バトル・オブ・ザ・セクシーズのレビュー・感想・評価
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ロッキーが如く
ゲームの結果にさしたる意味はない。いかにして二人がゲームを迎えたかが重要。男女を問う話ではあるが、決してゲームの結果に着地しない。その後の歓喜なのか苦しいのか分からぬ慟哭、自分の仕事を仕上げた者の複雑な想いが噴き出る。恋愛と仕事は別とばかり、自身が立ち向かわなければならないミッションが現れば、それに懸命に立ち向かう。映画の趣旨に反した旧式表現を用いれば、これは男の生き様。男女関係なく同じようにミッションに向かう。男女差別の無意味さをこういうアプローチから説くのは斬新でもある。
同性愛ならフリーで良いのかと言えば、決して情事を美化しない。不倫は不倫として扱う。本人の罪悪感はともかく、都合の良い男、ラリーキングの振る舞いが効いてくる。このあたりもフェアな表現への意識なんだろう。
作品自体もフェアな視点を貫いた傑作
まずキャスティングに注目したい。
主演の座は二転三転し、一時は「ルーム」や来年公開予定のマーベル最新作「キャプテン・マーベル」で主演を務めたブリー・ラーソンで企画が進んでいたが、製作側の猛プッシュで昨年ラ・ラ・ランドでアカデミー主演女優賞を受賞せたエマ・ストーンが最終的に主演の座を射止めた。
ハリウッドをはじめとする#metoo運動を象徴とするような運命を背負ってしまった本作。やはり今この映画のビリー・ジーン・キングを演じることができるのはエマ・ストーンしかいない。
しかし、本作は決して女性が男性を打ち負かして万歳ー!といった単純な思考回路ではないところがよい。対戦相手となるボビー・リッグスを演じたスティーブ・カレルの演技も素晴らしく、彼は女性の敵の象徴として試合に臨むが、彼は真剣に闘った。そして奥さんとの関係、子供との関係と、色んな角度から彼のダメさというのが描かれていくのだが、"悪"としては決して描いていない。(煽られてとんでもない性差別発言をしてしまうところは決して許されないが)
映画自体がどちらの味方をするわけでもなくフェアな視点を貫いているのことが、「ただ男性と対等に扱わることを望む」というビリーの思い、作品のテーマともバッチリ合っている。私は文句なしの傑作だと思う。
撮影監督はラ・ラ・ランドでエマ・ストーンを生き生きと映し出したリヌス・サンドグレン!監督はリトル・ミス・サンシャインのジョナサン・デイトンとバレリー・ファレス夫婦、製作は次回007での監督も決まっているダニー・ボイルときたら何かが起こりそうな気がしてならなかった。(笑)
劇中の女性達が述べていることは全部正しい、というかそれって普通だろ?!っていうレベルなのですが、こんな差別が本当にあり、未だにいたるところ(特にハリウッド)では根強く残っている。
ベネディクト・カンバーバッチが「私は女性俳優にも対等にギャラが支払われる作品にしか出ない」と明言し、顔だけでなく心までイケメンであることが証明されたのですが、暴漢に襲われていた男性を救ったというニュースがあり、映画の中だけでなく現実でもアベンジャーズ であることが証明されました。
最後は全く作品と関係なくなりましたが(笑)ハリウッドセクハラオヤジはカンバーバッチ君を見習って欲しい(笑)
アメリカの差別。
これ、70年代で、そんな昔ではないけど、
かなりの男女差別あったね。
現実、じっさいの現代のアメリカも、男女差別、人種差別もまだまだあるし、
それを解決しようとする動きもあるのも、事実。
ある意味日本の方が、平等な面も多いかも。
家の財布は、女性が握ってるなんて、アメリカでもあるのかな?
肝心の映画は、そこそこ良いかと。
ボビーと、奥さんの関係は、ある種の政略結婚だったのかな?どうして結婚したとか、有名な話なのかな?
ボビーも、日本人でどれくらいすごい選手かとか、
まあ、優勝するぐらいのレベルだっぐらいの知識。
ビリージーンと、旦那の関係も、なんなの?
元トレーナーだったの?
テニスのシーンは、ほんとのプロのようで良かった。
カバンにラケットケースがついてるヤツ、
昔はカッコよく見えたのに、今見るとなんか変だね。
最後の試合は、ボビーはなんで練習しなかったの?
サプリメントの宣伝だって、フェイクで出来たのに、
それほど、ビリージーンを馬鹿にしてたという描写かな?
男女差別ではなく、男女の区別を正しくして、
両性が、幸福に暮らせる社会を望む。
とか、まとめておきます。
女性地位解放だけでなく!
テーマの一つは、テニス界における性差の解放だが。夫婦関係、親子、同性愛と奥が深い。
エマストーンのお下げ髪の眼鏡もやはり、魅力ある。
スティーブカルレもいいテンポだ!
