タクシー運転手 約束は海を越えてのレビュー・感想・評価
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ソン・ガンホの絶望的な表情が素晴らしい
1980年5月に韓国で多くの死傷者を出した光州事件を舞台に、喜劇的な要素をちりばめながらも、次第に胸に染みるドラマにしてしまう韓国映画のレベルの高さを堪能できる新たな良作の一本。
「義兄弟 SECRET REUNION」のチャン・フン監督が、ソン・ガンホと再びタッグを組んでいる。事件の実態を世界に伝えたドイツ人記者を事件の現場まで送り届けたタクシー運転手をソン・ガンホが演じているのだが、彼のための役と思えるほどのはまり役で、飄々として、ズル賢く、無責任そうでありながら、実は子供思いで正義感に熱い父親を演じさせたら右に出るものはいない。
光州で民主化を求める大規模な学生・民衆デモのシーンは迫真に迫り、市民を暴徒とみなした軍が発砲する様を目の当たりにした時のタクシー運転手、ソン・ガンホの絶望的な表情は、「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「パラサイト 半地下の家族」などで見せた表情に匹敵するほど素晴らしい。
実話をベースにしながらも、手に汗握るカーチェイスシーンなども盛り込み、しっかりとエンタテインメントにまで高める作りはお見事。韓国で1200万人を動員する大ヒットを記録したのも納得の笑って泣けるヒューマンドラマだ。
韓国民主化運動の起源となった悲惨な光州事件を、エンタテイメント化して描いていた
チャン・フン 監督による2017年製作(137分/G)韓国映画。
原題または英題:A Taxi Driver、配給:クロックワークス、劇場公開日:2018年4月21日。
韓国出張経験や韓国人知人もいたのに、1980年起きた光州事件もその実態を世界へ向けて報道したドイツ人記者(ドイツ公共放送連盟東京特派員)ユルゲン・ヒンツペーターの存在も、つい最近まで全く知らなかった。
当時のNHKニュースを見てみると、暴徒化した学生と市民を軍が鎮圧したとの報道で、映像も投石している学生が中心。軍による多数の学生射殺や民主化運動的捉え方も見られず、韓国の政府側新聞報道に類似で、ドイツ人記者による報道との対比で、真実を伝えようとしていない日本のメディア対応にショックを感じた。当初の政府からの発表による民間人死亡者でさえ144人。本映画での軍隊による学生や市民の殺戮描写は、結構リアリティが有る様に思えた。
後の民主化運動の原点にもなったこの歴史的に重要で悲惨であった光州事件を、名優ソン・ガンホを主演に据えたエンタテイメントにして描いており、大いにビックリ。タクシーの市民たちへの協力はあったらしいが、流石にあんなカーチェイスはないだろう。でも少しでも多くの世界の人間に、光州事件を知ってもらうために、エンタテインメント化はとても有効な戦略と思えるし、韓国民主主義の始まりを多くの若い自国民に伝えることの重要性も理解できるところ(実際韓国で、1200万人以上動員の大ヒットとか)。
当初、学生運動に批判的であった主人公のタクシー運転手が現実を知る中で、運動に対する捉え方が変化していく様を、ソン・ガンポがユーモアも含めながら見事に表現していて、流石の演技力と唸らされた。尚、映画内では、当初は大金目当ての運転として描かれていたが、実際の運転手の息子は事実と異なると、抗議してたらしい。
ドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターを演じたトーマス・クレッチマンも、ジャーナリストとしての静かながら熱い使命感を垣間見せて、素晴らしかった。カッコ良かった。この俳優さんが、「戦場のピアニスト」(02)で主人公ピアニストを助けるドイツ将校を演じてたことを視聴後に知った。ドイツ側でも良い文化人がいたことを体現したあの演技も、素晴らしかったことを思い出した。
