「しあわせな最期の来ないエンディング」ハッピーエンド りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
しあわせな最期の来ないエンディング
前作『愛、アムール』から5年、そろそろ嫌な思いのする映画を撮る順番だとミヒャエル・ハネケ監督自身が言ったという。
フランス北部の大邸宅、ロラン一家。
老主人ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は事業を娘アンヌ(イザベル・ユペール)に譲って引退している。
息子のトマ(マチュー・カソヴィッツ)は医師で、前妻との間に13歳の娘エヴ(ファンティーヌ・アルデュアン)がい、現妻アナイス(ローラ・ファーリンデン)との間には幼子が生まれたばかり。
何不自由ない生活のように思えるが、それぞれに問題を抱えている・・・
といったところから始まる物語で、全編長廻しのカメラで取られた映像は、当初、何が起こっているのかが掴みづらい。
冒頭、スマホでバスルームの様子を盗撮している。
女性が、洗面所で吐き、口をすすぎ、用を足す。
精神的に不安定な様子で、その画面の上に撮影者と誰かがやり取りしている小さな文字が出ては消えていく。
被写体の女性はエヴの母親(トマの前妻)で、精神を病んでいることが後にわかる・・・
と万事このような語り口で、ある事象が映され、その後に、その事象についての説明のような描写が登場する、といった具合で、なかなか状況を理解するのが難しい。
が、それぞれが抱える(隠している)問題がわかってくると興味が湧いてき、後半、ジョルジュの過去が明かされると、本作が『愛、アムール』のハイドストーリーのような趣であることがわかるが、そうなるころには映画の3分の2ほどが過ぎてしまっていました。
うーむ、さてさて、これを面白いといえるのかどうか。
タイトルは、映画のハッピーエンディングの意味ではなく、文字どおり「しあわせな最期」。
しかし、そんなものは訪れない。
「しあわせな最期」を迎えることができなかったジョルジュとロラン一家・・・
これまでの諸作ほどの衝撃はないけれども、嫌な思いは結構しました。