「欲望の深い海を潜航する」娼年 syu-32さんの映画レビュー(感想・評価)

ホーム > 作品情報 > 映画「娼年」 > レビュー > syu-32さんのレビュー
メニュー

娼年

劇場公開日 2018年4月6日
全130件中、15件目を表示
  •  
映画レビューを書く

欲望の深い海を潜航する

公開時に原作を読みました。観に行きたかったのですが劇場に足を運べず、Blu-rayにてようやくの鑑賞です。
石田衣良の小説は「I.W.G.P.」シリーズや「眠れぬ真珠」、「夜の桃」などを読んだことがありますが、総じて思うのは女性の描き方が本当にうまいな、ということです。作品に登場する女性たちは全てリアルで、目の前にその輪郭が浮かんでくるようです。心の機微が丹念に描写されていて、何でそこまで分かるのだろうと作者の洞察力が羨ましくなります。それに文章のひとつひとつがとても繊細で美しいです。
本作の原作もご多聞に漏れずでした。登場する全ての女性、それぞれの持つ欲望の形のどれもが愛おしく感じられ、それに触れることで成長していくリョウの姿が繊細なタッチで描かれていて、とても感動しました。そんな印象を引きずっての鑑賞でしたが、個人的には全く期待を裏切られることなく、原作の読後感と同じような静謐な気分に浸ることができました。

松坂桃李はリョウ役にピッタリです。誰もが太鼓判を押すんじゃないでしょうか。どこか斜に構えているような仕草が、表情も含めて抜群に上手いなと感じました。退屈だった毎日が輝き出し、それに連れて感情が豊かになっていく様を、作品世界に合わせたのだろう抑えた演技ながらも見事に表現しているように思います。
始めは目を覆っていた前髪が、娼夫の仕事を通して成長していく中でだんだんと上がっていくところがさり気なくて良いです。視野の広がり、ということでしょうか。

リョウの前に登場する多彩な女性たちひとりひとりが本当に魅力的です。それぞれが秘めた欲望をさらけ出すとき、人間が持つ真の美しさが現れてくるように感じました。それを体現する女優陣の演技力に舌を巻きました。
大胆で淫らな側面が浮き彫りになり、全てが剥き出しになった瞬間、何もかもをかなぐり捨ててただただ欲望のために求め合う…本作で描かれる様々な形の濡れ場が感情を揺さ振ります。原作が持っていた場面の美しさに加えて、映像ならではの生々しさがあり、さらには快楽に溺れることへの刹那的というか、ある種の儚さと怖さと切なさを感じました。
使い古された表現だとは思いますが、観ていると次第にどこまでも深いところへ沈んでしまいそうな恐ろしさがありながら、それにいつまでも身を委ねていたくなる感覚に捕らわれました。
その後には、体中を取り巻いていた澱が全て流れ落ちて、芯から浄化されていくようなふとした爽快感が訪れ、やがて気怠い時間が流れるような…。何だか、一仕事終えた気分になりました。

監督の指示なんでしょうが、あの前戯だけはいただけないなぁ。下手くそ過ぎる…。あんなに激しくしたら痛いですよ。気持ち良くないんじゃないかな。かつて怒られたことがあるので…。もっと労わらないと、デリケートな部分なんだから。
始めの方でリョウは女性をつまらないと感じているから、思いやりが無くて独り善がりになっているせいかなと考えていましたが、後半になっても全く改善されないので、単なる監督か演者の経験値の問題なのかと。私も他人にとやかく言えるような立場ではないですが、そこが本作唯一の幻滅ポイントでした。他のレビューを読んで、そう感じたのが私だけじゃないと少し安心しました。あれが許されるのはマジでAVだけでしょう(笑)

本作のシーン全てにおいて、とても艶めかしくエロティックで、薄絹に指を滑らせているような滑らかな質感の映像が、ものの見事に原作の世界観を表現しているなと。
画面に、まるで深海のような幻想的な揺らめきを感じました。夜や暗い場面が多いので余計そんな風に感じたのかもしれません。
いい映画を観たな、と鑑賞後に素直にそう思えました。

本作では女性限定の応援上映が開催されていましたが、どこをどんな風に応援するんでしょうか、少し気になります(笑)

syu-32
さん / 2018年9月18日 / Androidアプリから投稿
  • 評価: 4.0
  • 印象:  知的
  • 鑑賞方法:DVD/BD
  • コメントする (コメント数 0 件)
  • 共感した! (共感した人 1 件)
このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

特別企画

Jobnavi