監督チャン・フン、製作パク・ウンギョン、製作総指揮ユ・ジョンフン、脚本オム・ユナ、撮影コ・ナクソン、美術チョ・ファソン、 チャン・イジン、衣装チョ・サンギョン チェ・ヨンサン、編集キム・サンボム 、キム・ジェボム、音楽チョ・ヨンウク。
出演
キム・マンソプソン・ガンホ、ユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)トーマス・クレッチマン、ファン・テスルユ・ヘジン、ク・ジェシクリュ・ジュンヨル。
乗客、上客、情客。
広州事件
何も知らない平和ボケをした頭で観たので主人公である運転手の追体験ができて良かった。
主人公はソウルのしがないタクシードライバー
男手一つで娘を育てるいわゆる小者。
そんな中、広州まで行って帰れば10万ウォンという大金に目がくらみその客を横取りしてしまう。
その客は韓国語を話せないドイツ人記者。
広州に行った記者が帰ってこない為、その広州の実情をスクープしようとやってきていた。
運転手は知らない。
広州の現状を。
記者もまた同じく、そこまでの惨劇を知らなかった。
世の中に蔓延るのはフェイクニュース。
それに彼らは軽んじて検問を突破してその地獄へと踏み込む。彼らにはそれぞれ利己的な理由もある。
それはただの学生デモなどではなく、民主化を求める市民や学生達の警戒軍との悲惨で大規模な戦争であった。
序盤は多くの住民達の声高き民主化を叫ぶ人々の列。
そこで運転手はまだ元気な笑顔の住人達からおにぎりを渡され「腹が減っては戦はできぬ」的な事を言われる。同じく戦う市民達はお互い助け合いながらも必死で講義する。
立ち上る煙幕、ボコられる丸腰の住人達。
まさか、同じ国でこのような大事件が起こっているなんて夢にも思わなかった。呆然とする運転手。
この事件を外の世界に知らせなければとフィルムを回す記者。
しかし運転手は逃げ出す。
一人娘を残して死ねない。
逃げる彼を罵倒せずソウルのナンバープレートではまずいと親身になった他のドライバーから別のプレートを渡される。
なんでこんなにみんな優しいのだろう…私は泣くよ。
逃げ出した途中の穏やかな街で食事をとる。
そこで出されるおにぎり。
相変わらず流れるフェイクニュース。
娘への靴を購入する。
運転しながら娘のことを考え楽しく歌い出す。
しかし、頭を占めるのは警戒軍のひどい乱暴の数々と罪のない優しい住人達。涙を流す。そして思い切りハンドルをきる。
引き返した広州はさらにひどい惨劇に。
激しい銃撃戦で無抵抗の人々が殺され、白旗をあげても撃たれる。
血まみれの死体、泣き叫ぶ人々が溢れる病院の中、彼らに協力的だった大学生の死体と対面する。
うなだれて気力を失う記者をみつけ、一刻も早くこのニュースを広めてくれ!と叱咤激怒する。
銃撃戦の中、俺たちタクシードライバーが怪我人を運ばないといけない!とその中に突っ込み必死で怪我人を乗せる。それまで傍観していた主人公もそこに加わる。再びフィルムをまわす記者。
うーん。ドライバーの鏡だな〜てか、お国柄なのかしら。「タクシードライバー」という責任感を持つ大勢の人々は活躍する。
記者を乗せたタクシーは空港へと向かう。
一刻も早くこの現状を伝えなければ…
2人の思いは一つになった。
軍隊により厳重にされた検問場。
1人の兵士がトランクに隠されたソウルナンバープレートを見つける…
顔色変えず兵士は「通してよし」と告げる。
もうここで私の涙腺決壊待ったなし状態である。
皆が皆、現状を良しとしてはないのだね。
しかし、軍の車に乱射されながら追跡される主人公。
やってくるのは他の広州のタクシードライバー達。
主人公を空港へ送り届けるために彼らにより繰り広げる激しいカーチェイス。
最後の1台もついに…
皆、仲間の為に、広州の為に命を散らしていく。
空港に無事到着した2人。
決して晴れやかな顔ではない。
地獄を見てきたから。
犠牲者は帰ってはこない。
空港で別れる2人。戦友。
しかし、運転手は名前を教えない。
きっと家族に危険が及ばないためかな?
