「前作よりは面白かった」ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
前作よりは面白かった
3D 吹き替え版を鑑賞。ハリポタの前の時代を舞台にした続編「ファンタスティック・ビースト」の第2作である。前作からちょうど2年目の公開である。5部作になる予定だそうである。前作は主要な新キャラの顔見せという程度のスカスカな内容でウンザリさせられたが,今作は悪役が登場して対立関係が明確になり,話に勢いがついてきた感じである。だが,結局は正義とダークサイドという既視感のある展開になってしまった感は免れない。
今作の脚本も,原作者のローリングが自ら手がけているが,NY から一歩も出なかった前作を反省したか,今作ではロンドンとパリ,そしてホグワーツが主な舞台となっている。1920 年代の各都市の風景はもちろん CG であろうが,壮大な俯瞰や,まるでドローンで撮影したかのような視野の変化など,非常に見応えがあった。ローリングの趣味で作られた魔獣は今作でも新種が出てくるが,China 由来のものが増えているのは,このシリーズもまた China 資本に汚染されたからではないのかと勘ぐりたくなった。
魔法の視覚効果などは文句なく素晴らしいが,あまりに CG っぽい馬車を引くドラゴンなどはかなり萎えた。また,3D 映像は認識するのに少し遅れを伴うので,急激な映像変化は見ている者に混乱を与えるだけであるのに,映画の冒頭で何が起こっているのかサッパリ分からないアクションシーンが続いたのにはかなりガッカリさせられた。製作者は 3D 映像の限界を知るべきである。
今作から登場するキャラとして,前作の最後に登場したジョニー・デップや,ダンブルドアの若い頃を演じたジュード・ロウはまあ想定の範囲内だったが,主人公ニュートの兄とかその恋人でニュートの元同級生とかが出てきたのにはかなり鼻白んだ。都合よく血縁を膨らまして新キャラを作るというのは,ドラゴンボールなどで散々使い古された手法である。そもそも,この作品の人間関係を見ると,恋人,兄弟,親子,師弟,同級生など,いずれも由緒を大袈裟にしたがる英国人らしさが滲み出ているような気がする。脚本家の趣味であろう。
主役のニュートは相変わらずあまり表情の変化がなく,わざわざアカデミー主演男優賞を獲得したエディ・レッドメインを起用する必要があるのかという感じを受けた。一方,ジョニー・デップとジュード・ロウは流石の存在感を見せており,主役よりはるかに目立っていたのは,役者としてはしてやったりというところであろう。女優陣は前作と同様にあまり惹かれるものがなく,このシリーズがハリポタに完全に負けているのは,ハーマイオニーに相当するキャラがいないことだという思いを新たにさせられた。
音楽は,前作と同じジェームズ・ニュートン・ハワードで,ジョン・ウィリアムスのテーマを下敷きに見事な変奏曲をいくつも披露してくれたばかりでなく,オリジナルでも非常に出来の良い曲を披露してくれていた。特に,魔法の戦闘場面の曲は,場面の緊迫感を非常に盛り上げること眼を見張るばかりであり,エンドロールもまた大変聞き応えがあった。
一人だけ魔法使いでないジェイコブが主要キャラに加わっている理由がまだよく分からない。例えば,今作で展開される青い光と赤い光の猛烈なせめぎ合いの中で,魔法使いたちが全力を尽くして戦っている訳だが,その魔法が実は生身の人間には無効で,魔法使いでないジェイコブが平気でその中を行ったり来たりしたら面白いのではないかと考えたりしたのだが,著しく緊張感を損なうような気がするので,我ながらあまり良いアイデアでもないような気がする。(。。)☆\(vv;;
(映像5+脚本4+役者4+音楽5+演出4)×4= 88 点。