スポーツの独特の雰囲気があるね。
プレイが良く見えるテニスシーンに好感
社会はまだまだ発展途上で、今現在も、性別や人種やLGBTQや障害などによる差別をなくしていこうとしている途中の状態。この映画の1970年代前半という時代から、45年をかけてどうにか今に至ってはいるものの、長い歴史で考えれば”僅か”45年前まで、ここまであからさまな男女差別が横行し、それが当然とさえ思われていたということに、(もちろん分かってはいたけれど)改めて少なからず衝撃を受ける。45年と聞くと長い歴史に思うけれど、いやいや全然昔話でもない。45年前で30歳だった人がまだ70代で存命どころかまだまだ元気なのだから、自ら価値観のアップデートをしていない限り彼らが「老害」扱いされるのも仕方ない気がしてくる。
世界的にウーマンリブが盛り上がっていた時代。テニス界で起こった、時代を象徴するかのような試合を描いたこの映画。映画を見ているだけで、70年代に女性がいかなる扱いを受け抑圧されていたかが肌で感じられてくる。女は寝室と台所にいるものであり、男は女より生物学的に優れた存在である、と本気で考えている男連中が次々に登場する様子に面食らうが、今だからこそ彼らを愚か者に思えても、当時はそれが一般的な価値観だったということなのだと思い出す。そして、そんな男性至上主義者の象徴として、スティーヴ・カレル演じるボビー・リッグスが君臨するわけだが、この映画が巧いのは真の差別主義者がどこにいるかに言及したところ。ボビーは確かに男性至上主義者だっただろうが、と同時に彼はそれを演じる道化師でもあった。真の差別主義者は紳士のような顔をして女性選手を差別に追い込むジャック・クレイマー氏(ビル・プルマンが妙演)であることを突き止める。彼は自分を差別主義だとさえ気づいていないかもしれない。心底、女より男は優れていると信じているるから悪意はない。だからこそ余計にたちが悪い。エマ・ストーン演じたビリー・ジーンも、ボビーに勝つことよりも、ボビーに勝つことでクレイマー氏に打ち勝つことが目標の先に見えていたのではないだろうか。ただビリーにテニスで勝っただけでは、この映画のテーマは表現しきれなかったはず。そこにジャック・クレイマー氏のような真の差別主義者への言及があったことで、よりこの映画のテーマがくっきりしたように思う。
またこの映画で何より良かったのは、クライマックスのテニスシーン。何しろ、きちんと試合が見える、きちんとプレイが見えるテニスシーンだったのが何より良かった。スポーツ映画でクライマックスの試合を見せるとき、臨場感やスピード感を出すために(あと役者とスタントの境目を誤魔化すために)やたらカット割りを増やして、今だれがどこで何をしているんだか分からないほどカットが刻まれてしまうようなことも少なくないのだが、この映画は俯瞰からテニスコート一面を映したショットをメインにし、それぞれのプレイがしっかりと見える演出になっていた。まるで中継で実際の試合を画面越しに見つめているような感覚。だから思わず見事なプレイが出ると、おっ、と拳を握ってしまうような瞬間が何度もあった。派手な演出ではないけれど、だからこそ良かったなと思った。
作中、女性選手が男性選手と同額の賞金を求めたのに対し「欲張りだ」と言うセリフがあった。
いつだったか、LGBTQのとある団体がハリウッドの映画業界に対し、LGBTQの役柄をもっと増やしてほしいと申し立てをしたというニュースが流れた。そのとき、そのニュースを見た一般の人のコメントは(私が目にする限り)「欲張りだ」「こういうことを言うからLGBTはめんどくさい」と言うものがほとんどだった。
45年で何が変わったかと言えば、差別する対象がスライドしただけで、差別の内容は変わっていないのでは?と思わされた。
1970年代の女性解放の空気が良くわかる
主人公に共感する女性は多いに違いない。テニスは個人競技なので、男女を戦わせたら一体どんな結果が出るのだろうと興味があったので、実際にそれをやった人が、1970年代初頭に存在したことは軽く衝撃だった。今観ると女性差別的な言動や概念が、当時なんの問題もなかったことが良く描かれている。また、レズビアンであるということが、今では考えられないくらいスティグマだったこともわかる。
1972年にグランドスラムを達成したビリー・ジーン・キングは賞金が...
1972年にグランドスラムを達成したビリー・ジーン・キングは賞金が男子プレイヤーの8分の1しかないことに怒って仲間達と女子テニス協会を立ち上げる。地道な巡業で実績を積み上げる女子テニス協会の活躍を横目で睨んでいたかつての名プレイヤー、ボビー・リッグスは男女対抗試合を提案。一度は断ったビリー・ジーンだったが、”例え女子の現役ナンバー1であっても男子には劣る、55歳の私にすら勝つことは出来ない”と鼻息の荒いボビーに戦いを挑むことを決意する。
赤茶けてほんのりトーンがぼやけたノスタルジックな映像で当時の空気感を丁寧に再現し、男性優位社会に胡座をかく無粋な男達に鉄槌を食らわす痛快さをエモーショナルに描きながらも、人物描写が繊細で実にソウルフルなドラマに仕上がっています。
何もかもが素晴らしいですが、ある印象的なワンシーンを除いて完全にスッピン、近眼メガネと猫背で全く別人になり切ったビリー・ジーンを演じたエマ・ストーンはもう何ら形容する言葉が思い浮かばないほどに圧巻です。
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