ピンカートンに会いにいくのレビュー・感想・評価
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深夜枠ドラマ
本来ならば映画では制作されないであろう内容とバジェットを、昨今のテレビ局の予算縮小の中であぶれたモノが流れ着いた感がある作品。別に決して悪い作品ではないのだが、でもスクリーンで観る程の価値かと言えば返答に困る。実際上映後の監督&主役の舞台挨拶の中でも、何とかアイデアを引出して作ったとのこと、オリジナル脚本とはいえ、やっつけ感とまでは言わないが、ドラマとしての広がりは無い。但し、華はなくても、流石バイプレイヤーが演技しているのと、編集の繋げ方やギャグの挿入具合等、しっかりとプロがそこには存在してる展開となっている。間の詰め方、同時進行的に進んでいく過去と現在の並行的展開。最初のカットである、ファミレスでのコーヒー置き換えと、最後の居酒屋カットのピザ置き換えをペアとして編集させている所も、テレビ的な演出方法でとても観やすく、肩肘張らない内容である。大人チームと子供チームのそれぞれのほのぼのとした雰囲気、二人のライバルであり親友だったバランスの怪しい関係が、まるでお互い鏡みたいに、その後の経緯を辿る件、しかし決定的に違った所である、『枕』という経験での、何ともやりきれない想い、その辺りの演出をきちんと描けている点は素晴らしいと感じる。元マネに二人で鉄槌を下す件や、仲直りを妄想して木に抱きつくシーン等、寒さ、痛々しさ、笑いと切なさが溢れるハートウォーミング作品、しかし、これはテレビの夜中枠がピッタリなんだよなぁ・・・
20年という時間が変えたもの、20年経っても変わらないもの。
かつて大好きなアイドルがいた人、ぞっこんのアイドルを追っかけしていた人、そしてアイドルに憧れ、自分もアイドルになりたかった人・・・。
そんな青春を抱えたオトナ向けの、"アラフォー・ノスタルジー"である。
20年前に突如解散したアイドルグループ"ピンカートン"。その大ファンだった、レコード会社に勤める松本は、伝説のアイドルの再結成を企画する。
ブレイク寸前だった、"ピンカートン"は、グループの仲違いからコンサート当日に分裂。その幻のコンサートの会場には、小学生だった松本がいた。松本はグループを20年ぶりに甦らせようと、リーダーだった優子に連絡を取る。
優子は、電話オペレーターを掛け持ちしながら、今も売れない女優を続けていた。そして引退したメンバーたちもそれぞれの生活をしている。40歳を目前にして崖っぷちの優子は、"ピンカートン"企画に再起を掛け、松本とともに元メンバーたちの説得のため、会いに行く。
しかし、当時一番人気だった葵だけが見つからない。
実に心優しい脚本である。20年という時間が変えたもの、20年経っても変わらないもの。友情やプライド、本心と建前。相手を思う気持ちが生み出した、ボタンの掛け違い。
優子と葵の再会シーンの脚本の秀逸さ!! "ピンカートン"解散の理由が見えたとき、言いようのない想いが沸き上がってくる。
"オトナ・ピンカートン"の30代の女優たちと、20年前の"コドモ・ピンカートン"を演じる10代の女優たちのシーンを織り交ぜ、クロスオーバーさせるのが実に巧みだ。まるで10代の娘がそのまま30代になったかのような個々の人物設定は、ブレがない。演技も見事だ。
松竹ブロードキャスティングは、スカパーのチャンネルなどを運営している会社だが、オリジナル映画プロジェクトを"作家主義"の理念のもとで企画・出資している。その心意気は素晴らしいし、同じく「東京ウィンドオーケストラ」(2017)も作った、30代の坂下雄一郎監督がオリジナル脚本で挑んでいる。必見。
(2018/1/31/新宿武蔵野館/ビスタ)
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