「パロマにわくわく、ボンドにもやもや」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
パロマにわくわく、ボンドにもやもや
夢のあるガジェットと最高にカッコいい車、強いメンタルのセクシーな女性たち、景勝地や美しい街並みの中でのキレッキレのカーアクションなど、007シリーズに期待する要素の中で、今回白眉だったのはCIAエージェントのパロマだ。
前作でボンドとくっついたマドレーヌも出ているし、パロマの出演時間は結構短く感じたけれど、私の中ではアナ・デ・アルマスが本作の筆頭ボンドガールだ。キュートでセクシー、そしてちょっとテキトーだけど強い。ほんとカッコいい。
脚本のキャリー・フクナガはアナをイメージして当て書きしたそうだ。ただ、スケジュールの都合で彼女は役に必要な訓練を3週間で終わらせたという。パロマの台詞通りなのが面白い。
アナは「ナイブズ・アウト」でダニエル・クレイグと共演していたが、その時は地味でダボッとした服装で、嘘をつくと嘔吐してしまう看護師という風変わりな役どころ。パロマを観ている最中は同じ俳優と気づかなかった。
Qの自宅とバステト神のようなシュッとした飼い猫が見られたのも嬉しかった。ベン・ウィショー自身猫好きで、かつて猫の多頭飼いをしていたそうで、猫をあしらう手つきも慣れたものだ。
一方、残念な部分もあった。
一番違和感が大きかったのは、ボンドの娘が生まれて、ボンドがその存在に捉われる(ように見える)描写だ。それでも最終的に生き延びるならいいが、今回はなんと死んでしまう(という体の終わり方)。戻ってくるってテロップは出るし、これでボンドの物語が終わりなんて誰も思ってませんけどね。
凄腕エージェントのカッコよさと凄腕たる所以とは、職務の遂行において私情に捉われないある種の非情さや、そこから醸し出されるニヒリズムにあり、意外な一面を見せてもカッコよさが保たれるのは生きて職務を全うしてこそ。と個人的には思っている。そして最後は何食わぬ顔をして、いい女を助手席に乗せて、カッコいい車で去っていってほしいのだ。
だから、後の反撃のためとはいえマチルドを人質に取ったサフィンの前で土下座したり、逃げてる最中にウサギのぬいぐるみに感傷的になったり(これがなくても逃げ遅れただろうけど)というウェットな描写は、自国のミサイルに吹っ飛ばされるという結末もあいまって、正直あまり見たくなかった。
ダニエルボンドの終わりの暗喩と思えば、諦めざるを得ないが。
スペクターはあっけなく全滅するし、サフィンは今ひとつ強者感に欠ける。せっかくマチルドを人質に取ったのに、手を噛まれただけでポイッと放置してしまったりして。
サフィン絡みは日本風コーディネートだったが、割れた能面風マスク、毒草の庭が枯山水、アジトは北方四島のどこか(色丹島か歯舞群島?)、ボンドの土下座と、微妙に悪意を感じるアレンジで苦笑い。
この辺はもう歴史あるシリーズのご愛嬌のようなもので、真剣に不満を持ったわけではない。
クールなダニエルボンドとのお別れは寂しい。次のボンドが誰になるのか、期待と心配とともに待ってます。
早とちりしたみたいで、すみません。
やっぱり、生きてたはないですよね。
あと、アナに当て書きだったのは知りませんでした。
次のボンドは色んな人が取りざたされてますが、有名な俳優にはならないと思います。
やっぱり、アナ・デ・アルマス…ですよね、本作の収穫は。
ダニエル=ボンドは007に非ず…とずっと思ってシリーズを観てましたが、完結編を観終わって、本当にご苦労様でしたと言いたいです。
ボンドはreturnしますが、「生きてました」はないと思うんですが…。仕切り直しでダブルオーに昇格するところから始まるんじゃないかと。
エンドロールの最後にreturnと書くのはシリーズの伝統ですから。