「凍てつく湖畔のロッジ風一軒家。 幼い娘と母親が過ごしているところを...」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
凍てつく湖畔のロッジ風一軒家。 幼い娘と母親が過ごしているところを...
凍てつく湖畔のロッジ風一軒家。
幼い娘と母親が過ごしているところを、能面をつけた謎の男が襲撃を掛ける。
k母親は殺され、娘は凍った湖の氷の下に閉じ込められる。
が、能面の男は湖面の氷を銃撃して割り、彼女をすんでのところで助け出す・・・
それは、ボンド(ダニエル・クレイグ)と時間をともにしているマドレーヌ(レア・セドゥ)の記憶だった。
ふたりは新しい生活を送るべく、過去との訣別の旅に出ていたが、仇敵スペクターがふたりを襲う・・・
といったところからはじまる物語で、ボンドとマドレーヌが自動車で曲がりくねった山間の道を走るシーンで、ルイ・アームストロング「WE HAVE ALL THE TIME IN THE WORLD(愛はすべてを越えて)」のインストゥルメンタルが流れる。
なるほど、『女王陛下の007』だな、とシリーズファンは気づくだろう。
「Nothing more, Nothing less, Only Love」のフレーズが耳に残る名曲だから、愛を主軸にしたスパイものなわけだが、ここ2作がジェームズ・ボンドの内面(といえば聞こえはいいが、プライベート事項に過ぎない)を描きすぎて辟易していたのだけれど、ワンアクションあってボンドとマドレーヌは別れてしまい、オープニングタイトルで方向転換をする。
あれから5年過ぎ、ボンドは引退してジャマイカ暮らし。
ロンドンで細菌兵器(実際にはちょっと違うかもしれないが)の強奪事件が発生し、CIAとMI6が独自に対応にあたり、陰にスペクターが絡んでいるらしい・・・となり、CIAの旧友フェリックス・ライターの依頼もあって、ボンドは事件に自ら巻き込まれていく・・・
と、ここからは往年の007もの、古くはヒッチコックのマクガフィン争奪戦の様子になってき、「007は、これぐらいのいい加減さでいいんだよなぁ」とちょっと嬉しくなってきます。
事件解決に向けて、新007も登場(なんと黒人女性!)し、フェリックス・ライターの死、さらにはスペクターの黒幕ブロフェルドの登場と死、といくつもの死を重ねて、ここ2作の「007 プライベート・ワーク」感を消していくあたりは結構面白いです。
で、事件の黒幕・能面男サフィン(ラミ・マレック)が登場し、日ロ国境近くの離島の秘密基地に潜入して・・・と「うわ、『ドクター・ノオ』以来の十八番」と喜ぶのも束の間で、秘密基地も『007は二度死ぬ』以来のヘンテコぶりで、以降の脚本はガタガタ、ガタピシ。
この後半、もう少しどうにかならなかったのかしらん。
そして、『女王陛下の007』へのオマージュだから、愛する人は死んでしまうわけなのだが・・・
エンドクレジットで流れる「愛はすべてを越えて」で、少しだけ落涙しました。