「"ハウル"かと思ったら、"ラピュタ"だった!」移動都市 モータル・エンジン Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
"ハウル"かと思ったら、"ラピュタ"だった!
"都市が都市を食べる!"
車輪やキャタピラが付いた巨大な要塞都市"ロンドン"が疾走する、未来の終末世界。都市同士が争い、負けた都市を飲み込む弱肉強食のルール。スチームパンク風なレトロフューチャーなデザインが超カッコイイ。
喰われた都市は分解され、再資源化と燃料として吸収され、住民は労働力として最下層に組み入れられる。世界中の都市を喰っていく"ロンドン"(英国)って、植民地時代を彷彿とさせるジョークか。
その設定や造形、映像的な作り込み(だけ)は、とてつもなく面白い。そこはピーター・ジャクソン(「ロード・オブ・ザ・リング」)だから、抜かりはない。
原作は、2001年発表のフィリップ・リーヴの同名小説を実写化したもの。動かなそうな要塞が走るさまは、日本人ならスタジオジブリの「ハウルの動く城」(2004)を思い出して、もやもやする。
「Howl's Moving Castle」(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)は、1986年刊なので何らかの影響は受けているのだろうと思いながら鑑賞すると・・・、オヤオヤ?
"ハウル"かと思ったら、"ラピュタ"だった!
笑ってしまうほど、ジブリ・オマージュ作品。モーター滑空機や空中都市まで現れると、「天空の城ラピュタ」(1986)を翻案したかのような展開にア然。
~かつて人類を壊滅的に破壊した、"古代の最終兵器"と、それを秘密裏に復活させようと支配欲を持つ男。男は国家に雇われているのだけれど、最終兵器の復活とともに権力を掌握して、国家を乗っ取ろうとする。
主人公の少女は、最終兵器の秘密を握っており、親から託された破壊の鍵を持っている・・・むむむ。
そして最もジブリっぽいのは、少女を追いかける、利発で正義感のある男の子。少女を助けたいと思うけれど、ちょっと非力で、思うようにならない。「ラピュタ」だけでなく、「魔女の宅急便」もこれ。
そんな2人を助けるように現れる、海賊みたいな女性の賞金首・・・あらら。
SFとしてはオーソドックスな終末世界イメージの呪縛からは抜け出せていない。結末はすぐに想像できてしまう。レトロフューチャーデザインだけに酔ってしまったのが本作の限界
唯一、"都市が都市を食べる"(Hungry City Chronicles)というパンキッシュな設定だけが、とんがったオリジナリティ。
原作はシリーズ化していて、Hungry City Chroniclesの続編の計4巻が刊行されている。まさか続編の映画化しないよね。これで終わりにしないと、1作目だけ尖っていた「メイズ・ランナー」(2014)になりそう。
圧倒的な映像だけが見る価値があるので、3D上映がないのも残念(海外はある)。
(2019/3/1/TOHOシネマズ日比谷/シネスコ/字幕:林完治)