真実がついに明らかにされる。
収束後も再会しない2人。
きっと彼はこれからもおにぎりは食べられないのだろうなぁと思うと争いというものは生者にとっても碌なもんじゃねぇなぁ。
ポスター詐欺といわれてるこの作品。
主人公の人柄を表すよくできたポスターだとしみじみ思う。
フィルムを隠したクッキー缶。
あのクッキー、私の好物のやつだわ。
韓国はこんな素晴らしい映画が製作できて羨ましい
この映画、上映時にポスター見て気になっていたが、当時はソンガンホも知らず(その何十年前にシュリで見ていたが結びついていなかった)、しばらく韓国映画を見ていなかった。
見ておけばよかった。ホントに。
私の場合は、最初にこの映画のポスターを見てずっと心に残っていたものの映画館で観る機会を逃し後悔していたところ、この映画のヒットの影響だと思うのですがソンガンホ主演の『密偵』(素晴らしいが内容は一応抗日映画なので好みがわかれるかも)がリバイバル上映されたので拝見し、その映画製作と演技の質の高さに打ちひしがれて、改めてこの映画をDVDで観ました。個人的には彼の出演作は大抵好きですが、この映画はダントツに好きです。その後はソンガンホ主演の映画を続けてDVDで見まくって、1年後にパラサイトの受賞って感じでした。この映画とはそういった出会い方でした。
事実を元にした映画だが、演出としてフィクションも入れつつ盛り上げと物語の理解に貢献させ、冒頭の変に軽くてインチキ臭いハウス調ミュージック(あれチョーヨンピルの歌だってことも驚きなんだが)を歌うソンガンホの軽妙なコメディータッチから始まり、シリアスな部分、義理人情噺、家族愛、カーチェイス、ストーリーのギアーの緩急の付け方、商業劇場映画の美味しいところをふんだんに詰め込んで素晴らしい映画です。
ダラけて腑抜けた姿、お気楽な姿、国を一方的に信じて疑わない小市民、信じられない現実が理解できない姿、子供が恋しい姿、怖くて逃げだす姿、全国的には全く伝わっていない異常さが身に染みる瞬間、平凡な生活に戻ってももう戻れないお気楽な時間、見たものを押し殺し平然を装い子供を育てていく覚悟。いろんな多重であり普通のどこにでもいるインチキ臭く汚いおっさんの顔と背中。
ソンガンホという俳優、彼は間違いなく名優です。
この脚本と言い、資本と言い、製作といい、素晴らしい。
対して、この日本にも、もちろん題材はたくさんあるのに、怖がって作れない。当たり障りのないテンプレ・クソ映画ばかり作り過ぎて技術も劣ったのか?非常に羨ましい。
何かあればエセ右翼(あんなのは右翼でも保守でもない)の圧力で上映が中止されたり、裏から政治家がご意見を挟んだり、そうなるものと1ミリでも予測されれば、資本は集まらないは、集まっても本の改変を求められて毒抜きされるは、責任は取らないは、ロクなものではない。制作も上映側も誰も覚悟が無い。
私の子供のころは日本でも戦争映画がたくさんありました。一見肯定的なもの、被害者感覚なものあれば、南洋の基地に居る慰安婦が出てくるものも普通にありました。見ごたえのある大作も多かったです。何を憚っているのか前面に高級軍人を描くものは役所さんが演じるもの数個以外はなかなか見かけない。
もっと日本もたくさん描いてほしい。
そしてこの映画やアメリカ映画みたいに、社会や国家の失敗を見つめるものを作る勇気を持ってほしい(アメリカのカッコよさはココだと思う)。
硫黄島やMINAMATAを他国に作られて悔しいったらない。なぜ日本には自ら作れなかったのか?作れないよな、わかってるヘタレ日本のカッコ悪さ。残念だ。ますますその傾向が強くなっている。映画にかかわらずTVも商売もクレームなんぞ無視すればよいのに。
そして金出せ、口は出すな、当たっても金を出す号令を出した自分の手柄にするな。
口から出まかせのSDGsとかエコとかホザく前に映画・コンテンツ産業に金出せ。
文化発信は戦争の弾込め準備に勝るとも劣らない、勝つためには重要だぜ。いい加減に韓国見たら誰でもわかるだろ?
