「何気ない一瞬が輝くということ」日日是好日 かがみさんの映画レビュー(感想・評価)
何気ない一瞬が輝くということ
就職が迫っても「やりたいこと」が見つからない女子大生、典子はふとしたきっかけで従姉妹と毎週土曜に「お茶」を習い始める。それから24年。挫折、失恋、別離。様々な人生の節目の傍にはいつも「お茶」があった。
民家を徹底的に改造して細部までこだわり尽くした茶室。黒木華の静と多部未華子の動が織りなすコントラスト。そして樹木希林の圧倒的な安定感。
武田先生は、御点前の所作のもつ意味をあまり教えようとはしない。それはおそらくひとつひとつの所作には説明しようのない、あるいは、意味の無い事にこそ意味がある「無意味の意味」があるということなのだろうか。「無意味の意味」とは一般的な言葉によって知る事は出来ず〈それ〉という他の無い特異的な経験によってのみ識る事が出来るものである。
様々な細やかな所作の実践を通じて「今、ここ」に意識を向けていく事で何気ない一瞬が輝き出す。これはいま注目を集めるマインドフルネスにも通じるものがある。
この瞬間は一生に一度しかないということ。茶の湯の本質とはお茶を味わうのではなく、まさに「今、ここ」を味わい尽くすということなのだろうか。色々と考えさせる深みを持った作品だった。
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