「スポ根の嫌なところが全て出てる」ダンガル きっと、つよくなる エイブルさんの映画レビュー(感想・評価)
スポ根の嫌なところが全て出てる
中心にいる父親の本気の葛藤は物語序盤の人物設定で完了。それ以降がむしゃらに突っ走るので、おめでたい、としか思えず、まだ数歩、迫って来ない。
本作は女子レスリングを通して、父親の終盤のセリフのとおり、「女を差別する人間たちとの闘い」に挑む親子のスポ根映画、としたいのだろう。
が、当の娘たち本人のレスリングへの動機、たとえば、愛や情熱といった、個人の自由意志がどこにも描かれていない。我が子に男が生まれなかったことで夢をついえた父親への同情だけで、まあ頑張って、そのまま終わる。
しかしそれこそインドの女性蔑視社会の姿ではないか。本人たち女性の意志など構うことなしに男性目線のパワハラまがいの快楽に従属し終始する青春は非情だ。つまり、皮肉にも、性差別の根深さを、その差別を批判するための本作こそがまざまざと体現してしまっている。鳥肌モノだ。
また、これだから、スポ根ものは思考停止でいやだ、とも思う。
全編を通して、庶民派を通り越して幼稚な説明描写、それがくどいのも、さらにこの映画の質を下げている。質の低さに笑う自分に、自己嫌悪して、背筋がうら寒い。
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