「正直、ボロ泣きした」あの頃、君を追いかけた じゃさんの映画レビュー(感想・評価)
正直、ボロ泣きした
予想を遥かに超えて胸に迫るものがある佳作だった。
アイドルとイケメンの恋愛ものでしょ、とスルーしてしまうのはあまりにもったいない。
前半はコメディ感が強く、やや昔懐かしい学生生活が描かれる。
山田裕貴の演技が生き生きとしていて、いかにも男子高校生らしい。
笑いどころも多く、テンポも良い。
後半、高校を卒業するあたりからぐっとストーリー性が深まってゆく。
若者の「何者かになりたい」という根拠のない自信や焦り、衝動に強く共感した。
齋藤飛鳥はスクリーンで観てもやはり特別な美少女という雰囲気が十分にあった。
前半やや表情が固い印象だったが、後半になるにつれて主役に呼応するように魅力的な表情を見せてくれ、目を引かれた。
ただのマドンナではない。瞳の奥で深くものを考え、自分の意志を持ったひとりの女性だった。
台湾版よりも下ネタを大幅にカットした代わりに、ヒロインを始めとした7人の性格や背景を掘り下げられており、キャラクター一人ひとりに愛着が持てるようになった。
ただし、台湾版から舞台を完全に日本に置き換えなかったせいか、季節感や時代背景がピンとこない描写が多く、不整合が気になる。
これはかなり惜しいと感じた。
星ひとつマイナスしなかった理由は、残念な部分を補って余りあるほど、鑑賞後の後味が素晴らしく良かったから。
戻れない自分の青春時代を思い起こさせ、後悔や恥も含めて今の自分を形成している大切な時間だったとしみじみと感じさせてくれる。
長く愛せる映画に出会った。