「3つの”time”について」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ まささんの映画レビュー(感想・評価)
3つの”time”について
待ちに待っていたので期待値が上がり過ぎ、大丈夫かな⁉️と不安もあったのですが、フクナガ監督さすがです(しかも超イケメン)。本作は「ダニエル・クレイグ5部作」の完結編として完璧な作品だったと思います。
ちなみに僕は、ダニエル・クレイグ作品からの007ファンなので「新参者」ですが、「マッチョイズム否定派」でありながらも、本作の「ボンド・ガール(ウーマン)」と「ボンド・カー」が良かったと思いました。オールドファンの方も、アナ・デ・アルマスと、アストン・マーティンの美しくセクシーな姿には満足なのでは❓
さて、本編のアクションシーンや、new007、日本の島、レア・セドゥーやラミ・マレックのことなど、その他にも色々と思うことはあります。
しかし、5部作の完結編は「ビリー・アイリッシュ」「ジャック・ロンドン」「ルイ・アームストロング」それぞれが表現した”time”により、007が単なるスパイ映画ではなく、ダニエル・クレイグが演じる一人の人間「ジェームス・ボンド」として描かれていると考えると、切なさが一層増しました。
冒頭、若干19歳の「ビリー・アイリッシュ」による主題歌”No time to die”で始まります。
Now you'll never see me cry(私の泣き顔を見ることはできない)
There's just no time to die(死にたいと思っても時間がない)
彼女のドキュメンタリー映画「世界は少しぼやけている」で、本作の依頼から納品までの苦しむ過程が描かれていました。たぶん当時は18歳。
この”time”は「死」
エンディングでは“M”が作家ジャック・ロンドンの言葉を引用しました。
“The proper function of man is to live, not to exist. I shall not waste my days in trying to prolong them. I shall use my time.” (人は存在するだけでなく、生きるべき。先延ばしして無駄に過ごしてはならない。自分の時間を使おう。)
この”time”は「人生」
そしてこの直後、エンディングロールで『女王陛下の007』で使われたルイ・アームストロング「愛はすべてを越えて」が流れます。明るい曲調ですが、「女王陛下」での悲しい“あの”シーンを想起させるため、007ファンにとっては悲しい曲でもあります。
"We have all the time in the world. Time enough for life.
時間はいくらでもある。人生に十分な時間があります。
Just for love, Nothing more, Nothing less, Only love.
愛するための時間、それ以上は望まないし、少しも無駄には過ごさない、ただ愛したいだけ。
この”time”は「愛」
各々の表現者によって”time”が、「人生」「愛」「死」の象徴として表現されますが、諜報部員として過ごしてきたダニエル・クレイグ演じる「ジェームス・ボンド」にとっての”time”は、どうだったんだろうと考えさせられます。
「ジェームス・ボンド」にとっての「人生」「愛」の”time”は「死」によって、青い瞳に紡がれていきます。愛くるしいあの“娘”に。
そして、エンドロールの最後の最後。
“James Bond will return.”
さすがに、これには震えました。
何年後になるかわかりませんが、次回作までの”time”は「我慢」して「期待」し続けることにします。