なお、市民側が軍隊やKCIAなど当局に暴力を振るわれたが、市民側も武器庫を強奪して戒厳軍と戦った事実を知っている人の多くは、どっちもどっちだとか、治安維持的に仕方がないとかいう意見もあると予想できますが、この映画で描かれる市民への暴力が先です。この後に我慢できない市民が武器庫を強奪し武力によって市街から軍を一時的に追い出しました。
光州事件の前と後では生き方が違うという描き方をする韓国映画は結構あるものの、匂わせやセリフの一言で描き、事件を知らないと何となく見逃してしまうかもしれないものも多いです。そういったものは事件を知らないと深みがわかりません。そういったいろんな韓国映画をもっと理解して楽しむという意味でも光州事件は知るべき知識で、この映画は見ていた方が良いでしょう。
この映画で描かれた広場で発砲を始めた日の出来事。実は日本の朝日新聞の記者もこの映画のドイツ人記者と同じように現場で写真を撮っていた事が数年前分かりました。死去後に遺族が遺品を整理した際に、今更当時の生々しい写真が出てきて遺族が驚いたみたいな感じの仕方で、昔の韓国は大変だねみたいな視点で報道は少ししかされませんでした。なぜそこにあるの?っていう視点は全くなく。
もちろん当時の朝日新聞はこのスクープ写真を報道していませんし、写真が出てきても無視しています。大変な中取材を行って報告もせず個人の裁量で出さないという事はありえないので、新聞社が揉み消したのでしょうね。そんな新聞社が左翼でアカで革新派でジャーナリズムなのでしょうか。この事だけでなく未だに旧特高警察である検察特捜部と仲が良く、戦前から官製リークを流して世論を操ることに加担したりする新聞社のどこが左翼なんだか、世間の評価も含め何に操作されてんのか、ちゃんちゃら可笑しいです。
光州事件は日本も全く関係ないのではなく、その隠ぺいに国や新聞社も加担していたのです、欧米メディアとは異なり。世間的に未だにこの事実を無視していますが。日本って国は自国の事も他国の事も、シレっとそういう事する国でもあります。そういったことも忘れないようにしないといけません。
このことを題材に映画にしてもよいのに。
ちなみに韓国映画を色々見てきて、改めてこれを見ると、ああここにあいつ、ここにもいる、いい演技だよねー。こいつこんなちょい役で出ているのかぁとか。思ったりする楽しみも増えます。
ああガンホもいいけど、ユヘジン的な演技のギアーの入り方もいつも味があるねぇとか。
てかオムテグ、いまいち売れないよなぁ。とか。
メッセージとしての映画
本作に限らず、社会派と言われる映画は社会に訴え、残すメッセージとして価値を感じる。脚色されたエンタメとしての側面を持つことで、観やすく分かりやすいものになる。映画の良さは、面白いか面白くないかだけではないと再認識した。
ソンガンホの演技は安定感があって、作品を親しみやすくしてくれる。
本作に関する「ザ・シネマ」の記事も良かった。
トーマス・クレッチマン
トーマス・クレッチマンは「戦場のピアニスト」でも「アーニャはきっと来る」でもこの映画でも不思議といつも良い人役だね!
そしてソンガンホさんは演技が上手い!
結局本名を告げず最後まで会わなかったのは誹謗中傷などを断つ為だろうと思う。
軍隊とは自国民を守る存在ではない。それは歴史が語っている。
疲れる映画だ。実話に基づく映画たが、実話ではない。どこまで本当なのか分からない。光州事件の被害者は200人と言われるが、この映画では、それてはすまないし、軍部による暴走は性的被害者(17人の性的暴行)まで出している。国防省が正式に謝罪(?)している。この映画は勧善懲悪の戦争活劇になってしまっている。
自国の軍隊とは厄介なもので、こう言った事件は光州事件ばかりではない。
済州島4/3事件や台湾の2/28事件また中国の天安門事件。全部、自国民に向かって、弾圧を企てている。
日本で何もなかったのは、多分戦争に負けたからで、今後そんな事が無いように、シビリアンコントロールをしなければ駄目だ。まぁ、軍隊とはそう云うものだと覺悟すべきだ。軍隊とは自国民を守る存在ではない。それは歴史が語っている。
光州事件は全斗煥の軍事クーデターだと先ずは断って、話を進めなければ駄目だ。この映画は残念ながら評価出来ない。
史実とフィクションの狭間で揺れる
タイトルのとおりで、とても良い映画です。
日本人ですし、過去の事件ですし
真実はわかりませんが、
ひとつ、言えるのは
某 慰安婦問題などから、あまり良い感想を抱いていなかった、かの国の国民感情について
非常に義理堅い国民性があるのだと理解できたのが、いちばんの収穫で
なるほどなぁ
彼らは感情面で、未だ納得出来ていないのだなぁと
そこを上手に外交するのが、政府の仕事だと思いますが
妙な偏見はやめよう、と、ふと、この映画を通じて、感じました。
