「フーヴァーが生存していたらウォーターゲート事件は無かったか…」ザ・シークレットマン KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
フーヴァーが生存していたらウォーターゲート事件は無かったか…
皆さんの投稿から“ディープ・スロート”を
主役にした作品があると知り、
「大統領の陰謀」の記憶が醒めやらぬ内にと
思い、ビデオレンタルして初鑑賞。
この事件を一元的に見てはいけない、
さもワシントン・ポスト紙の2記者の
活躍だけで事件の真相が明らかになったかの
ような単純な構図ではない、
多元的に情報に接することが大切である
ことを教えてくれる作品だ。
ウォーターゲート事件については、
これまで「大統領…」での知識位しか
なかったが、
「大統領…」がほぼワシントン・ポスト側の
動きに徹しているのに対し、
この作品はFBI側のみならず
ホワイトハウス側についても描いており、
両作品がお互いを補完し合って
ウォーターゲート事件への理解が
少し進んだような気がする。
改めて認識したのは、
フーヴァー長官の後釜に入ったのが、
この盗聴計画の予防線的目論見のため
だったのかは分からないが、
ニクソンの息の掛かった人物だったこと。
FBI長官になれなかったことに対する反動
だったのか、或いは
組織への忠誠心と正義心に
基づく行為だったのか、
FBI副長官の動機は明確ではないが、
彼がディープ・スロートだったこと。
副長官がリークした報道機関は
ワシントン・ポスト紙だけでは
なかったこと、等々。
ただ、気になったのは
FBIの暗黒面を引き受けたビル・サリバン
という人物の登場だが、
副長官の不正義面を打ち消すための役割
だとすると、映画としての作為性を
感じるのだが事実はどうだったのだろうか。
そもそもが副長官の人間性が解らないのは、
彼が長く仕えたフーヴァー長官は、
歴代大統領の弱みを握って
米国を牛耳ったという悪名高き人物だから、
長官にその情報を提供する片棒を
担いでいたはずの副長官に
どれ程の心の葛藤があったのか、
その正当性を信じて良いのかが悩ましい。
副長官が盗聴を恐れて
実務的室中を調べるシーンが出てくるが、
それこそ彼がフーヴァーのために行った行為
だったろうから皮肉にも感じた。
もしフーヴァーが健在だったら、
ニクソンもおいそれとは
ウォーターゲート事件のような行為に
及ぶことは出来なかったのではないかと
想像すると、
歴史の持つ綾というものは面白い。