「創作とは何か」ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー a0064さんの映画レビュー(感想・評価)
創作とは何か
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サリンジャーは、村上春樹の影響で好きになった。特に好きなのが、バナナフィッシュに最良の日だ。帰還兵の精神的崩壊をどうしてこんなリアルに描けるのだろうと思っていたら、これは実体験だったのだとわかり納得できた。過酷な軍隊での日々、精神的に苦境に立たされることで、物語の世界に没入していった結果生まれたのがキャッチャーインザライという作品であるのが面白い。人は、非日常にあっては日常を求め、日常にあっては非日常を求めるものなのだろうか。
彼が、仏教の瞑想に心の平安を求めたことも興味深い。苦しみの肯定から、自分の心の声を見つめ直すことで、サリンジャーは本当の創作に到達することができたのだろう。
見せびらかすための創作ではなく、自己の救済のための創作を、というのは、真の芸術家すべての望みなのかもしれない。若い時のヒット作のお陰で、その望みが叶えられたサリンジャーは幸福であると同時に、創作しなければ救われない苦しみを抱え続けた人間として、生まれながらに不幸であったとも言えるだろう。
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