近しい隣人、似たような文化圏で、普遍的な苦悩を、彼らも抱くのならば
信じてみようと思える作品でありました。
緊張感が半端ないバディ物
この運転手の消息が分からないなか、優れたドラマに仕上げたスタッフの才能に拍手。
ソン・ガンホはやっぱり優れた役者だと再認識。役柄のバリエーション、存在感といい韓国映画に欠かせない。日本だったら誰かなあ? いったんソウルの戻る途中から光州に戻るプロセスが良いね。
タクシー運転手とドイツ人記者の珍道中でなく、全斗煥軍政下の光州事件を取材するという命がけのロードムービー。ドイツ人記者は、行きが後部座席で、最終段階では助手席に座り、二人の関係と信頼度・親密度の変化の象徴かな。
のんきな少年期に隣の国でこんなことが起きていたんだねえ。驚きと衝撃。香港やウクライナの現状を憂う。
宣伝スチールに騙されるのも良し
ちょっとしたおもしろ人情ドラマかと思って作業用BGM的に見たり見なかったりしながらだったが、ラスト2、30分はじっくり見入ってしまった。
1980年5月にこんなことが隣国であったのを今回この映画で知った次第。
1980年は聖子ちゃんトシちゃんがデビューした年で学校ではその話でいつもあーだのこーだのいつも話題にしたことぐらいしか記憶が無い。平和な日常だった。
鑑賞後サムネイルはこの主人公の善面を表していることに気付く。
ドイツ人に紐解きを渡さなかったのは何故なんだろう。
わたしに会いに来るくらいなら、今まさに惨状の現場となっている場所に赴き真実を世界に晒せという意図なのだろうか。
時を経て新聞で来韓したそのドイツ人を見つけ嬉しそうにしている主人公。
この主人公も(ドライバー仲間も)世界に真実を世に知らしめた重要な功労者。そしてただの一般市民。
最後の最後にドイツ人カメラマン本人が出てくるが呼び掛けが堪らなく切なかった。
毒蝮三太夫かと思った
ポスターを見たら、毒蝮三太夫が出ているコメディかと思ってしまった(笑)。
事前情報なしで、タイトルとポスターの笑顔からコメディだと思ってみた映画である。最初のほうは確かにコメディっぽい展開であったが、ドイツ人記者が登場して、光州に行くあたりから光州事件を扱った物語ということがわかって、シリアスものに急変していく。実際、かなり悲惨な展開となっていくのであるが(これが事実だったと思うと余計に切なくなる)、「ダイハード」みたいに、全く関係のない人間がひょんなことから事件に巻き込まれ、結局、正義のため戦っていく姿に感動したのと同じような感動を覚えた。
ビックリした。 全然話の中身は知らず、評価高いというだけで見てみた...
ビックリした。
全然話の中身は知らず、評価高いというだけで見てみたら。
さらにこのビジュアルでこんなずっしり来る話とは思わないよ。
そして無知な自分を知った。
韓国で1980年にこんなことがあったとは。
80年代って現代だと思っていた。
俺が生まれていた、実生活。
そんな中で、今やK-POP全盛の国で。
そして俺も『日本は一番住み易い国』と思っているが、ちゃんと見ておかなければ。
たった40年前にこんなことが起こっていたなんて
恥ずかしながら全然知らなかった。
なんとなくパッケージをみて、
南国でタクシードライバーしてる
ほのぼのストーリーかと思って再生してみたら
思いの外シリアスな社会派で、
唾をごくりと飲みながら観た。
ものすごい良作やないかー!!
主人公のUターンのシーンはグッときた!
(もちろん2回目のほう)
すばらしい映画
恥ずかしながら、お隣の韓国の歴史には全く詳しくなく、光州事件も寡聞にして知らなかった。しかし、私ののような無知な人間をも打ちのめすだけの力を本作は持っている。
いい加減だが人の良いタクシー運転手キムは、食堂で耳にした割りのいい仕事を横取りし、ある外国の客をソウルから光州まで送り届けることになる。おいしい仕事にウハウハなキムだったが、光州に近づくにつれ、検問が設けられ、物々しい雰囲気に。軍が市民を無差別に殺傷する光景を目の当たりにすることになる。
本作は史実に基づき作られた。エンドロールでドイツ人記者ヒンツペーター氏本人が登場し、キム氏との再会の希望を訴える。しかし、その夢は叶わず、ヒンツペーター氏は亡くなったという。
本作でも名優ソン・ガンホのすばらしい演技が光る。彼なしではこの映画は成立しなかっただろう。本当にいい映画を観た。
後日談になるが、映画公開後、キム氏の息子が、本作の主人公は自分の父であると明かした。キム氏本人は光州事件の数年後に癌で亡くなっているという。実際のキム氏は映画で描かれたような人物ではなく、英語も日本語も堪能で、主体的に民主化運動に関わり、ヒンツペーター氏とも従来からの知人だったそうだ。今頃2人は天国で再開しているかもしれない。
面白かった、ソン・ガンホ!!
