タクシー運転手 約束は海を越えてのレビュー・感想・評価
全41件中、21~40件目を表示
素晴らしい映画だと思う。ガンホさんのファンになりました
シネマコレクション
【タクシー運転手 約束は海を越えて】
1980年の光州事件。韓国の民主化デモを軍が力で鎮圧したこの悲惨な事件、恥ずかしながら知りませんでした。丸腰の市民を撃ち殺し、私服軍人が怪しいとみた人物は拷問にかける。
実はこの春に娘が卒論で韓国の民主化運動をテーマにしていたので読ませてもらい、それでこの事件について初めて知りました。
そしてこのタイミングでこの映画にめぐり合ったのですが、素晴らしい作品ですね。
ソン・ガンホさんは韓国の名優らしいですが、さすがの演技と魅力と存在感。ファンになりました。
実はあまり韓国映画は好きではないのですが、これだけは特別。
目を背けたくなるシーンもあるけど、実話ものはまずまっすぐに受けとめなれけばと…
中国の天安門事件しかり、この前の香港の事件もしかり。そして昔の日本だってありました。
人々の熱い思いが人を突き動かし、時には大きな歴史のうねりとなる。
そして、悲しい犠牲も・・・
命がけで取材に来たドイツ人記者をたまたま成り行きで光州まで乗せた貧乏なタクシー運転手。
これはこの2人のバディムービーでもあります。
いったんソウルに戻れたのに、わざわざ光州に戻る気持ち、痛いほどわかるけど、なかなかできることではない。
主人公の屈託のない笑顔と人柄、そして光州の田舎の人たちのたくましさとあたたかさ。心に沁みました。
年いってから2人が平和な韓国で再会できたら良かったのにと思いますが、シャイな主人公らしいですよね。
ソン・ガンホ
何やらしても上手いですね
重たい話やのにエンターテインメントしてる。
(最後の見逃した兵士が気になった)
自分が運転手やったら…て考えた。
(命の危険がある時 行動起こす勇気が)
知らない事 勉強なりました。
皆さんのレビュー読んで更に勉強なりました。
二人で伝えた真実と、友情
光州事件を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を現場に送り届けた韓国人タクシー運転手。
実話がベース。
本国韓国で大ヒットしたのも納得、これは良かった!
今年の韓国映画BEST作!
まず、光州事件について知っておかないといけない。
1980年5月、韓国・光州市。
クーデターにより軍が実権を掌握。(粛軍クーデター)
それに対し、市民が抵抗した民主化デモ。
死傷者は多数。
韓国では歴史的事件で、度々映画の題材にもなっている。
これまで見た光州事件を扱った作品は歴史/政治的視点で、正直ほとんどちんぷんかんぷんだったが、本作は一庶民の視点で描かれ、非常に見易い。初めてと言っていいくらい光州事件について分かったほど。
主人公は、ソウルのタクシー運転手、マンソプ。
まだ幼い娘と二人暮らしの男やもめ。家賃は滞納。
典型的な貧しい一庶民。
最近ソウルでも多いデモにも無関心。
「全く近頃の若者ときたら、デモする為に大学に入ったのか?」
ましてや、光州で何が起きてるかなんてまるで知らない。
日本で言えば、身近で学生運動が起きていながらも、それについて全く知らないようなもの(…かな?)。
しかし、それも無理はない。何故なら…。
ある時マンソプは、外国人を光州まで送り届ければ大金を貰えるという話を耳にし、ちゃっかりその客を横取り。
その外国人ピーターを乗せ、いざ光州へ。
こんな楽な仕事で大金貰え、何て美味しい!
…でも、何かおかしい。
光州へ入る道至る所に軍人が立ち、入る事が出来ない。
ピーターとひと芝居打ち、やっと光州市内へ。
そこで、見たものは…
軍による市民への圧政。
ソウルなどに知れ渡っている報道とはまるで違う。
暴徒と化した反社会的の市民たちを軍が抑え、軍に死傷者が出ているのではなかったのか…?
