劇場公開日 2018年6月23日

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「ものづくりする人たちに勇気と失望を同時に与える傑作」カメラを止めるな! 映画野郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ものづくりする人たちに勇気と失望を同時に与える傑作

2018年8月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

もーとにかく衝撃を受けた。こんな面白い映画をつくれる人がこの日本に、それも自分より若くしているのかと。決して試写会や舞台挨拶で観たわけではないのに、鑑賞後立ち上がって拍手して、見ず知らずの隣の人と興奮を共有したい衝動に駆られたほどだ。

面白い作品を観ると、「楽しい!」と思うよりは「悔しい!」と感じてしまう性の自分がやりたがりの私だが、こればかりは嫉妬を通り越してしばし呆然とさせられた。
クリエイター魂を刺激されものづくりがしたいと思う人が増える一方、こんなすごいの自分には無理だと諦める人も出てしまいそうななんとも不思議な感覚。

口コミでの話題でニュースメディアにも取り上げられはじめたのがきっかけで観たが、最初は正直秀逸な学生卒業映画レベルを想像していた。
前半のワンカット長回しのゾンビ番組シーンではいたるところに粗さが見つかり、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド/HAKAISHA』のオマージュか…とか、やっぱりプロは違うな…と思ってしまっていた。
ところが、1ヶ月前からの後半のシーンで見事にそれらを伏線としてすべて回収し、映画館を笑いの渦に巻き込み、そして最後にはホロっとくるオチまで。脚本と構成に唸った。

また役者陣も、監督が演技力や経験ではなく人間性で選んだという通り、個性の光る逸材ばかりだった。

内容としても節々に現在のエンタメ業界(映画やテレビビジネス、ドラマや番組制作の甘さ、流れ作業のプロデューサー、自己中や意識高い系の役者など)に対するユーモア溢れるアイロニーがこもっていた。
また伏線回収の答え合わせシーンでは、映画の撮り方の裏側を知ることができ、その大変さにこれからの観方が変わると思う。

エンターテイメントとしても最高の仕上がりにしつつ、風刺も効かせた傑作である。生涯で観た映画で一番をあげても過言ではないぐらいだと思う。
こういう作品が日本アカデミー賞を獲ったりすると、また業界も変わるのだろうか。

もの語りたがり屋