「詰め込み過ぎた勿体ない作品」移動都市 モータル・エンジン ダコタさんの映画レビュー(感想・評価)
詰め込み過ぎた勿体ない作品
ビジュアルやCGは最高。
歴史や世界の設定、各都市や立場の対立なども面白く、斬新で、ここまではいい基盤ができていると思う。
だが、とにかくいらないものが多い。
詰め込み過ぎてメインにどこを見せたいのか、どの脇役も脇エピソードも主張が激しすぎてはっきりしないので、もっとシンプルに削るべきだったと思う。
特に以下の2点。本当にいらない。
◆トム・ナッツワーシーが蛇足キャラ
冒頭で最初に出てくる、第二の主人公ともいえる考古学を研究している青年、トム・ナッツワーシーは存在自体の必要性を感じない。
主人公のへスターにただ金魚のフンのようについて回り、足をひっぱり、特別なことはしていない。
あえて活躍できたシーンはラストバトルでのロンドンのエンジンに攻撃をしかけるところだが、彼でなくても補えた描写。
物語を動かすような特別な使命を背負っているわけではなく、ロンドンと戦う目的も無い。
終始このキャラクターが話のメインに居座っているのが目障りだった。
「彼でなくてはいけなかった」点があるなら教えてほしい。
◆シュライク(復活者/ストーカー)のエピソードは削るべき
シュライクのエピソード自体は個人的には好きだ。
哀愁を感じさせるし、彼の船にある人形の描写も不気味でよかった。
へスターと育んだ家族愛も、単独のエピソードとしてはとてもいい。
だが、この物語はあくまでも「ロンドンを倒す」のが主軸。
映画という単発の作品の中で、シュライクのエピソードは完全に主軸から外れる形で独立しており、まさに蛇足である。
ここを削ってもメインストーリーに全く影響がない。
どうしても表現したいエピソードがあるのはクリエイターとして当然のことだが、それをなんでもかんでもねじ込んで追加していくのではなく、時には身を切る思いで描きたい描写を削るのもプロの仕事として必要だ。
ロードオブザリング3部作や、ドラマ作品のように長い作品ならまだ雑然とした展開でも見れるが、たった2時間程度の単発作品においてあれもこれもエピソードを詰め込まれると消化不良になる。
とにかく、もっとエピソードを削って、メインに絞ってほしかった。
また、刑務所を爆破したが、シュライクの牢獄だけを爆破すればよかったのでは?
資源のない世界で都市の食い合いをするほど貧窮しているのに、貴重な建造物資源を容赦なく爆破していく描写などにも疑問を感じる。
映像が良いだけに、ストーリーの雑然とした部分が勿体なかった。
唯一、アナ・ファンのキャラクターの個性は良かった。
これが見れただけ救いである。