実際は、その逆。
圧政を強いる軍に対し市民が立ち向かい、抵抗し、市民の方にこそ多くの死傷者が出ている。
一体ここで、何が起きているんだ…?
軍による市民への暴虐が戦慄。
立ち向かってくる市民に対し、容赦ない暴力。
銃をも向け、射殺。
本来軍人というのは、市民を守るもの。
そんな軍人が、市民を殺戮している。
報道も規制され、その真実が知れ渡らない所か、歪曲されている。
こんなゾッとする光景が、ほんの30数年前、お隣の国で起きていた…。
作品はただ重苦しい社会派ドラマではなく、ユーモアとペーソスもたっぷり。
マンソプとピーターが光州で出会った学生とタクシー運転手。そのタクシー運転手の家で過ごした一夜は、人情劇。
突然、銃声が。表へ出ると、軍の暴虐が続いている。
平凡な日常のすぐ隣に、非日常的な戦慄の光景が。
その現場へ。軍人に学生が捕まり、絶体絶命の状況に。
ほんの数時間前までは、こんな生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされるとは思わなかった。
ユーモアとペーソス、シリアスな人間ドラマとサスペンスの織り交ぜが絶妙。
何の抵抗も無く作品の中に引き込まれ、見入ってしまう。
ソン・ガンホが言うまでもなく、名演!
この人間味たっぷりの役柄は、彼の真骨頂!
光州事件の真実は世界に知れ渡る事になったが、ソン・ガンホという名優ももっと世界に知れ渡って欲しい。(日本じゃ映画ファンの間では知らない人は居ないが、果たしてハリウッドでは何人がこの名優を知っている…?)
彼が演じたマンソプの役回りがまたいい!
最初はただの金目当て。
こんな危険な仕事だと知ってたら、引き受けてなかった。(いや、正確に言えば、横取りしてなかった、か…)
さっさと金を貰って、こんな危険な所とはおさらば。娘も待っている。
が…
ひと度この惨状を目の当たりにし、命懸けで抗う人々と知り合い、自分だけ逃げる…?
自分は光州市民じゃない。
娘にも早く会いたい。
でも…
畜生、自分だけ逃げるなんて出来やしない!
今ここで何が起きているか。
その為に犠牲になった人々…。
この事を、伝えなければいけない。ソウルに、韓国中に、世界中に。
そしてタクシー運転手としても、お客さんを送り届けなければならない。
無関心だった主人公に使命感が目覚めていく様は、胸熱くさせる。
ピーターとの国籍を越えた友情も感動的。
ピーターは英語しか話せず、マンソプは英語は片言。
だから最初は、どうもぎこちない。
しかし、一緒にこの惨状を行動する内に…、いちいち言う必要も無いだろう。
それは是非、見て欲しい。
ちょいと最後に触れるが、エンディングの2015年のピーター本人の映像と、二人が再会出来たか否かは、目頭熱くならない訳がないではないか!
