「こどもたちが気づく貧困問題」こどもしょくどう kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
こどもたちが気づく貧困問題
NPO法人や地域住民によって運営されている「子ども食堂」の内容かと思っていたら、道徳教育的な雰囲気の子ども目線の作品でした。しかし、後半になるにつれ、あづま食堂を営む両親(吉岡秀隆と常盤貴子)の目線となり、社会福祉、公的扶助の問題提起を訴えてくる。
明らかにホームレスだとわかる人や、貧困に喘いでいる人たちならば福祉活動家や公的機関も見つけやすいのだろうけど、女の子二人だけだし、見た目は小ぎれいだったからわからなかったのかもしれない。それを気づいたのがユウト、タカシ。母子家庭でネグレクトされ、イジメに遭ってるタカシにとっても、タカシの面倒を見るユウトにとってもわかりやすかったのだろう。夫婦の会話からも、当初積極的ではなかったことがうかがえる。
食事を提供したり、家に泊めてあげたりして、ようやく車上生活者であり、母親がいないこともわかり、そこからの常盤貴子の演技はとても良いものでした。民生委員や児童福祉司などケースワーカーも目が届かない現実。6人に1人の子どもが貧困家庭であると言われてからかなりの年月が経っているのに、何も変わらない日本。逆に消費増税や大企業優先の政治によって、またコロナの影響でますます酷くなることは目に見えている。
なぜ母親はいなくなったのか、父親はどこへ消えたのか、わからない点は多いけれども、描かれないことで父親がクズだとかダメ人間だという批判を回避したためだと好意的に受け止めました。『万引き家族』みたいに強い生命力さえ持たない弱者。自分よりももっと悲惨な子どものことを考えて強くなったタカシ。そして、時代がいつかはわからないけど、あづま食堂のような慈善家たちが「子ども食堂」を自然発生させたんじゃないかと想像させてくれた。ユウトにはイジメを止められなかった自責の念も感じられ、走る姿が謝っているようにも思えました。“虹の雲”がわずかながら希望を与えてくれるエンディングは好き。
音楽がCastle In The Airというユニット。ギターが渡辺香津美♪なんかスゲーと思ったよ!