「素敵な俳優陣がもったいない」東京ヴァンパイアホテル 映画版 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0素敵な俳優陣がもったいない

2024年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

可能な限りの人材とセット、時間などが費やされた作品だというのは伝わってくる。
しかし、それらを活かすための細部が大雑把すぎるのが残念なところだ。
それは、すべての場面を構成するための脚本(シナリオ)のプロットにも表れていて、そもそも企画段階で大きなミスがあったと思わざるを得ない。
または、これも一つのポルノかもしれない。「ヴァンパイアポルノ」
素晴らしい俳優陣たちがもったいなく感じる。
この作品のキーとなるマナミの描かれ方もかなり雑で、ヴァンパイアと名乗るからには美しさは必要な要件だと改めて感じた。
このマナミは不気味でしかない。
バケモノ化したマナミは回想で義父母に気持ち悪いとかバケモノとか言われているが、その根拠が見当たらず、感情移入できない。
ドラキュラ族の予言という設定で、9時9分9秒生まれの3人がドラキュラ族を救うという設定。しかし3人のうち2名までが22歳を待たずに狂って自殺したことになっている。
残ったマナミも半分狂ったようになって髪の毛を刈り落したが、この下りはマナミをバケモノ化する以外に見当たらず、その効果は見る側の気分を悪くさせている。それともマナミは、バイオハザードのラスボスのようなものとして描いたのだろうか?
随所に繰り広げられるアクションも付焼刃的で、まるでごく短時間で撮影を終了させてしまったような感じだ。
さて、
山田はKに対し「悲しみがわかるか?」と尋ねるシーンがある。この悲しみというのがこの作品の大きな隠しテーマだと思う。
山田は実の親に売られてヴァンパイアとなった。その親は今では総理大臣だ。TVで演説する彼を見ながら山田ははらわたが煮えくり返るほど激高するが、その怒りの裏返しこそが彼が捨てられたという悲しみだろうか。
人間ではなくなった彼だったが、悲しみが彼の心の中心にある。人間の総理大臣こそ人間ではないと彼は日ごろから感じているのだろう。
しかしなぜかその矛先はそこには行かず、コルバン族である彼はヴァンパイア族との戦いへ意識を向けている。このブレも作品のブレで、このチープさが細部に宿っている。
友人だったノアがKを呼ぶ声に誘われるKだったが、ノアに刺されてしまう。
山田はKに言う。「お前も悲しみがわかったか?」
なかなかのセリフだが、そもそもKはごく最近ヴァンパイアとなったのだから、一般的に悲しみはある程度経験しているはずだ。
このような細かなところに突っ込みたくなるので、作品に感情移入できない。
安達祐実さん演じる妖怪のようなものの登場があまりにも昔の手品のようで思わず吹いてしまう。
2017年に配信されたこの作品が、2004年に配信されたヴァンヘルシングのクオリティに遠く及ばない理由が知りたいと思った。

R41
コバヤシマルさんのコメント
2024年5月28日

コメントありがとうございます。本当に実験的で先走り過ぎた稀有な作品でしたね。詳細な感想に感心します。まさにポルノでしたね。

コバヤシマル