光州市内での学生やタクシー運転手との出会いも。
ピーターとの通訳をしてくれた学生。彼はデモに参加しており、最後は…。
マンソプとピーターを逃がす為に、カー・アクションまで繰り広げてくれたタクシー運転手たち。彼らもまた…。
悪政や真実のねじ曲げがずっと続く訳がない。
真実は、必ず伝えられる。そう信じている。
その為に戦った人々、犠牲になった人々。彼らの為にも。
そして真実を伝え、協力してくれた人。
ひょっとしたら、もう二度と会えない事は薄々感じていたかもしれない。
でも、あなたが居たからこそ、この真実を伝える事が出来た。
あなたに会いたい。
それは二人共、同じ気持ちだろう。
再会する事は叶わなかった。
しかし、二人の出会い、二人で伝えた真実、友情は、国も時を越えてーーー。
追記
Wikipediaによると、マンソプは劇中の最後で彼が偽名として使ったキム・サボクというタクシー運転手がモデル。
サボクは光州事件の4年後にガンで死去。
その事は、本作が韓国で公開されてから、息子が名乗り出て明かしたという。
それを知ると、エンディングのピーター本人の映像がまた…(ToT)
色々教えてくれる映画
タクシー運転手の主人公は男手一つで娘を育てているとは言え、それほど誠実なタイプでもなく、滞納した家賃を払うために他人の仕事を取る。それが実はドイツ人ジャーナリストをソウルから光州へ送る仕事で、ジャーナリストにも彼のデタラメな性格をすぐに見抜かれてしまう。
目的地の光州は学生を中心にクーデターか起こり軍や警察が市民を弾圧していて、ジャーナリストはそれを取材するために危険を知りながら来たのだった。
「デモなどせずに勉強に励め」と学生をたしなめていた主人公も、普通の大学生や市民が軍部に次々と銃を向けられるのを黙って見てはいられなくなる。
ジャーナリストから任務をとかれ、主人公が光州を離れて入った食堂で事実と全く違う軍部寄りの報道を耳と目にし、このままには出来ないと光州に舞い戻る。そんな主人公を見て、最初は彼を信用できなかったジャーナリストも、徐々に信頼するようになり、共に光州の人達を助けなければ、という気持ちになる。
光州の人達がジャーナリストに、この状況を世界に伝えてくれ、と託す気持ちに観客も共感、ジャーナリストの有り難みと、その重要な意義を感じる。
途中、某シリーズ映画を連想させる(観てないけど)ようなカーチェイスがあったり、韓国映画らしいエンターテイメント性も忘れず、ソン・ガンホが生むコミカルな要素もある。
ラスト、ジャーナリストがこんなにも一生懸命にタクシー運転手を探しているのに終に名乗り出なかったのは何故か、と考えてしまう。
ジャーナリストが危険地帯に行って起こったことは自己責任だと言い放つ人達に、是非一度観て頂きたい。
心が震えた
めちゃくちゃ良かったです。心が震えました。光州事件を初めて知りました。社会派メッセージを中心に描きながらエンターテイメントに優れていて笑いあり、泣けました。軍が市民たちにひどい暴行を加えているシーンはまるでドキュメンタリーを見ているかのようです。
韓国って、、、
韓国に旅行したときに、見知らぬ人々から受けた親切が甦る。韓国の人ってほんとに損得なしに親切で、よくも悪くも感情の吐露が激しくて、同じような顔をした我々日本人とはずいぶん違うなと、知れば知るほど不思議な気持ちになる。
この国は大国に挟まれだいたいいつの歴史を見ても戦っている。だからなのか、市井の人々は耐えることも知っているし、時には無謀な戦いにもあえてでる。そんなことがたった一本の映画からはわかるはずもないのだが、俳優の演技が自然で、この映画での出来事すべてが事実に思える。いい映画だった。
でも色々思い出すにつれて、この国で女性として生きていくのは本当に心根がよくて、堪え性があって、主義主張にいきる男性を支えなくてはいけないなーと暗澹たる気持ちになったことも甦る。だからといって他の国、ましてや我が国がそうではないわけではないのだけど、、、、
タクシー仲間達が良い奴過ぎる‼︎
特にファンが‼︎
ソンガンホがご機嫌で歌いながら運転してる
平和なシーンから始まり
お金目当てに記者を乗せてから
あれ?何かおかしい?
何が起こってる⁇
それからラストまで
緊迫感半端ない
迫力ありました。
検問所で見逃してもらえたり
仲間の命がけの助け(里見八犬伝ばり)があったにしても
よく無事に帰れたなと...
世界に真実が報じられて
沢山過ぎる犠牲が
少しは救われたのかな...
