「抑制してはできない経験」君の名前で僕を呼んで さとうさんの映画レビュー(感想・評価)
抑制してはできない経験
エリオにはかわいい彼女いたね
オリヴァーもナイスバディとワンチャンあったね。この女性達との距離感の縮め方はすごくフットワークが軽い。それが世間の認識なんだと思う。男女だし
でもエリオとオリヴァーは違う。男性同士だから。だから近づくまでに少し時間がかかった。
何度もエリオを制するオリヴァー。電話のシーンで何気なく言った「僕の父に知られたら矯正施設行き」という言葉。
エリオの家族が寛容なだけで、マジョリティなのはオリヴァーの父親なのだと思う。
「幸いまだ恥じるようなことはしていない」
と制する際に言った言葉。
恥という認識があるオリヴァー。
この言葉のまま引き下がっていたら、父親の言う「抑制ゆえに得ることができなかった経験」になっていたんだと思う。
オリヴァーはエリオがとても好きだけど、好きだから一歩引いたような感じだった気がする。
エリオは好きだから繋がっていたいような、でもそんな言葉では片付けられない二人〜!!!
そして別れはしんどいの言葉しか出ない。
帰り旅の宿の中、眠っているエリオを見ながらとても悲しそうな顔をするオリヴァーは見てて辛い。
オリヴァーの最後の言葉
「I remember everything(何ひとつ忘れない)」
これはあの夏の思い出がオリヴァーという人間の一部を構成しているということ。エリオも同じ。
そして「君の名前で僕を呼んで、僕の名前で君を呼ぶ。」この行為はどういうことなんだろうと思ってた。
相手を思い相手を呼ぶ行為は相手を二人称として認識している。
じゃあ相手を思い自分を呼ぶのは一人称としての認識なのでは?と思った
君の名前で僕を呼ぶという行為は、自分の中に相手がいるという事実を認知し肯定し、同時に愛を伝えているということなんだと思う。
相手が心に住んでいる状態の自分を愛しそうに呼ぶんだよこの二人は!尊い!!
ひと夏の、過ぎ去りし失恋だけど、彼らを構成する一部分、父親の過ごせなかった経験を二人は自分の中に取り込んだ。
抑制しては手に入れることの出来ない世間的にはマイノリティな経験が、とても綺麗にまとめられていた。深い…深い…