「一つ屋根の下バラバラの家族」ハッピーエンド とえさんの映画レビュー(感想・評価)
一つ屋根の下バラバラの家族
主人公たちの自分勝手っぷりがなんとも面白かった
北フランスの大手建設会社を営むロラン一家
三世代の家族が共に暮らす彼らだが、それぞれに秘密を抱え…
イザベル・ユペール、ジャン=ルイ・トランティニヤン、マチュー・カソビッツという、フランスの大スター共演にひかれて観た作品
まぁ、まぁ、とにかく、みんなが自分勝手。
自殺願望のお祖父ちゃん、父の会社を継ぎ、不出来な息子に頭を悩ませつつ、その裏で再婚のプランを練る長女、密かに不倫しながら夫婦円満を演出する長男、人の命を軽く考える長男の娘、裕福な家庭に生まれ、移民たちや貧しい人たちの窮状を見逃せない次期社長候補の長女の息子。
恐らく、お祖母ちゃんが生きていた頃は、うまくいっていた家族。
しかし、お祖父ちゃんの思いがけない行動をきっかけに家族は「都合の悪いこと」から目を逸らして生活するようになる。
ホントはエヴがお母さんに薬盛ったことだって、トマが不倫してることだって薄々気づいていたのに、誰も何も言おうとしない
というか、興味を持とうとすらしない
お手伝いさんの娘が、彼らの飼っている犬に足を噛まれたことだって、ホントは病院に連れて行かなきゃいけないのに、大したことないからと言って済まそうとする
工事現場で事故が起きても、その遺族が暴力を振るったことを脅しの材料にして酷く安い賠償金で済ませようとする
恐らく、お祖父ちゃんと現社長の時代は、そうやって貧しい人たちを見下し、利用することでやってこられた
しかし、これからの次期社長の代は、貧しい人たちや移民たちの権利を守らなければならない時代になる
その温度差が、社長親子を苦しめる
時代は移り変わり、一番若いエヴは携帯でしか本音を話すことができない世代になっている
それでも、今までのやり方を押し通そうとする上の世代と、それについていけない下の世代
世代間のコミュニケーションはだんだん希薄になり、金持ち一家のやり方も通じなくなっていく
個々の望むハッピーエンドは違うのに、彼らが共に暮らす意味はどこにあるのか
いつしか、人々の感情が希薄になり、人が死んでいく姿がライブ配信される時代がやってくる…
と映画は嘆く
いや、もしかして、そんな時代は既に到来しているのかもしれない