ソン・ガンホさん主演の映画ということと、評価が高いので鑑賞した。
時代は1980年。暴動が起きている事実を世界に伝えるべくやって来たドイツ人記者をソン・ガンホ演じるタクシー運転手がソウルから光州へ送迎するという実話。ただし、光州事件については不明なことも多いようで、どこまで事実かはわからない。結果、無事に記者を帰国させ、世界に情報を発信できた。記者が帰国する際にタクシー運転手との再会を約束するも、後に再会できず亡くなってしまう。
今も
ほのぼのコメディータッチで始まって、光州に入るとホラー映画のようになって、実話が元になっていて、という、凄い映画です!と映画評を聞いてたからその通りだった、何も知らずに観たかった!でも何も知らなかったら観なかった・・・光州のことも知らなかったし。
今香港で起きていることを考えてしまう。
観てよかった!
見応え十分な2時間18分でした。
ポスターにうつる、ソン・ガンホさんと映像の中の彼ではいい意味で、ギャップがありました。今更ですが、なんと良い俳優さんなんだーと惚れ惚れしました。
韓国の歴史に残る事件、光州で起きた出来事。
ただただ、内容が酷すぎて、恐ろしくなりました。
平和な日常(とはいえ、我が国もいろんな深刻な問題とおかしな政治家を抱えていますが)を過ごせることに心から感謝できました。
ドイツ人記者と韓国人ドライバーのお話。
前半は何かと分かり合えない、通じない2人でしたが、
中盤からだんだんと2人の見ている方向が同じになっていき、また最後には離れているのにお互いの存在に感謝をする2人を見て感動しました。
いつの時代も、暴力でどうにかしようと考え、弾圧しようとする人間がいます。その結果、犠牲になるのは一般人。映画のな中では、たくさんの尊い命が暴力によって奪われています。こんな事が今の日本で起こったら、、、と考えると怖すぎます。
ほんとーに間違った権力者というのは愚かですね。
これは実話をベースにしているとのことで、あんな勇敢なタクシー運転手さんがいたのかと思うと、韓国タクシー界からすれば英雄ですね。
笑いのあった前半から、涙がでてくるような悲しいシーン続きの後半。どちらも見応えあるのであっという間に終わってしまった、、、
映画を観ると、普段考えもしないような事を改めて考える時間を作ることができます。映画に感謝です。
韓国の民主主義
『1987、ある闘いの真実』(2017)も良い作品だったが、この作品も素晴らしかった。
血を流して勝ち取った民主主義は、きっと強いと思う。
この映画で採り上げている光州事件は1980年。たった40年前のことだ。
テレビや新聞のニュースを頭から信じ込み、「こんないい国はない」と言う主人公。私たちは彼のことを笑えるだろうか? 私たちに知らされないところで大変なことが起きているかもしれない。そうでないと誰が断言できるだろうか?
