「寓話の裏切り――正直者は得をしない」目撃者 闇の中の瞳 マユキさんの映画レビュー(感想・評価)
寓話の裏切り――正直者は得をしない
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ライターの西森路代さんがお薦めしていたこともあり観たが、これは本当に「人怖話」だ。事件の関係者はそれぞれ、欲望や強迫観念やしがらみに捕らえられ、嘘をつく。そして最後は、真実を踏みにじって「賢い選択」をした者が得をする。正義は勝たないことを見せつけられるのが怖い。
事件の関係者であるチウ内務大臣を告発しない見返りに、シャオチーは内務省広報官に取り立てられる。記者会見で、彼はあるホラーを披露する。「本屋でいちばん怖いという本を1000台湾ドルで買った男。店主から、最後のページは絶対見てはいけない、そこがいちばん怖い、と告げられる。好奇心に負け、最後のページを開いてしまう。そこにはこうあった。『定価15台湾ドル』」。これは単なる笑い話ではなく、この映画のテーマに関わっている。
つまり、愚直な正直者は損をする、という。「正直者の頭に神宿る」ということを納得させる寓話とは真逆の「真理」を示して、私たちを怯えさせるのだ。
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