劇場公開日 2018年7月6日

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「性差を超えた事情があったということね」バトル・オブ・ザ・セクシーズ masakingさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0性差を超えた事情があったということね

2018年9月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

ビリー・ジーン・キングは選手としての晩年に、クリス・エバート=ロイドに女王の座を明け渡した往年の名プレーヤーだったという記憶がある。その頃はまだ小学校低学年だったので、記憶違いかもしれない。
いずれ、マーガレット・サッチャーばりの鉄の意志を持つ女として、小学生ながら畏怖の念をもってテレビ画面越しに眺めていた。
テニスプレイヤーらしくない風貌にも感じたが、本編最後のご本人映像を見る限りはそうでもない。チャーミングな、というかエレガントな感じがする。それだけ自分も歳をとって、妙齢の女性に対する認識も変化したということか。
それと同時に、映画に描かれたようなマリリン(ライズボローが素晴らしい。カメレオン女優の仲間入りした感がある)との関係に悩める女性であったとは、当時は思いもしなかった。
かたやボビー・リッグスは、なんとエキセントリックな奴なんだろう。それなのに、人を魅了するのは、彼が実は無欲なというか、邪気のない人間だからだろう。子どもとの関係はそれなりだが、夫としての才はなく、テニスプレイヤーとしてはとっくの昔に盛りは過ぎた。博打癖がカウンセリングを必要とするほどの常習性を極め、もはや人生詰んでしまう寸前である。
男性至上主義のブタなんて自虐ネタで世間の注目を浴びようとするまでに追い込まれたのかと思わせておきながら、きっと彼は単にビリー・ジーンと共に世間を賑わせ、楽しいイベントがしたかっただけなのではないか。そしてそれが彼女を助けることにもなると、心のどこかで感じ取っていた節もあるのではないか。
なぜかそう考えたくなるほどの潔さなのだ。
リッグスの視点をもっと深く掘り下げれば、さらに深みが増したであろう好編だった。
最後の場面でゲイの専属デザイナーがビリー・ジーンをハグしつつ囁いた言葉と、ロッカールームで一人寂しく佇むリッグスの姿にグッときた。

Masa_king01
Masa_king01さんのコメント
2018年12月31日

嬉しいご感想をありがとうございます。備忘録のつもりで書いていたレビューに、思いがけずコメントをいただき、少しばかりドキドキしました。よい映画が取り持ってくれたご縁に感謝です。

Masa_king01
きりんさんのコメント
2018年12月31日

こんにちは
masakingさん
"演者のこころの深みに秘められた優しさ"をいつも見つけ出して書いておられますよね。この作品のボビーとかマダム・フローレンスの取り巻きとか。
ご指摘に そうだね、本当にそうだねと、いつも膝を打ってます。
また楽しいレビューをお願いします。

きりん