光州でこんな惨い事が起こってたなんて
この映画を見て初めて知りました。
この🎥映画は本当お薦めです。
自分も先月中旬に渋谷アップリンクで観てきました。
最初はコメディタッチで始まり、段々と阿鼻叫喚の地獄絵、そして最後に出てきたドイツの記者のメッセージ、本当に人として何が出来るのか考えさせられました。
世界中では毎日、格差、高齢化、環境、平和問題が深刻化してかつ、2020年問題等山積しています。
この映画も世界中で起きている上記問題をテーマにしています。
また観に行きます。
「チュンソン!」
『忠誠!』の韓国語発音。軍人が敬礼時に言う掛け声としても使われていて、作品中も何度も台詞がある。
時は1980年5月、日本だと自動車生産台数が世界一になった年代だそうだ。自分は小学生。まだまだ世界で何が起こっていたかなど知る由もなく、毎日のように近くの公園で、ゴムボール野球や、自転車レース、そして、淡い恋心に胸を焦がしつつ、しかしそれとは別に性的衝動に戸惑っていた時代である。海の向こうではそんな時期に、大変な事件が起きていたことを、勿論歴史としては知識にあったのだが、それをこうして作品で鑑賞したことは大変有意義であった。国を守るべき国軍が、その国民をジェノサイドに陥れる。悪夢のような世界を、しかしこれは現実として起こった事実である。その非業を、ジャーナリズムに燃える、しかし幾ばくかの功名心も抱く西洋人が、タクシー運転手と共に克明に記録し、世界へ配信するストーリー展開である。
映像のイメージ、作品の匂いは、きちんと80年代のそれを彷彿とさせる質感で、かなりノスタルジーを感じさせる。その中で、前半オフビート、後半サスペンスとエモーションを施した構成となっている。事実を元に再構成ということだが、演出がかなりの割合で混ざっていると予想されるのだが、しかしその純粋で真面目な作りは、好意を持って鑑賞できる。
ただ、もう少しコンパクトに纏めても良かったと思うのだが、韓流映画らしく、素材のてんこ盛りさはお国柄なのだろう。
幾つも感涙ポイントをまるで罠のように用意してあるあざとさは、しかし実直さ故、それ程不快には思えない。
ご都合主義的なシーンは、あまり強調させず、単純に『バディ』モノだと、再構築して観た方がいいかもしれない。
とてもよかった
軍が別に大して抵抗していない民衆に発砲し殺害するというとんでもない事件をこの映画で初めて知った。恐ろしい歴史があったものだ。
主人公がとても人間らしくて魅力的で、彼を蔑んでいたドイツ人が彼を認めていくところが素晴らしかった。本当に屋上にいればいいのにとか、戻るなよ〜と思った。オレならあんな危険には近づかない。
タクシー軍団がみんなで救出に当たる場面がすごくよかった。
主人公はなぜドイツ人に名前を偽ったのだろう。恥ずかしかったのだろうか。帰宅して娘に靴をあげる場面が見たかった。
あの兵士の物語も観たかった
たいへん観応えのある、骨太な映画でした。
恥ずかしながら、光州事件のことは名前くらいしか知りませんでした。こういう軍隊が一方的に市民を弾圧した事件は語り継がれるべきだなぁと感じます。
そういう意味では映画メデイアはうってつけですね。虐殺シーンは適度な演出を加えて説得力のあるものに仕上げており、まさにこれが映像の力、映画の力だな、と痛感しました。有無を言わせずむごたらしさと怒りを感じさせられますし、未来をこのようにしてはいけないな、と問題意識も想起させられます。
そんな実話ベースの社会派映画ですが、きっちりとエンタメであり、全体的にはポップでキャッチー。終盤には派手なカーチェイスが待っていたりと、かなりベタな展開です。シリアスさとベタさのバランスが良く、それが本作を特別な映画たらしめているのかな、と推察しています。
ただ、個人的にはそのキャッチーさがイマイチでした。なんか深みがないと言うか、直線的なんですよね。いい者と悪者みたいな対立軸で。「シェイプ・オブ・ウォーター」のストリックランドみたいな私服警官?みたいなヤツが悪役として登場するのですが、わかりやすい悪って感じでねぇ。掘り下げもないし。
そして一番気になったポイント。
