「映画で気づく店長の思い」恋は雨上がりのように いくちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
映画で気づく店長の思い
原作コミックは読んだ。コミックのあきらは言葉少なく、あきらの1日をまわりに流れる風景だけで表現してセリフなしで心情を伝える手法がたびたび出てくる。言葉を発さない方が募る思いを強くして、店長への思いを強調しているのが印象的だった。(アニメ化は見ていない)
今回実写化にあたって、二次元ならば女子高生と中年男というファンタジーの現実味のなさも受けとめやすかったのが、3次元となったらリアルさが増してエロさを感じてしまわないか、逆にピュアすぎて違和感を感じないか…といったことを懸念していた。まあ、実写化の最大の懸念は、上映時間内に原作のストーリーを詰め込みすぎて一つの話としてはまとまりがなくなってしまうことだと思うが…。
しかしこの二つの心配は杞憂だった。そして、コミックと違って上映時間内という短時間のストーリーを追うことで、ファンタジーではない店長の気持ちを理解できた!
超美形な女子高生に「好き」と何度言われても、なぜ店長は自分からは距離を置くようにしていられたのか?
成しえなかった夢、友の活躍に対する敗北感、離婚についての後悔など、自分に自信がなかった店長は、あきらからの告白にも終始「こんなさえない自分にありえない」と納得できず、これにはなにか理由があると思っていた。橘さんを観察してわかったその理由とは陸上に関する喪失感だ、それを知った店長は、僕への思いは果たせなかった陸上への思いを補完するものであり、だから優先させるべきは陸上に向き合うことなのだ、と冷静に分析し、部活に戻ってファミレスは辞めるよう促していったわけだ。
なので部活に戻ったあきらはそのことに気づいたわけだけど、半年後に土手で再開するラストのシーンでは、そのことに気づかせてくれた店長に本当の意味でリスペクトしたので、あんなにぐいぐい「好き」と言っていた子がはにかみながら「友達としてLINEしたい」と言ったわけだ、これは2度目の恋と言えるのではないか。店長としてもラストシーン後、そこから発展する思いがあったとしたら、今度は正面から受け止めるかもしれない。なんにしろ、店長は最善の対応をした、立派だと思った。
キャストなども納得できるもので、特に“九条ちひろ”と居酒屋で語るシーンは自分が学生時代の友達と会うと、学生時代の夢を語ることあるよな、と共感できた。
唯一、親友・はるかが…コミックではあきらと双璧をなす美少女キャラだったので、映画では少し弱いかな、と感じた。