「文明と芸術の関係について」ゴーギャン タヒチ、楽園への旅 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
文明と芸術の関係について
ポスト印象派の代表的画家、ゴーギャンのタヒチへの放浪を描いたドラマ。原案はゴーギャン自身が書いた伝記『ノア・ノア』だそうだが、映画化にあたって脚色はされている。
パリの文化を退廃的に描き、大自然と土着の文明が残るタヒチを人間の真実を見られる場所として描いているが、それがゴーギャンの世界の見方だったのだろう。
しかし、そんなタヒチは当時、フランスの植民地であり、どんどん西欧文明が侵食していく。芸術家として理想の土地を見つけた喜びとそれが自らの出身地によって侵されていく様に憤る様子が丹念に描かれている。
現地の若者に、ゴーギャンが彫刻を教えて、その若者が西洋人相手に彫刻を売り始めるのが象徴的だ。ゴーギャン自身で、理想とした文明を壊すことに、知らずのうちに加担してしまう。
ヴァンサン・カッセルが野性味あふれるゴーギャンを熱演している。いつもよりもかなり体重を落としてなかなかに見違えている。芸術と文明の関係について考えさせられる一作。
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