「コミカルさと残虐さの対比」タクシー運転手 約束は海を越えて nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
コミカルさと残虐さの対比
クリックして本文を読む
冒頭、軽快な音楽で始まる主人公のタクシー運転手のコミカルな日常描写で、憎めない共感できる人物像が的確に描かれ、そんな主人公の視点で段々と光州事件の惨状を知ってゆく、秀逸な語り口に引き込まれました。
やはり、主人公のソン・ガンホの演技が素晴らしく、その辺にいそうな普通のオッサン感が絶妙です。
残虐な事件に直面しうろたえ苦悩するその姿に感情移入せずにはいられません。
事件を知らないよそ者という主人公の立場も観客と共通しているので、入り込み易くなっていると思います。
事件に直面した庶民の人間ドラマ、戒厳令下の街で軍の監視を逃れ取材してゆくサスペンスと、適度に娯楽性もあり、物語として上手く構成されていると思います。
コミカルでささやかな庶民の日常描写との対比により、弾圧の残虐さも強く伝わります。
軍人に追われるサスペンスフルな場面など娯楽性を意識しているかなと思いますが、主人公達を助けてくれる青年、タクシー運転手仲間の姿には、やはり目頭が熱くなってしまいます。
光州事件については全く知らなかったので一応概要を調べてから観ましたが、知らずとも差し支えはなかったかと思います。
事件についての記事で、タクシー運転手の素性が謎となっており工作員説もあると知りましたが、映画ではそういう繋げ方か、と。
娯楽性を交えながら、深刻な歴史的事件について伝える、優れた社会派作品だと思います。
コメントする