光州から逃げる途中で検問に捕まる場面。絶体絶命だったが何故か見逃される。軍の中にも政府のやり方を好ましく思っていない人間がいたということなのか。
誰もいない森の中で木が倒れたら音がするか
あのタクシー運転手はどうなったのか、知りたくてネットで調べました。
実際にはタクシー運転手ではなく、高級ホテルのお抱え運転手で英語を話し、この時の仕事も内容を知った上で受けた仕事だったとのこと。韓国で映画公開時に息子さんが現れ、映画と実際の話の大きな相違点として、特に高額の報酬のために引き受けたというところが残念、と話されたそうですが、映画が実際の話通りであったなら、逆に感動が薄れたと思うのです。やはり最高の見せ場は事なかれ主義だった主人公が巻き込まれながら自分が見たこと、経験したことで事なかれ主義から転身、自分から行動を起こしたところにあると思います。
私も「光州事件」のことは知りませんでした。でも知らないからこそ、光州で何が起きたのか?(最初の方のソウルでの学生たちのデモ抗議運動が伏線となっています)好奇心的なところからラストまで一機に見ました。
おにぎりをくれたお姉さんや歌謡曲祭に出るつもりで大学に入ったという学生、光州のタクシー運転手たちが次々と犠牲になっていくところはゾンビ映画で生き残った人間たちが自己犠牲を伴いながら主人公たちを助けようとしながらやられていくそんな悲壮感と重なりました。その分、学生の遺体があった病院で片方の運動靴が脱げていてそれを履かせる演出が良くわかりませんでした。田んぼのあぜ道に遺体が捨ててあったのですよね。運動靴は片方脱げたのなら病院には無かったはずなのですが。
時が流れて二人が会うことは無かったわけですが、結構皆さん会って欲しかったという意見が多くてびっくり。そんな陳腐なラストはいらない。
ラスト、無事フィルムは世界へ発信されることになるわけですが、これを見ながら思い出したのは少し前日本人ジャーナリストが渡航禁止国へ渡った後、人質となり身代金との交換の材料とされましたこと。その際、日本では自己責任論がネットで起きましたが、本人が無事帰国した後、また同じようなことが起きたとして、渡航禁止国へ行きますか、の問いに「行く」と確か答えていたと記憶しています。
行くなと言われて行かないのであればジャーナリストではない、そこで何があったのかを知らせることがジャーナリストの仕事だ、そんなことを答えていたと記憶しています。
「起きたことが人に認知されなければそのことは起きなかったことと同じ」というタイトルに通じます。
感動のエンタメ作品と劇場の心意気にどちらも心が震えました♪
4月の初旬からコロナによる緊急事態宣言が出て、全国の映画館は軒並み休館に追い込まれ、映画館で映画を観る事が出来ない日々が続きました。
4月は休館前にギリギリ1本観賞しましたが、5月はゼロ。
今年は映画館での観賞100本を目標にしていたので目標達成はかなり難しくなりましたが、まさかこんな事になろうとは誰も思っていなかった訳で、もっと映画に携わっている方々は切実な思いをされていたと思います。
とりあえず6月に入って、都内もステップ2から映画館が順次再開され、久し振りの映画館での映画観賞を楽しみにしていた中で何を観ようかいろいろ調べていましたが、とりあえず新作の公開はいろいろと上映のタイミングを見計らっている感じで新作上映が少ない中で過去の名作上映を行っている映画館が多いので、実はまだ観たことの無かったこの作品がシネマート新宿で限定公開されると知り、足を運んだ訳ですが、なんと!無料上映をやっているとの事でタダで観賞する事が出来ました。
映画館が再開された記念と今までお待たせしたお詫び的な事も含めての限定の無料上映との事だそうですが、この約2ヶ月は誰も辛かったけど、映画館関係の方々はいつ閉館になるかどうかのギリギリの瀬戸際だったと思うだけに、頭が下がると言うか、もう申し訳ない思いで一杯です。
どうやってお返ししたら良いか分かりませんが、目一杯劇場に足を運んで映画を観賞する事が映画館へのせめてもの恩返しなら、目一杯劇場に足を運んで映画を観まくりたいと思います。
改めて、有難うございます。シネマート新宿さま♪
さて、この「タクシー運転手 約束は海を越えて」は前から観たかった作品で何故かリアルタイムでの公開時に琴線に引っ掛からなかったのが不思議な感じで作品の感想も軒並み高評価なだけに期待には上がっていたんですが、どうしても映画館での観賞をしたかっただけにまさかのこのタイミングで観れるのはもの凄く嬉しくてラッキーで幸せ♪
とにかくポスターのソン・ガンホの笑顔にやられますよね。
で、感想はと言うと、素晴らしい作品です。
