星めぐりの町のレビュー・感想・評価
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ほっとけ、ほっとくしかないんだ。
映画「星めぐりの町」(黒土三男監督)から。
作品の中に「東日本大震災での津波により家族全員を失い、
心に傷を負った少年」が、遠く離れた愛知県で、
再び大きな揺れを体験し、フラッシュバックしたのか、
忽然と姿を消すシーンが設定されている。
町をあげて捜索している中、世話をすることになった主人公は、
「捜索に行かないの?」と言う娘にこう答える。
「ほっとけ、ほっとくしかないんだ。
男にはな、誰も手を出していけない時がある。
誰の手も借りず自分1人で、歯を食いしばって、
戦わなきゃならん時がある。今、その時だ。
誰かが手を差し伸べて、あいつを助けたら、
これから先、生きていけない。
もっともっと、人として、男として辛いことがいっぱいある。
それに負けない男にならなきゃ。
今、あいつは、どこかで泣いてる。雨に濡れた野良犬みたいに、
もう生きてるのが嫌で悲しくて悲しくてきっと泣いている」
監督が伝えたかったのは、これかな、とメモをした。
日本列島を大きな地震が何度も襲い、その度に、
家族を亡くした子供たちにクローズアップされるが、
最後は自分が置かれた現状を受け入れて、生きていくしかない。
そんな子供たちへの応援歌作品として観終わった。
ほっておくことも大切な時があるんだよなぁ。
高倉健と小林稔侍のタッグ
この作品は企画が数年前からありました。
当時、高倉健さんの最後の作品として企画したのがスタートです。
紆余曲折あり、やっと今年に公開となりました。
最近、映画が原作である作品がほとんど公開されません。
そして、この作品は監督が資金繰りから企画まで苦労して作った映画。つまり、東映や、東宝の予算で作った作品ではないということです。
その難しさを感じながらも演じた俳優の方々、撮影に携わった方々がいる。新しい時代の幕開けです。
もし、高倉健さんが演じていたらと考えると、
子供もなく、奥さんを亡くした後、一人で豆腐屋を営んでいるでしょうか?昔気質の変わり者の無愛想な豆腐屋さんです。
そんな男の前にある日遠縁の子供がやってきて。
子供を持ったことのない男が、小さな男の子に翻弄される。
唯一頼りにしていた女将に相談すると、女将は的確に子育てを指南していきます。
という流れでしょう。
バイクに子供を乗せ、恐々目をつぶっていた少年が目を開けて
外を見つめる情景、それがもし、主役の小林稔侍(高倉健)さんだったら、きっともっと感動があったとは思います。
男はきっと自分の子供(養子)としてその子を育て生きていくことが予測されます。
最後になりますが、宮沢賢治の詩は「星めぐりの歌」のタイトルからいただいています。
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