本作の終盤、光州の州境を守る兵士が、主人公とドイツ人ジャーナリストを見逃します。そのシーンが本作で最も印象に残った一方、最も洗練されず浮いている演出にも思えたのです。
この行為はとても意味ある感動的なもので、弾圧する側においても、人間的な情緒があることを表現しています。自分の役割を超えて人のため、良き世界のために行動できるという勇気を示す素晴らしいものです。
が、それだけパワーのある行為なんだから、洗練された演出が欲しかった。しかも、その後のハリウッド風味のカーチェイスで見逃しが物語的に無意味になっていますし。
もし、弾圧する側であるその兵士の物語も並行して描かれていたら、たいへんな文芸大作になったと思います。物語も二極構造ではなくなり多重的になってよりリアルになりますし、終盤の彼の中で生じた転回が圧倒的な説得力を持って迫るでしょう。それこそ、「スリービルボード」のオレンジジュースのシーンのように。
なので、ガツンとくる佳作ですが、かゆいところには手が届かなかったなぁ、なんて感想です。いや、でも満足度は高いですよ。
韓国映画ははじめてなので、ソン・ガンホさんもはじめて見ましたが、ヤング毒蝮三太夫って感じで味がありますね。光州のタクシー運ちゃんのボスも味があった。韓国のおっちゃん俳優は顔がスゲーですね。汚い。それが、めちゃくちゃいい!K-Popアイドルの完璧すぎるルックスとの比較がスゴい。韓国は両極端なイメージがありましたが、本作を観る限りだと、その仮説は現在のとろこ支持されています。
コミカルさと残虐さの対比
冒頭、軽快な音楽で始まる主人公のタクシー運転手のコミカルな日常描写で、憎めない共感できる人物像が的確に描かれ、そんな主人公の視点で段々と光州事件の惨状を知ってゆく、秀逸な語り口に引き込まれました。
やはり、主人公のソン・ガンホの演技が素晴らしく、その辺にいそうな普通のオッサン感が絶妙です。
残虐な事件に直面しうろたえ苦悩するその姿に感情移入せずにはいられません。
事件を知らないよそ者という主人公の立場も観客と共通しているので、入り込み易くなっていると思います。
事件に直面した庶民の人間ドラマ、戒厳令下の街で軍の監視を逃れ取材してゆくサスペンスと、適度に娯楽性もあり、物語として上手く構成されていると思います。
コミカルでささやかな庶民の日常描写との対比により、弾圧の残虐さも強く伝わります。
軍人に追われるサスペンスフルな場面など娯楽性を意識しているかなと思いますが、主人公達を助けてくれる青年、タクシー運転手仲間の姿には、やはり目頭が熱くなってしまいます。
光州事件については全く知らなかったので一応概要を調べてから観ましたが、知らずとも差し支えはなかったかと思います。
事件についての記事で、タクシー運転手の素性が謎となっており工作員説もあると知りましたが、映画ではそういう繋げ方か、と。
娯楽性を交えながら、深刻な歴史的事件について伝える、優れた社会派作品だと思います。
忠誠!
ひょうきんで単純な主人公に序盤はかなり笑わせられる。
記者をタクシーに乗せるきっかけも要は横取りだし割と自己中的な性格なんだけどなんだか憎めないキャラである。
平和な前置きから光州に入ってからは一気に雰囲気が変わる。
理不尽なんて言葉では温いほどの暴力が飛び交う凄惨な光景の尋常じゃない緊張感と、何も出来ないもどかしさ。
ついさっきまで歌って笑っていたのに突然日常が崩壊し、優しい人間がどんどん傷付けられ死んでいく恐怖。
世界に事実を伝える、というただ一つの希望にかける全員の思いの強さに胸が熱くなり、本気で応援してしまう。
デモなんて、と楽観的だった主人公の「知ってしまった」という表情が印象的。引き戻るシーンは本当に熱かった。
途中急に湧いて出てきたタクシー隊には驚きだったけど、一台一台とフェードアウトしていく毎に涙が止まらなかった。
ハッとさせられたのが、検問の軍人の一人がわざと此方を見逃したこと。
軍隊イコール敵、という目で観ていたけれど、政府の思想・方針に必ずしも全員賛成ではないということをふと思い出した。
事実に基づいた話、ということだったけど、いくつものドラマを組み入れて映画的に作られていたのが良かった。
それでも最後は結局会えないままだったのね…と非常に複雑な気持ちになるけれど。
目で見る事が事実なんだなあ!