とても重い事件を緩急硬軟織り混ぜながら魅せてくれます。
ヒューマンドラマであり、異文化交流のロードムービーで80年代のソウルや光州の風景が何処か懐かしい感じでノスタルジックにも感じさせてくれる。
マンソプのタクシーも「いすゞクーペ」みたいなオールドタイプな感じも良い。
※実際には「キア・ブリザ」と言う車種らしく、「マツダ・ファミリア」のノックダウン生産モデルとの事だそうです。
BGMも心地好くて、オープニングから"これは良い映画が始まる"と言うワクワクする気持ちにさせてくれます。
この辺りは「グリーンブック」に似てる感じですね。
前半はソン・ガンホ演じるマンソプのC調的な弛い感じで進んでいきますが、光州に入って辺りからの中盤からは軍と民衆デモとの争いからエンジンが掛かり、後半は畳み掛ける様に展開していく。
もう軍の鎮圧がこれでもかと言わんばかりに武力で制圧していく様が圧倒的な暴力の恐ろしさを見せつけてくる。
韓国では大きな事件となる光州事件もいろんな政治的な動きから現在に至るまで解明には至ってないとの事ですが、現在の日本では考えられないくらいの悲惨さに眼を背けたくなります。
現在アメリカで発生している警察の黒人男性への死亡事件に伴う抗議デモの事などを思うと、決して他人事としても考えなれない気持ちになりますし、何処か平和ボケをしているかと思うと、現場で軍隊の行為を目にする迄のマンソプの気持ちは我々の代弁でもあるかと思います。
そう言った悲惨なシーンと対比するかの様に光州の同じタクシー仲間のファンの家でのつかの間の交流に心がほっこりし、大学生のジェシクの身体を張った行動に胸が痛くなります。
終盤からは畳み掛ける様にこれでもかと怒涛の逃亡劇を繰り広げますが空港のピーターの国外脱出もハラハラしっぱなし。
ピーターが日本行きの便を早めた事で上手く脱出出来ましたが、もし出来てなかったとしたら…考えるだけで怖いですね。
そこがちょっとあっさりと流されてるのは勿体ないかな。
史実を元に構成された物語との事で多少の盛り上がりを踏まえた演出的な物があるにしても、1級のエンターテイメント作品として成立しています。
素晴らしいのはマンソプ役のソン・ガンホとピーター役のトーマス・クレッチマン。
ソン・ガンホの緩急な演技で必要以上に固苦しくならず、それでいて胸にキリキリと迫ります。
1人の娘の父親であり、1人の人間としての葛藤と勇気がグッと来ます。
トーマス・クレッチマン演じるピーターも良いんですよね。
ラスト辺りからのマンソプとの友情には胸熱になります。
ラストで互いに歳を取った2人。
偽名を使っての連絡先からマンソプと連絡が取れないが、マンソプとの再会を熱望するピーター。
タクシー運転手としてピーターの行為に感謝しつつもピーターと会わなくても心が通じている事に感謝するマンソプ。
個人的には2人の出会いを期待してたりしてましたが、このラストの方が切なくて、夜のソウルの街をマンソプのタクシーが俯瞰で走っていく様を撮す映像に涙がグッと来ます。
良い終わり方ですよね。
日本では報道の倫理について度々討論される事が多く、行き過ぎた報道にうんざりし、その都度かざされる報道と表現の自由と言う言葉がもの凄く安っぽく感じる事があります。
もちろん大事な物で大事な事と認識してますが、本来の報道の在り方が見えなくなると言うか、見えない感じなんですよね。
ピーターの勇気ある行動で明るみになった事件ですが、それを支えたマンソプ達の尊い犠牲と勇気も忘れてはいけないし、そこに心打たれます。
韓国と言う国と日本の関わり方は文化の違い等もあり、いろんな部分で難しい所がありますが、それでも韓国映画はどれも非常にレベルの高い作品が多いですよね。
予告編を観ていても"うわっ!面白そう♪"と思う作品がてんこ盛りです。
とにかく、待望の作品を映画館で観れた事に大満足です。
ここ数年で約2ヶ月近く映画館で映画観賞をしないのは結構マレで改めて思ったのは自分にとって映画館での映画観賞はただ映画を観るだけでなく、映画を観る前後と映画館で映画を観る行為自体が映画を体感すると言う事なんですよね。
体感する訳ですから、映画観賞ならぬ「映画感賞」と言う感じですかね。
自宅でDVDやネットで映画を観るのとは一味も二味も違った映画を映画館で観ると言う特別な行為。
これからも映画館で映画を観れる事がとても幸せで平和の恩恵と言う事を忘れずにいきたいと思います。
今更ながらではありますが、文句無しの作品です。
時折、いろんな劇場でアンコール上映をしているみたいなので、タイミングが合えば是非映画館で♪
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