脚色して
ありますよとコメントがはいりますが
エンドロールで実物の
ギータとバビータがでてきた時には
熱いもんが湧いてきます。
誠実な作品作りが清々しいです。
もっと
上演会場増やして欲しいなぁ
おすすめ。
見事なレスリング映画
ギータ・マハヴィルが55kg級で優勝したコモンウェルスゲームズ(2010年インド大会)は、国際大会と言っても参加国が限られており、こと女子レスリングにおいては世界選手権には及ばないレベルの大会だ。
なにしろ、日本が参加していないのだから。
とは言え、ギータは2012年ロンドンオリンピックにインドの女性として初めて出場しているし、
世界選手権やアジア選手権の場で吉田沙保里や村田夏南子(現、プロ総合格闘家)と戦っている。
2013年以降、姉妹で階級を上げ、妹のバビータも吉田沙保里と戦い、ギータは伊調馨とも戦った。
そして、妹のバビータは2016年リオデジャネイロオリンピックに出場している。
インドでは、レジェンド的な存在なんだろう。
映画は、インド映画らしくユーモアを盛り込みながら、分かりやすくテンポよく進行し、最後はホロリとさせる手練れの演出で魅せる。
父親役で主演したアーミル・カーンの肉体改造が話題の本作。
確かに肉体変化もすごいが、レスリング的な動きも見事だった。
娘役の二人の女優も(幼少期の二人の子役も)、流石にカーンほど肉体は作れていなかったけれど、ブリッジなどちゃんとできていた。
そもそも、インドにはインド相撲(クシュティー又はコシティー)という伝統の格闘技があり、男子ではクシュティーを基礎とした多くの強いレスラーを輩出している国だ。
グレート・ガマという伝説のプロレスラー(500戦無敗?)がいたりする。
タイガー・ジェット・シン(カナダ人)が本当にインド出身かどうかは知らないが。
このクシュティーは砂の上で戦うのだが、
映画でも少女たちは砂の上でトレーニングしており、
髪の毛が泥だらけになると文句を言って丸刈りにされてしまう。
また、マットレスリング(フリースタイルレスリング)を父親がレクチャーする場面があり、
インドの田舎の子たちは国際ルールのレスリングを知らないんだと、驚いた。
ここで父親が言葉で説明するビッグポイントの技がクライマックスに繋がるあっぱれな構成。
レスリングは、ボクシングに比べると振り付けも演じることも難しい。
しかし、女優たちは確りとレスリングの演技ができていたと思う。
レスリングシーンにリアリティがないという意見も耳にしたが、ならば「ロッキー」のボクシングシーンも全くリアルじゃない。
映画的には、迫力を出すことと状況(戦況)を分かりやすく示すことが重要。
その意味で、本作のレスリングシーンも「ロッキー」のボクシングシーンに劣らない見事な見せ方だった。
防御か攻撃かの戦略や、クラッチの切り方の技術論などに信憑性はいらない。
最後にジャーマンスープレックスで大逆転なんて、胸踊る演出だ。
さて、メインテーマはインドの男尊女卑文化を背景に、常識を覆す父親の娘教育と、父娘の絆だ。
ただ、前半では女の子がレスリングをすることが驚きのように描かれているが、地元を出てジュニアなどの国内大会に出場する場面では、なんだインド国内に女子レスラーは結構いるんじゃないか、と思った。
父娘の住まいが田舎なんでしょうね。
ギータがナショナルチームに入ってからの後半は、スポーツ映画の色を濃くしていき、父娘の対立と絆が前半とは異なった形で表現されている。
ナショナルコーチのいらないプライドと嫉妬は、我が国にも共通するなぁ。
最高!
手に汗握るとはこの事か!
最後は涙ポロポロ出た。
悲しくて泣くんやなくて感動して泣いた。
なんとも言えん いい気持ち!
上映時間長いのに短く感じた。
インド映画すごいわぁ!
『いやぁ映画って 本当にいいものですね!』
ベタ褒めやけど… ほんまオススメします。
パンフレット欲しい。
せやけど、吉田沙保里さん どんだけ凄い人やねん!
改めて思いました。
『女を下にみる すべての人間との戦い』
『最後は自分で乗り切る』
眼差し
とてもいい作品だった。
あまり多く語らぬ父の眼差しが、とても印象的だった。
金メダルを目指す父と娘の物語。
実際の話が元にあり、登場人物以外は創作らしいのだが、語られる背景も説得力が大きかった。14歳で嫁がされるインドの風習や、家長である父の絶対的な発言力や、スポーツを取り囲む環境などなど。
試合の緊張感は抜群で、つい前のめりになって観てしまう。金メダルを決めるラスト7秒の描写などは、こちらも拳を強く握ってしまっていた。
年齢の表現も秀逸で、違和感を全く感じさせなかった点も嬉しい。
なにせ、娘の才能を信じ開花させた父と娘の半生に涙が溢れる。
厳しさと優しさを感じた作品だった。
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