1980年って言えば、この作品の学生さんと僕同い年だ!
海の向こうでこんな事件になってるなんて!
軍隊って自国民を守ることが仕事なんじゃないの?
観ていて、背中が恐ろしくなってきた!
言葉が解らない2人と通訳に乗った学生さんのやり取りが笑えたのは前半。
後半になるとこの作品のテーマが出てきて
恐ろしい!
期待以上
歴史的事実をしっかり楽しめる映画として送り届けられる韓国映画会の力量に感服。
コメディ映画と思いきや後半にかけての軍によるデモの弾圧の映像は迫力があり、鬼気迫るものがありました。
そしてタクシードライバーと外国人記者の絆を見事な演技で表現してくれました。 いい映画だと思います。
過去の事実を忘れないために観る
1980年代の韓国。いかに戒厳令下では、出版や言論が圧殺され、市民、学生、活動家たちが虫のように殺され、人権が封殺されていたか。それは、隣の国のことだけでなく、まさに自分達のことでもあった。裁判なしの長期拘留で小菅の東京拘置所は不法逮捕された学生で一杯だった。
1980年5月広州で大変なことが起こっている、軍に包囲された市民が無差別に一斉射撃で殺されている、そんな巨大な暗雲が立ち込めるような情報が広がっていき嘘であって欲しいと、すがる思いでTK生の通信な載る、岩波書店の月刊誌「世界」を待った時のことが昨日のように思い出される。
1979年12月、クーデターで軍の実権を握った全斗換は、翌年全国を戒厳令下に置き執権の可能性のある金泳三と金大中を逮捕、監禁した。(金大中に死刑判決が下りたのが、1980年9月。)金大中は全羅南道出身で、全羅南道の道庁が広州だった。広州の人々の怒りは大きく、反軍民主化運動のデモが学生、知識人のみでなく10万人の市民が立ち上がり、軍部に反旗を翻した。
1980年5月20日。広州市の全南大学と朝鮮大学を封鎖した陸軍空挺部隊は、抗議に集まった人々と衝突。市民は郷土予備隊から奪った武器や角材、火炎瓶などで対抗した。翌21日には戒厳令軍が広州市を包囲、外部の鉄道、道路、通信回線を遮断した。そのため 広州市で何が起きているのか、全国の人々は知ることができなかった。
一方、軍による市民への無差別一斉射撃に怒り、立ち上がった怒れる市民の数は、日に日に膨れ上がり、金大中の釈放、戒厳令撤廃を要求した。5月26日には、陸軍部隊が戦車で市内を制圧。市民に対して無差別の逮捕、拘留 暴力がふるわれ軍の一斉射撃により多数の死傷者を出した。実際に亡くなった市民の数はわかっていない。公式発表では、死者行方不明者は、649人、負傷者5019人。戒厳司令部発表によると死亡者は170人、負傷者380人と食い違っている。
まことしやかに政府は広州暴動は北朝鮮によって工作され、金大中が内乱を起こした、と宣伝したが一笑に付された。いまは広州事件ではなく「5.18民主化運動」と規定されている。
唯一外国人による報道では、ドイツ公共放送(ARD)東京在住特派員だったドイツ人ユルゲンヒンツ ピーター記者が、広州に潜入して軍による民主化を求める市民虐殺の現場を撮影するのに成功した。彼は韓国から日本に帰ってから、事実を世界に向けて発信した。
映画「タクシー運転手」は、このドイツ人記者の話だ。
原題:「A TAXI DRIVER」
監督: JANG HOON
キャスト SONG KANG -HO ドライバー
THOMASKRETSHMANN ドイツ公共放送特派員ピーター
YOO HAE-JIN 広州のタクシードライバー
RYUJUN-YEOL 広州の大学生
ストーリーは
タクシー運転手、ソン カンホーは妻に先立たれ、11歳の娘と二人で暮らしている。妻の病気を治療するために蓄えをすべて使い果たしてしまい、今は日々の暮らしに汲々としている。個人タクシーで使っている車も、もう60万キロ走っていて、かなりガタがきている。娘の履き古した運動靴も、小さくなって履けなくなっているが、新しい靴を買ってやることもできない。
