「松坂桃李の肉体美を愛でる、大スクリーンポルノ」娼年 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
松坂桃李の肉体美を愛でる、大スクリーンポルノ
ナマの舞台で、松坂桃李が女優とSEXを演じ続けるという趣向だったからセンセーショナルだったわけで、映像化されてしまうと、単なるポルノ映画。パッケージ化されれば、立派なアダルトビデオだ。
タイトルは、"しょうねん"と読む。普通の大学生リョウが、会員制のボーイズクラブで、"プロの娼夫"として目覚めていく過程を描いている。2時間の尺で、10人の相手と様々な愛を交わし、相手の欲望を引き出し、心と身体を満たしていく。
公開初日ということもあり、松坂桃李ファンの女性客で一杯だったが、東京ミッドタウン日比谷の大スクリーンで、喘ぎ、叫び、×××がほとばしる映像を、昼間からこれだけ大勢の人がマジで鑑賞しているということが凄い。
原作は第126回直木賞候補作にもなった、石田衣良の同名小説。私小説をはじめ、日本文学全般における、異常な性描写は挙げればきりがない。そういう意味では純文学は、かなりムッツリである。
だから石田衣良の原作が特別だとは思わないが、観客の性別、年齢、性的キャリアによって、感じかたは変わってくることは明らか。ただそれほど想像をこえる異常なSEXはなく、石田衣良の取材不足か、経験不足(笑)。
マザコン青年による、SEXのジャンル体験にすぎないといえば、それまで。
ふつうのポルノ映画と違うのは、主役が"女優"ではないということ。いかに女優を美しく撮るかが、ポルノ映画の美学だとすると、本作のカメラは主人公のリョウにフォーカスする。
SM変態男と処女を描いたハリウッド映画の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」(2015)のような男女の美しさを求めることはできない。松坂桃李の肉体美は見られるが、年上の女性客が男の子を買うという設定もあり、美しい絡みのたたずまいはない。
楽しみとしては、これだけの多種多様なプレイを松坂桃李にさせています・・・というところ(笑)。日本でいちばん濡れ場をこなしたメジャー俳優である。
(2018/4/7 /TOHOシネマズ日比谷/シネスコ)