「レモネード対決」聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
レモネード対決
上から下から後ろから前から 流れるようなカメラワークが多く、第四者くらいの視点で観ている気分になる。
登場人物全員の抑揚の無さすぎる話し方や日常シーンに響く不協和音、小刻みに揺れる身体や目付きなどとにかく終始不穏で不気味にだった。
最初からマーティンの気持ち悪さが凄い。
見た目や仕草が一々こちらの神経を逆撫でしてくるように感じてしょうがなかった。
パスタの食べ方汚いし十分他の人と違うよ!
呪いや魔術としか思えないことを起こすその恨みの強さが、表情や態度に全然現れず常にフラフラ飄々としていたのが本当に理解不能で気持ち悪かった。
自分で蒔いた種とはいえ、容赦無く不条理で残酷な選択を突きつけられた父親と巻き込まれた家族には同情せざるを得ない。
ただ、深刻に悩みつつも何処かで「なんで私がこんな目に合わなきゃいけないんだよ〜勘弁してよ〜」というちょっと軽めの心が特に大人達にチラホラ見えた気がする。
切羽詰まった挙句の選択の仕方はまさかの展開。
目隠しグルグル、人間ルーレット風のランダム一発射殺。
まあでも確かに合理的というか、一番納得しやすい方法ではあるけど、いかにもサイコなシリアルキラーがやってそうなことを愛し合う家族間で行うそのギャップに背筋が震えた。
なんでもないような場面でおどろおどろしい不協和音が挟み込まれるのに対し、逆に結構衝撃的な話がポンポン出てくる場面で無音だったりする演出が秀逸。
ンフッと笑えるシーンや自分の欲に忠実な描写があったり演出効果も相まって、暗く深刻なことが起こっているのにどこか抜け感があって面白かった。
最後のシーンは究極に白々しくて好きだな。
美しい映像のカットが多かったり子役とニコール・キッドマンがあまりにも綺麗で眼福であった。
今回はコリン・ファレルとコリン・ファースを間違えずに済んだ。