「尊さと恐怖」ファースト・マン shintaroniさんの映画レビュー(感想・評価)
尊さと恐怖
アポロ11号でアームストロング船長が最初に月面に降り立ったことは、周知の事実。観るものかお話の「落ち」を知っている中で、何を描くのかに興味がありました。
鑑賞して感じたのは「尊さ」と「恐怖」だと深く思いました。
尊いミッションが故に、応援され挑戦するが、
次々と失敗し、選ばれし者が死んでいく「恐怖」
かけがえの無い娘を失った家族が、
再び大切な人を失うかもしれない「恐怖」。
アームストロングは着陸成功したんでしょ!と
知っている観客に、こんなにも恐ろしかったのか!を
丹念に味あわせてくれます。
思えば、笑顔の少ない映画です。
死と背中合わせの打上げや、少しの異変が即死につながるという神経質なシチュエーション。スイッチひとつひとつを入れる、息を飲む、異変が無いかを確認する連続。
指を咥えて眠る愛くるしい愛娘を癌で失う喪失感や、エース船長である自慢の夫を、爆発で失う隣の家族の茫然自失。
遠く見上げる空で死の可能性を否定できず、
待つことと祈ることしか出来ない家族。
正気を保ち普通に安定して暮らす事が叶わない感覚。
ずっーと緊張感があり、クライマックス(船外に出た時)ですら、自分と宇宙しか無い極限の緊張感を、音声なし、サントラもなしの、無音静寂で、描いています。
IMAXで見たので余計に圧巻です。
こんな緊張感のあるクライマックスシーンって初めてでした。最後ですら、安堵した気持ちは、味あわせてくれません。
人類として初めてのミッションに最初に挑戦した尊さと、
宇宙空間と言う何かあれば助けられない孤独の即死と背中合わせの恐怖。
ファーストマンしか味合えないモノが描かれています。
ケネデイ大統領の「何故月を目指すのか?」の演説も、
効果的に、人類の尊い使命である事を表していました。