1980年5月20日早朝、彼は金浦空港で外人客を拾う。東京から来たドイツ人記者ピーターだ。彼は東京で、ソウルから到着したばかりの記者仲間が、反政府民主化運動が高まりを見せている、広州でひどいことが起こっているようだ、というのを聞いて、飛んできたのだった。
ソン カンホーはピーターを乗せて広州に向かう。
政治に関心の全くないソンは、昔、彼が兵役についていた時、軍人はみな規律正しい良い人達ばかりだった、と言い、反軍反政府の民主化運動を標ぼうするのはコミュニストだけだと確信している。ピーターはのんきで人の良い運転手との会話にイラつきながら乗車している。広州に向かう主要道路はみな封鎖されていた。それでは仕方がないから、とソウルに帰ろうとするソンに向かって、ピーターは「ノー広州、ノーペイ」と言い、広州に連れて行かないと代金は払わないと言い張る。慌てたのはソンだ。どうしても代金をもらわないと困るソンは、農家から聞き出した山道の迂回路を通って広州に入る。
街は騒然としていた。軍は市民に家に留まるよう、ビラをヘリコプターで撒いている。しかし人々は街に出て集会に参加していた。街のどこにも反軍反政府のプラカードが立っている。病院は軍との衝突で怪我をした人々で溢れかえっている。ピーターはヴィデオを回す。運転手ソンは、こんなに危険な所には居られないと、ピーターを置いてソウルに帰ろうとするが、怪我をした老婆に呼び止められ、彼女を病院に運んたところで人々の惨状を目にする。夜になって軍の攻撃も激しくなった。ピーターが撮影しているところを、戒厳軍にキャッチされた。ピーターとソンは、軍人に追われる中、学生のひとりリュ― ジーヨルの手引きで逃げ切ることができた。一刻も早く撮影したヴィデオをもってソウルに帰りたい。しかしタクシーはエンコして動かない。学生の兄、広州のタクシー運転手のヨー ハエジンの家の泊めてもらい、車の修理をしなければならない。
翌日から軍とデモ隊との対立は激しさを増す。街は陸軍が戦車で街を走り回る戦場だった。運転手ソンは車の修理を終えると、ピーターを置いて一人でソウルに向かう。11歳の娘が心配で仕方がないのだ。広州を脱出し、近くの街で娘のために靴を買う。昼食を食べるうち、街の人々のうわさ話が耳に入る。広州では学生たちが戦車に包囲されて殺されているらしい。しかし人々は、かつてのソンのように、「それはコミュニストが殺されただけだろう」、と人々は取り合わない。「そうではない。」年を取った老婆が、女子学生が、市民が無差別に射撃されているのに。
ソンは広州からひとり逃げようとしている自分を恥じ、ピーターのところに戻る。ピーターは、自分を追手から逃がしてくれた学生リュ― ジーヨルが捕えられ拷問の末、殺された遺体の横に居た。ピーターは死体で溢れる病院を撮影し、治安軍に追われ何度も危険な目に会いながら撮影を続けたすえ、ソンのタクシーでソウルに戻る。無事ピーターを金浦空港に送り東京行きの飛行機を見送った後、ソンは家に戻る。11歳の娘が待っている。
というお話。
深刻な歴史を扱っているが、笑いもあり、涙もあるヒューマンドラマに仕上がっている。
運転手役を演じた、SONG KANG-HOの演技力が冴えている。彼は妻を亡くしたシングルファーザーだが、飲んべいで人が良く、あまり物事を深く考えないごくごく普通の市井の人だ。だからこそ彼が、軍の横暴を目撃して、民主化運動は軍がいう北朝鮮コミュニストのスパイによって起こされたようなものではなくて、「人が人であるために当たり前のことを要求しているに過ぎない、」ということが分かった。思い込みが間違っていたら、人は考えを改める。人は変わることができる。
