劇場公開日 2018年3月30日

  • 予告編を見る

「マスコミ批判映画ではない。合衆国の精神を表現した快作。」ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 tさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マスコミ批判映画ではない。合衆国の精神を表現した快作。

tさん
2019年6月1日
PCから投稿

知的

報道の自由を訴える者であれば、是非とも、この映画のメリル・ストリープのような勇気を見せていただきたい。
映画終盤の最高判事の宣言文が印象的。
「我々が仕えるのは統治者のためではなく、統治のためである」
統治という英語はgovernだったかな?
我が国では「統治のため」と言えばそれは「統治者のため」と自動変換されてしまう。
しかしアメリカは違う。
アメリカ合衆国において、「統治のため」と言えばそれは「国民のため」なのだ。
それがアメリカという国家の精神なのだ。

内容が内容なだけに、劇中、ほぼ会話劇のみで展開していきます。
それをダレずに魅せる。これぞ映画的手腕。さすがスピルバーグ。
全然飽きなかった。

とはいえ、会話シーンが多くて字幕の量が多かったり、固有名詞が大量に出てきたり、歴史的敬意を知らない人には全て理解することは厳しいかも。
まぁでも、そこは、庵野のシン・ゴジラやエヴァみたいに観れば良いと思う。
新聞社の中での「オペレーション」を観れればいいのだ。
何をやっているかはよくわからんが、なんかかっこいい。

ペンタゴンペーパーズですが、どうせトム・ハンクスが政府に対抗する映画だろう、と思っていたけれど・・・良い意味で期待を裏切られた。

アメリカ合衆国の精神を観た気がした。本作は政府批判映画ではあるが、国家批判映画ではない。むしろ国家賞賛映画だと思う。

こういった形での国家賞賛映画など観たことがない・・・という意味で、めちゃくちゃ新鮮でした。

改めて考えると、映画の構造がよくできている。この映画、「報道の自由」が「国民主権」のメタファーになっている。

本当に言いたいことは、「主権は国民にあるんだぞ!」ということ。

だから僕は、この映画のメッセージはマスコミに対してではなく、主権者である国民に向けたものであると思った。

特に、憲法についてなんやかんやウンチクを喚いてる人には是非とも観ていただきたい映画だ。

この映画を観て、「日本のマスコミも見習っていただきたい」以上の感想が出てこない人は、憲法を語る資格はない、とさえ思った。

t