「シリーズ中で最も期待外れな出来に…?」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ FrancesHaさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズ中で最も期待外れな出来に…?
109シネマズ大阪エキスポシティ IMAXレーザーで鑑賞。
結論から言うと、とても期待していただけに、とても残念な出来だと思いました。
トレーラー映像から感じられる「約束された映画」感、Rotten Tomatoesの上々な出だしから、「これは間違いない!」と確信し、いざ鑑賞…
『カジノ・ロワイヤル』にも匹敵するような最高のオープニングでした!
「ボンドは引退しているのだから、最初のガンバレル・シーンはいらないんじゃない?」
「『慰めの報酬』で区切りがついたのだから、ヴェスパーを持ち出すのはもういいんじゃない?」
などと思ったりしましたが、主題歌が始まる直前まで、興奮と切なさが混じり合い、これまでのボンド映画とは一線を画そうとする監督の試みも感じとれました。
アクションやカーチェイスシーンは『慰めの報酬』のような、ぐちゃぐちゃで何が起こっているか分からないものではなく、予告編動画にあった、アストンマーティンに乗っているボンドとマドレーヌが四方八方から敵に囲まれ、至近距離から銃撃される場面は、とても緊迫感がありました。
主題歌への入り方も、これまでにない斬新さで驚きました。
「これは、ひょっとすると『カジノ・ロワイヤル』『スカイフォール』を超える傑作になるかも…!」
…しかし、ここまでがこの映画のピークだったと思います。
まず、主題歌ですが、歌声は美しいのですが、とても暗くて切なく、これまでのダニエル・クレイグ シリーズにあったような壮大で力強さがなく、「大丈かな?」と少し不安になり始めました。
そして、映画が進行するにつれて…
「あれ… この映画…. おもしろくない」
主題歌の前と後では、まるで別の監督が撮ったように感じました。
壮大なテーマや終盤の舞台のスケールの大きさにもかかわらず、内容があまりなく、また、ほとんど全ての登場人物が薄っぺらく感じるのです。
ストーリーの展開や登場人物の行動が場当たり的、突発的で、なかなか感情移入がしにくく、今回のボンドはシリーズの中でも最も感傷的で人間味があるのですが、なぜかあまり心に響いてきません。
『カジノ・ロワイヤル』では涙腺が崩壊したのに、今作は最後まで涙が出ませんでした。
例えばですが、身柄を拘束されているブロフェルドと面会中のボンドが、突然ブロフェルドの首を絞めて殺そうとします。
いきなりの行動で、当惑しました。『スペクター』のラストで、ブロフェルドと対峙した際に選択したボンドの行動は一体何だったのでしょうか。
また、Mが、ボンドの非難に対して、ボンドと決別してしまうのではないかと思えるほど逆上するのですが、しばらくして、再会した後は、何もなかったように話し合っています。
重箱の隅をつついているような気がしますが、このような登場人物の一貫性のなさが気になり、なかなか作品に没入することができませんでした。
今回のヴィランも影が薄く、『スカイフォール』のように、凶悪ではあるが、同情してしまう、印象的な悪役にはほど遠く感じました。
それに『スカイフォール』では、ヴィランを生み出す原因となった人物は罪をつぐないましたが、今作の災の発端となった人物はお咎めなしでいいのでしょうか。
またまた『スカイフォール』ですが、ラストのボンド邸とその周辺での攻防は、比較的狭い空間であるにもかかわらず、とても迫力のある映像に仕上がっていました。
今作の終盤に登場する要塞はどうでしょう… スケールは大きいのに、特に印象に残るものはありませんでした。
(要塞は、『007は二度死ぬ』の原作に出てくるブロフェルドのお城を参考にしているのでしょうか)
鑑賞し終わった後、「本当にこれでダニエル・クレイグ シリーズが終わってしまうのか…」という、とても残念な気持ちになってしまいました。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を見終わったときと同じような感情です。