劇場公開日 2023年11月17日

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「ありがとう、ダーク&シリアス路線の開拓者クレイグ・ボンド…最後の最後までハードなアクション&ドラマ、最高でした。」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ありがとう、ダーク&シリアス路線の開拓者クレイグ・ボンド…最後の最後までハードなアクション&ドラマ、最高でした。

2021年10月1日
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歴代史上最もシリアスなボンドとなった"青い目"クレイグ・ボンド --- そのダニエル・クレイグへの最高の餞。彼はシリーズ(の時系列/作風/愛)を仕切り直したけど、これは終わり方も次のボンドには引き継げない唯一無二単独な世界を最後の最後まで構築。作品自体はこの"007/ジェームズ・ボンド"という長年にわたり愛される看板ブランドが背負うにはあまりにダークすぎる作風により一層拍車がかかっていて、それは本作で一種のピーク限界に達した。気楽に見られない。だけれどもそれと同時に、その甲斐あるように感情的にしっかりと満たされる。総決算として完璧な幕引き。
時は来た。待ちに待ったこの瞬間、ここまで長かった!コロナ前からずっと楽しみにしていて、何度も延期されてきた本作。ジェームズ・ボンドに起用された当時は30代でまだツヤツヤとしていた彼も歳を重ね、顔には克明にシワが刻まれた。今までのプレイボーイというイメージを覆すようにヴェスパーからマドレーヌ、そしてM(! 『スカイフォール』のボンドガールはM)まで一人ひとりとしっかり真摯に受け止める覚悟で向き合ってきた。暗い歴史や秘密とも。それは2時間超がすっかりベーシックになっているシリーズの中でも短い『慰めの報酬』にしか出てこないカミラに対しても、しっかりヘビーな過去を引き出し、共に向き合っている。まさしく"私を愛したスパイ"。
最後だからこその掟破りで初めてづくし!これは反則だって…これは真似できない。今後も続くはずの(続いてほしい!)シリーズとして多用できない禁じ手目白押し。史上最長の本編尺にふさわしい最長のOP前アバンパートから怒涛の展開。ボンドに歴史あり。予告編で見たことあるシーンの(オーバーじゃなく)半分くらいはOP前にあったのではないかというレベルで見せ場に次ぐ見せ場。公開が延びて延びて延びたことで本編見る前からすっかり聴き慣れていたビリー・アイリッシュによる同名曲への流れ・入り方も完璧。スタイリッシュかつエモすぎるだろ。ここまででもう1本映画見たような充足感たるや。
正直、その長い上映時間があっという間に感じられるほどずっと"最高!"というわけではなかったけど、思わず前かがみになるほど食い入って見てしまうような見応え十分なアクション・スタントシーンと上述したようなサプライズの多さや、捻りのきいたクレバーな脚本が、この超大作のドラマ性に深みをもたらしていて非常に充実していた。キャリー・ジョージ・フクナガ監督、本当にお見事天晴。何より終わり方が素晴らしくて、これは引きずる…。個人的に自分のティーンの頃と被っていて思い入れが強いし、『カジノ・ロワイヤル』で"00"になる始まりのところから見ているせいだろうか、親心というか余計にグッときた。今彼のボンド作品を見返すとまた違う景色が見えてきてグッと感じ入りそう。最初の方ではジュディ・デンチ演じるMとの疑似親子関係、母親と世話の焼ける生意気息子という一種"若さ"を体現していた一方で、本作では自らが見守る側になる。次の世代に託すように、一つの時代の終わりを感じた。本当に感謝しかない、お疲れ様でした。

ラミ・マレック演じる悪役サフィンは予告編からあまりに謎めいたカリスマ性漂い、強烈なインパクト残しすぎて「サフィン様〜♪」という感じにもはやなっていた分、登場はそこまで多くなかった。役柄とは乖離しているかもしれないが、演じる彼の若さや役柄のここまでの歩みを考えると、もっとボンドとタイマン張ってほしかった気もするが、それはそれ。だって今までも実は結構メインヴィランは自ら動かなかった気がするし。ということで一番動いたメインヴィランは『スカイフォール』シルヴァってことでいいですか?
アナ・デ・アルマスも個人的な経験則から死亡フラグかなどと勘繰っていたけど引き際あっさり潔し。序盤で出てきた同じ構図のショットが作品終盤で繰り返されることで、終わりが近いことを示すような方法はあるけど、それが本作では爆発による聞こえ方、音の世界というのは印象的だったかもしれない。
ジェフリー・ライト版フェリックス・ライターは『スカイフォール』『スペクター』とお休みしてたから期待してなかったのに戦友としての絆・友情にウルッと涙腺崩壊させられ(またもや水中で…)、ナオミ・ハリスは『スカイフォール』初登場時の現場感から一転従来のマネーペニー像を見ることができ、Qの部屋( ! )が出てくるばかりか演じるベン・ウィショー自身を投影するように彼の恋の予感もある。なんていたれりつくせり。

♪We Have All The Time In The World/Louis Armstrong

結果的に、公開された今日は緊急事態宣言明け初日&台風直撃のファーストデー。鑑賞はもちろんIMAXで!殺しのライセンス出るか?今回もクソ客マグネットらしい僕の近くにはチラホラといたけど、ブチ切れて"殺しのライセンス"出すほどではなくてよかった。いや、優に1年以上楽しみにしてきすぎた満を持しての作品だったので、ボク自身の我慢という頑張りもあったかも。あと、終盤のボンドの服装が、軍モノも好きな自分にとっては萌えキュンポイント。
P.S. 本当に今回が見事な幕引きすぎて、子供時代にテレビ放送なので何度もお世話になってきたことから親近感のある前5代目ボンド=ピアース・ブロスナンにもこういう作品を…と思ってしまった。なんせブロスナン・ボンド最後の作品はシリーズ40周年&20作目というWメモリアル作品だったにもかかわらず、敵がパッとせず、見れば見るほどツッコミどころ満載すぎてキョトンとしてしまう珍品『ダイ・アナザー・デイ』なので!

勝手に関連作『007/私を愛したスパイ』『007は二度死ぬ』『女王陛下の007』『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

とぽとぽ