「自分の歳を感じてしまう作品」台北暮色 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の歳を感じてしまう作品
ホウ・シャオシェンのアシスタントを務めたホアン・シーの監督デビュー作ということで、配信でたまたま見つけたので鑑賞しましたが、如何にもホウ・シャオシェンプロデュースという感じの作品でした。
本作の監督には申し訳ないのですが、私世代の映画好き人間はついついホウ・シャオシェンの名前を先に出したがるのは仕方ない事なのです。
80代前半までは日本ではまだ他のアジア圏の作品など殆ど紹介されていなかった時代にミニシアターブームが起こり、突如隣国の名作が続々と紹介された時の映画ファンの驚きはある意味カルチャーショックだったのです。
その時代に現れた特に若い監督達の中の筆頭格がホウ・シャオシェンであり、エドワード・ヤンであり、ウォン・カーワァイであり、その後も続々と若い才能が発掘されて行きました。
彼らは本作の様な種類の作品の言わばパイオニアなのでどうしても、彼らの時代の作品と比較してしまうのです。
彼らの作品の共通項として、国そのものが発展途上国から先進国へと移り変わる時代を生きた証人としての作品が殆どで、その中でもそれぞれの国に明確に先進国型の“大都会”というモノが生み出され、その中で生きて行く人間の生態を描いた作品が量産された訳です。
本作もその流れの中の一本となる訳ですが、時代はその頃から既に40年近く経ち今の大都会に生息する人間達の生態を描く場合、やはり当時と同じテーマでは難しく(それなりの変化を感じさせる作品ではありましたが)“今の時代”の表現というモノが弱い様な気もしました。
更に今のアジアにはホン・サンス監督の様な奇才もいるので、この手の作品を今現在も作るなら昔の手法ではもうワンオブゼムとなり埋もれてしまうのでしょうね。
しかしなあ、本作はワンオブゼムを描いている作品なのだから、それはそれでアリなのかなぁ~