悲惨な、昔あったことを忘れないために私達は、こうした映画を観ることは価値のあることだ。日曜日の午後、歩いて行ける近くの映画館でこれを観た。若いカップルで映画館は一杯だった。多国籍国家オーストラリアで、若い人達がこうした映画を観て、自分たちや自分達の親が生まれ育った様々な国が、それぞれ持っている歴史的なできごとを映画を通して知る。民主化運動とは何だったのか。そして反芻して理解する。それはとても意味のあることだ。
ソン・ガンホのほんわかロードムービーかと思いきや
本年度ベストです。圧倒的。
今年に入って「デトロイト」、「ペンタゴン・ペーパーズ」と観て来た私にとってはホップ☆ステップ☆ジャンプのまさにジャンプに当たる作品。
この三作には共通して「真実を伝えようとする信念」を感じました。このような作品が同じ時期に公開され、ヒットしている背景には、やはり現実での報道に関する不満を感じずにはいられないし、映画もやはり人に何かを伝えるメディアであるということを改めて感じました。こういう映画が日本でメジャー作品として観れる日は来るのだろうか。
フィクションではなく現実、この世界と地続きに"今"という現実があって、主人公たちがちゃんと映画の中で生きていると思わせるリアリティはもちろんすごかったのですが(「この世界の片隅に」のように、細かな日常描写にさりげない笑いを挟み込んだり)、クライマックスへと向かって主人公が成長していく王道の展開に落とし込むことによって単なる実話の実写化映画ではなく、誰が観ても楽しめる普遍的な作品をつくることに成功しているように思う。
ただ真実を伝える映画を作るだけでなく、多くの人に見てもらおうという工夫を感じる。そして多くの人に見てもらうことこそが作品中のテーマともバッチリあっている。
ホロコーストを描いた2015年公開の映画「サウルの息子」では、ユダヤ系の人々が真実を伝えようと命がけで色んな手段で情報を伝えていったことにも通じますが、我々が今こうして映画として観るまでの道のりを考えてしまいます。
私に出来るのはこの映画を人に勧める程度。
とにかく、この映画を観れてよかった。
クライマックスのカーチェイスは少しやり過ぎかな?(笑)と思いましたが全然問題なし!
残酷描写に容赦がない韓国映画ですが、やはりあの子のあの顔のアップはつらい。リドリー・スコット作品を思わせる路地裏の煙モクモクシーンなど、画も綺麗でした。
また、娘の靴は伏線として回収して欲しかったです。あれだけ写したんだから最後までやってよ!(笑)
まあそんなことは全く問題にならないくらいの名作です。
シネマート新宿にて観賞。満席、立ち見の大盛況。エンドロール中は誰も席を立たず、終わった後には拍手喝采。最高の映画体験でした。
劇団ひとりに似ている人が何人か出てきます(笑)*最初に光州に向かう予定だったタクシー運転手など
事実が演出する強烈な人間ドラマ
1980年に起こった光州事件が舞台。事件を取材しようとしたドイツ人記者と、記者を乗せることになったタクシー運転手の話。
事件のことは何冊か本を読み、映画も観たので、ある程度のことはわかっていたが、映像で見るとまたこみ上げるものがある。お姉さんがおにぎりをくれるシーンからウルウルきてしまった。
軍人たちに殴られ、挙げ句の果てに銃で撃たれる市民たち。お金のためだけに光州に行った運転手でなくても、この現実に直面すれば、正義感を呼び起こされてしまう。後半は涙腺が壊れてしまったらしい。ふとしたシーンでもこらえることができなかった。
光州事件をこんな描き方ができるようになったことに時代の流れを感じる。彼らの自己犠牲は間違ってなかった。
蛇足だが、トランクにあったプレートを見逃した軍人や、タクシーと軍車のカーチェイスなど、映画的演出はもう少し抑えても十分いい映画だったのになと思った。何台ものタクシーはどこから来たのよ!?
全41件中、21~40件目を表示